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ここに俺がいると思うか思うなら挙手せよ
インターネット上に俺がいると思うか思うなら挙手せよ
あるいは印刷された紙に印字された文字に
夕方の台所に夜明けのシャワー室に
ビールが臭う真昼間のネット ....
ぶちあたる。
とにかくぶちあたる。
光ってはいるけれど
安っぽい弾丸。
蛍光灯の傘にぶつかる。
窓にぶつかる。
壁にぶつかる。
いちいち音を立てる。
緑金色の背中は
あれでな ....
エアコンのない、
中途半端に古い家にいるものだから、
ほんとに蒸し暑くってかなわない。
料理なんかする気力ないし、
食欲ないし、
おまけに、
部屋のなかがへんになまぐさい。
生ゴミが腐っ ....
批評だ批評だ批評が必要だとネットで吠え続けて、おそらく数年になる。私自身は、地方同人詩誌での合評会や蘭の会内部でのわずかな批評と、詩集そのものに対するいくつかの批評をのぞき、自分の作品に長文の批評をネ ....
身体中筋肉痛だ。それともいうのも金がないから肉体労働にしばし従事していたのだった。久しぶりに肉体労働するときついわ。18リットル入りの洗剤を一日あげさげ、パレット積み。死ぬわ。腕が痛いわ、腰が痛いわ、 ....
春は死にかけている
ぼそっとつぶやいて探偵は
ブラインドの隙間から夕陽を見た
まともにブラインドを開けて見りゃーいいのにと
読者は思うかもしれないが
これはこの探偵の美学であり習慣である ....
ミミズには裏表があって、裏側は表に比べてちょっと色白で、ミミズは裏を下にしてないと這うことができない。こういうのこそ無駄な知識というべきで、ミミズを実際に手にとってみたひとは知ってるだろうし、ミミズな ....
うつし世は春雨なりき芝居果つ
渡り廊下の左右より春の闇
洗ひ髪夜しか逢へぬ人と逢ふ
揚花火仰ぐ横顔盗み見る
首筋に跡を残せし残んの蚊
衣かつぎ妻は家では酔へぬも ....
私ノ耳ハ鋭イないふデアル
貴方ノ言葉ヲ切断シ解剖スル
私ノ指ハ尖ッタぴんせっとデアル
貴方トイウ存在ノカケラヲツマミ
冷タイしゃーれノ上ニノセル
マタ私ノ瞳ハ敏感ナ電子顕微鏡デアル ....
今は崩れし前方後円墳
色褪せ剥がれたる胡粉
古への熱狂と興奮
陰鬱に漂へる悲憤
見出されし死者は怒り
水気無き額に雨滴り
明かされし{ルビ咒=じゅ}は空を{ルビ撓=たわ}め ....
最初の舞台は私の家の玄関先
(もう三十年も前に植えたという)
ダイダイの木の濃緑の葉に
まんまるな卵が産み付けられたのは
風薫る五月の午後
うるる。るる。うるる。
あったかい。
....
海はすっかり赤ワインで
空はすっかり酔っているのに
うみろばはまだやってこない
ところで
したり顔でカイが言うには
うみろばの役目は
海馬のはんたいなんだって
海馬ってなんだか知らな ....
春愁なんていまさら歌えない
だからカカカと明るく笑って
カイの住んでる森に行き
おっきな声で春を告げる
おおい、カイ!
起きてよ!
雪の女王はもう死んじゃったよ!
でかけるよ!
....
[へりくつのうた]
へりくつりくつ
かたっぽのくつ
へりくつりくつ
くらいどうくつ
へりくつりくつ
なんてたいくつ
[たらたらのうた]
....
荒野には屍などない。屍は豊饒の証である。荒野は小気味よいほどの空白であり、そこにはふくふくした糞便も滋養豊かな腐肉もない。目立つものといったら枯れ木だけだが、その枯れ木ときたら、湿っぽいので燃料にもな ....
[バリケードのこっち側]
その前日
あたしは工場で残業した
まんまるいちんち段ボールの箱と格闘して
それでもまだ働けとベルが鳴った
自転車をこいで家に帰ると
戦いは明日だと言う ....
1
少女は夕暮れにオルガンを弾き
聞き覚えたメロディを拾う
不安定なコードで単調な伴奏を繰り返し
遠い歌声に耳を傾ける
暗い森の奥 澱んだ沼の畔
彫刻のように動かぬ蟾蜍 ....
おそろしげなる{ルビ杣人=そまびと}の
十人かかりて動かせぬ
切り倒されし杉ありき
杉と契りしむすめごが
赤き襷をきりと締め
えいやと綱を引きやれば
やれかなしやと大杉は
するりするりと ....
――油膜のような色なんだ、赤にも緑にも見える。
Tはテーブルの上のカップに視線を注いだまま
落ち着かない様子で呟き口に手を当てる
僕は僕で
冠雪して間もない山なみを窓ガラス越しに見ながら
....
なんとなく後ろめたしと思へども夜に備えて眠る日盛り
働くも働かざるも自由なり君に逢ひゆく自由なしとて
ロボットの腕は緻密に動きゐてその暖かき体温あはれ
深夜0時冷たく硬き弁当を昼飯と ....
腰のものを赤く染めて鳥が鳴く。
うぶめ、と呼ばれる鳥である。
産の穢れに死んだ女は鳥となる。
ほう、と鳴くが聞こえるか。
生まぬとしても女は女と男は言う。
うぶめの悲しみを知らぬは幸福と ....
ゴミラは疲れてしまった。
うつむいて
とぼとぼと茶色い海辺をあるいた。
テトラポットが陽気な声で
「あたしはゴミじゃないわよ」と言った。
でもゴミラは知っていた、
テトラポットはゴミラ ....
あたしはエステに通った、
あたしは美容整形をした、
たぶん美しくなった、
あなたにわかる?
あたしはアルマーニの香水と、
ブルガリの時計と、
プラダのリュックと、
エル ....
1.
海底にねセ氏120度の温泉を噴き出す海底火山があってね そこにはまっしろな蟹が住んでるんだよ なに食ってるかって硫化水素を利用して増えるバクテリアとかなんとかそんなものを食ってるんだけど ....
{引用=さて、ひと思いにやってみようか。
どうきりだしたらよいのか。
「アルフレッド・プルーフロックの恋歌」 T・S・エリオット}
さあ、一緒に出かけよう、私とあなたと
....
頭上でせわしく機械音が響いている
腐った畳を敷いた地面はひどく歩きにくい
どうしてだか私は暗い茶畑を徘徊しているのだ
踏みこんだ裸足がずぼりと畳にめりこむ
視界いっぱいに夜空 雲間 ....
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