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窓を閉じる音
主人の居ない蜘蛛の巣の夏
自ら内を選んだ羽
硝子のそばから離れない
骨の寺院
どこか低いところから来る雪
小さな本をめくる
風の夢の終わり
....
まどろむたびに言葉は減り
空をゆくものは増えてゆく
雨涸らす雨
雨散らす雨
こがねいろの輪の上を飛び
冬空にひとり立つものが
野を分ける径を見つめている
踏みつけ ....
水のなかの鐘が鳴る
祈りではなく
怒りのままに
鳴らされつづける
静かすぎる径の
はらわたが響く
光の内の
水泡をほどく小さな指たち
穴の向こうのまぶし ....
木のかけらと
あたたかい水が
午後と夜の境いめに
蒼い浪となり流れ込む
錆は子らの名をくちずさみ
鉱は荒れ野に伏している
陽を転がす指や指
流れの内に華やいでいる ....
灰に埋もれ
陽を見る火
森に斜めに沈む光を
鳥の群れは追ってゆく
振動が夜を包み
左脚ばかりを進ませる
夜は静かに
足跡に満ちる
ざらざらとした光のなか ....
はやにえ
しるべ
ひかりが開けた穴
いそいで
雨の肩書き
午後のおさがり
陽の水母に
別れを言う
溺れかけたのは
羽の子ども
空気の傷が ....
触れている
触れている
触れたいものなどないというのに
扉は閉まる
扉は閉まる
ずっとずっと遠くまで
径は離れる
離れゆく
離れるたびに白くなる
....
緑の通りは影にあふれ
小さな原には誰もいない
橋の上には足音の波
波を押し出す風ばかり
空から橋
橋から原
幾つかの歪みが立つ境いめに
音は残り またたい ....
子どもたちの声が
翅のように過ぎる
曲がり角に撒かれた砂の上を
輪を持つものはゆうるり回る
誰もいない径は
声と鈴に浸され
青空は常にくすんでいる
曇のはざま
....
やはり雨は
雨を招んでしまった
風の無能
鏡の前の
左脚の羽化
鳥が降り
見えなくなる
くりかえし降り
陰を ふくらませる
鏡の前で倍になり
曇 ....
気付くと宙に
まばゆく浮かぶ
私の組織
私ではないうた
すぐに終わる
終わらないうた
空をゆくもの
空はおるもの
空をゆく空
空おりる空
とどま ....
雪に残る足跡を
光が曇で真似ている
直ぐに降る音
水たまりには
緩くひらく虹
つもるものもなくつもり
何も無さを隠している
手のひらのかたちを
隠している
....
視線の爪を切りながら
空を横切るむらさきの溝
曇にも屋根にも放たれる
音より遅い花火たちの粉
うつろな器の重さに驚き
なかのものをこぼしてしまう
姿の無い痺れを ....
見えない電話に
がなり立てていた誰かが
電話を失くして泣き叫んでいた
見えない犬を蹴りつけ
引きずりまわしていた誰かが
犬に逃げられ 泣き叫んでいた
....
曇の裏側 霧の糸
半分の眠り 半分の過去
器からあふれる
布地の光
闇を描き足す指の痛み
静かに眩む暮れのまばたき
ふいに近づき 消える影
遠のくことさえ知らぬ影 ....
大きく重くやわらかい
三角形のパンの塔を
月あかりの径に倒してゆく
眠りに至らぬ眠り気を
眠りはひとつ抱き寄せる
(ひとつ 嘘をついていますね)
はい パンの塔 ....
ふくらんだ水を光の茎が
幾つも幾つもすぎてゆく
未明を見る弧
水を穿つ小さな火
誰かが径に刻んだものを
何かが触れてはすぎてゆく
粗れた光が歩みやがて馳せ
立ちど ....
歩みのたびに舌を鳴らし
空ろなけものを撃ち落す
工作物を
組み立てては埋める
虹の円の周辺の
終わりの無い見本市
エスカレーター エレベーター
ただ此処だけを ....
夏が降り
降り終わり
何もないはざま
何もない宵
明るい
曇だけの
静けさが
滾る
横切っては消える
声と光
水たまりには
別のものが沈む
....
川をのぞきこむ灯が
映る自身から目をそらし
むこう岸を照らし
河口を見つめる
重なる橋が落とす影
金属の網が降らす色
霧へ 霧へ
傾く夜
雨上がりの ....
土を穿つ夜の影
かたちにかたちを閉ざす影
底の見えない
水のような影
径をふちどる暗い静脈
聞こえないものを包みながら
風から風を奪いながら
ゆらゆらとゆらゆ ....
白い建物 白い迷路
扉も天井もない部屋で
頻繁に行われる白い取引
誰も出口を
知りたがらない
拳は白く
階段をのぼる
風が風を
金と緑に分けてゆく
夜の起動音
ふるえ にじみ
したたりを覆い
したたるもの
曇に沈む指に沿い
音はかがやきを増して ....
月の半分が雪を履く
霧の下で遊ぶ水
声を呑み
紋を放つ
はじまりへ還る波を
夜が照らす
浜辺の森から
風が吹いている
波は波の上
ゆるやかに変わり ....
蒼がふるえ 灰になり
灰がふるえ 手のひらになり
折れた蝋燭の火を護っている
時を迂回しようとして出来ぬ径
水に照らされる灯のない径
暗がりをすぎる異なる影
黒が黒 ....
暗がりのなかの水
灯の無い窓に
階段は増えてゆく
樹に埋もれた塔の上部が
少しずつ空になってゆく
花を見つめすぎて
花になるもの
双つの入口
冷えた川を着て融け ....
雨の奥から曇の淵へ
音は光の手を引いてゆく
白は降り さらに
白は降り
ひとり ひとつの場所にしか
響くことのない色があり
胸の苦しいけだものとなり
冬の川を ....
朝の隅の
見えない朝
埃は歪み
渦を描き
金と緑の河を浮かべる
二重三重にひらく空へ
暗がりは流れ落ちてゆく
樹があり また樹があり
むこうには何も無いかのよう ....
夜の荒れ野
肉厚の双葉
祈りに閉じる
滴の手のひら
瀧が桜に覆われ
音しか聞こえない
やがてすべてが
流れの先に遠のいてゆく
舗装路の亀裂に
沈み ....
氷河期が
水たまりに立っている
前を向いたまま
あとずさる
光を手放し
今も 拒んでいる
忘れた 忘れた
だからどうした
おまえ ....
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