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子どものころの私にはロールモデルがなかった。こうなりたい、という目標がぜんぜんなかった。高校生になってからは国語教師(女)に憧れたり、パティ・スミスになりたいなーと思ったりしたこともあったけれど、現実 ....
なぜか怖いもの気色悪いものが見たくなり、グロ画像を探してまわった。でもあまり怖くない・・・気持ち悪くさえない・・・これはいけない。と思って楳図かずおの『漂流教室』を読みかえしたらやっぱりいつものように ....
だとしたら、方法は一つしかない。笑い転げてのたうちまわるのだ。「最高最高いいわーっ」と叫んで痙攣するのだ。理解しなくてもできなくても、そもそも理解とか知性とかからほど遠い場所に棲息するどうしようもない ....
そのむかし、「キャノンボール」というオールスター総出演の大バカなカーアクション映画があって、バカにしながら見れば楽しいが、本気で楽しみにしながら映画館で見たら悲しくなるようなシロモノだった。本国ではど ....
ぜいぜい息切らして走る土手に
意志ころ犬ころ石っころ
どけよ邪魔なんだからどいてくれよ
川底にきらりと光った真空管
俺がほしかったのはあれなのだ
長らく探し続けていたのは
あれにまちが ....
センパイ綺麗ですよねなんで結婚しないんですか
などとほざく後輩の頭をこつんとこづき
それじゃ明日ねとあっさり告げて
農協の裏手の墓地を抜け
コンクリ舗装のきつい坂を登り
唐突にある扉をあ ....
ここで赤い魚の話をしてはいけません
最初の貼り紙は公民館のドアに貼られた
誰が貼ったのか
誰も知らなかった
次の貼り紙はあちこちのスーパーで見られた
誰が貼ったのか
店員も店長も知 ....
かあさんは裏庭にチガヤを植えなかった。
壁を緑に塗らなかった。
とうさんは健康的に山を登り、
かあさんは家で本を読み、
かあさんはおもての庭に紫陽花を植え、
家の壁は地味な灰色に塗られた。
....
誘蛾灯の下でバサバサ
大きな腹を揺すぶって
分厚い羽をバサバサ
まるでモスラみたいにバサバサ
記憶のなかのオオミズアオは
そんなふうにとっても大きかったのに
こうして見ると
意外に小 ....
赤らんでゆくトマト、
緑に染まってゆくピーマン。
畑のトマトはトマトくさい、
畑のピーマンはピーマンくさい。
八百屋で買ったピーマンを台所で切る、
ピーマンの匂いがしない。
当たり前かもし ....
一日に一回
空は夕焼けに染まる。
晴れていたなら、だけど。もちろん。
夕暮れてゆく世界は私の手の中にあって
私は一杯のコーヒーを飲み干すみたいに
簡単に
それを飲み干す。
でも確 ....
シェルターの中は安全なのよ と
おかあさんはいう
外に出たらみんな死んでしまうんだ と
おとうさんはいう
てんじょうによじのぼって
あけちゃいけない外も見えないまどに
そっとほおをあて ....
左川ちか作品のアーカイブです!
全詩集が手に入らなくて泣いてた人は、読みに行きましょう。
そうでなくても行きましょう。
http://soredemo.org/archives_sagawa ....
東の空はうすあかい
あちらには街があって駅があって
こんな夜更けにも
時折は貨物列車や寝台列車が通り過ぎ
その音がここまで響いてくるのは
雨が近いからだろう
ぼんやりした常夜灯の光の下 ....
おまんが目覚めたのは桜咲き誇る春であつた。
おまんの目に{ルビ呉葉=くれは}の顔が映つたときは、
こゝがあの世と云ふものであらうかと思つた。
さうではない、こゝはこの世だと気づいてなほ、
おま ....
乱れた裾をからげて、
少女は細い山道を下る。
淡く青い春の匂いが満ちている。
その春の匂いに、
突然あまく重苦しい香が入りまじり、
こむすめ。
こっちに来い。
声の主はと探せ ....
ええ レモンの花は咲きません
ええ こがねの柑子も実りはしないのです
くらい森に目立つのは
変にほうけたタケニグサ
それからキノコ
ススキの穂
でもあのはるかかなた森の奥
湖があ ....
がらがらと開ける
明け方の雨戸に
ひょいと跳んできたら
ちょっとだけにらめっこ
あしどりかるく
自分のおまんまを
きちんと自分で稼ぎ出す
この勤勉な同居人は
何を食べたかもぐも ....
急な坂を登ると博物館があった。
湿っぽい薄暗い埃っぽい、
いかにも淋しいガラスケースの中、
脱脂綿の上にひっそりとその虫はいた。
大きな虫眼鏡で拡大して、
ようやく何やらイキモノに見える ....
雑草という草はないのだが
雑草と呼ばれているので
雑草なのである
雑な草なのである
腰をかがめて日なが一日
その雑な草を抜く
はこべたんぽぽすべりひゆ
のぎくになずなほとけのざ
....
これは私のための祈りであって、あなたのためのものではない。
山を歩く。桐の花がそろそろ終わりで、空色だった花は汚れた茶色に変わっている。そのかわり茨が満開だ。真っ白な花は鮮やかな美しさを持たない ....
我輩は狛犬である。
うん。
口元はきりりと締まっているのである。
うん。
だらしなく口あけた相棒とは違うのである。
うん。
だが百年に一度くらい口あけて吠えたいのである。
うん。
....
橋は燃え上がり
燃え上がる橋をわたしはゆく
蝉は二次元の丘で鳴く
その声があなたに聞こえるか
蝶は死とすれ違いながら羽化する
その身じろぎがあなたに伝わるか
いつ、と問うな
....
あのひとはあそこにいるのだと
思い馳せてみる二日月の夜
量子テレポーテーションの実験成果を問う
いたって事務的なメールを受信し
月の裏側での勤務を希望する
いたって事務的なメールを送信す ....
長い髪は
一本残らず白かった
乾いた額には
まるで張りがなかった
けれど
一筋の年輪も刻まれてはいなかった
陽光に光る白髪が
宇宙の漆黒の色と見えたのは
ぼくの気のせいだったか ....
ウルが帰ってきたと誰かが言った
わたしは黙って
カペラ産の苦い酒をグラスに注いだ
酒場はさっきからウルの噂で持ちきりで
ウルと話したことがあるという
地球生まれの男が
まるで自分がウル ....
初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、
あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨て ....
どうしようもない高層ビルが砂煙あげて物静かに崩壊していった。それはいつだったか、たぶん去年の五月のことだ。もう終わってしまったゲーム盤の上で人々は右往左往していた。怒鳴り散らしていた頼りがいのある審判 ....
猫が空風の空き地を歩いている。空耳。夕暮れのネックレスはもうすっかりラピスラズリの感触だ。味わったはずのコーヒーの苦みは、いまやどこにいってしまったのだろう? 透明な連鎖。青ざめたトルソが、臍のあたり ....
石の上に三百年。
諺の覚え違いじゃない。
多少誤差はあるが、
この山のなか何百年。
山桜は今年も咲いたが、
最近は子供がこんのでつまらん。
{引用=静岡県掛川市高天神社の狛犬}
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