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暮れのこがねの海岸に
こがねに染まった猿がいて
石穴に石を通そうとしている
街中にはりめぐらされた
ロープウェイの鉄線を
無人のトロッコが走りつづける
....
包み紙をひらくと
何もなかった
てのひらだけが
よろこんでいた
からくりをひらくと
蜘蛛と草が居た
蜘蛛が草に話しかけると
からくりは動き
草が蜘蛛に話しかけても
からくりは動かなかった
からくりを閉じた
ほんのわずか ....
梟が集まり
少女になった
左目を連れて
飛び去った
虹彩の失い
光のまばたきを残して
荊の洞
乳白の土
夜から径へ落ちる光
水へ水へ分かれゆく
腕ふるごとに
曇呑む曇
刃を振り下ろす
粉の光
風はふたつ
夜を透る
忘れた言葉
積もる ....
羽を
水とともに飲み
水とともに飲み
暮れは破け
むらさきを飲み
光をくぐるもの
目をそらす埃
自分の髪を自分で編む冬
ぬかるみの故郷に降りそそぐ朝
....
柱 文字 からだ
数千年の空の筒
蜘蛛の巣の雨
冷たい青
はらいのけては肌に生え
夜明けを夜明けに呼ぶ鉛
炭の地平に羽と浪を描く
真昼の軍政
砂とささやき
....
かぎ裂きの浜辺を
ひとり遅れて
虹は歩いた
問いには応えず
奏でる指から流れる血
嵐の先をしめす標
会いたい人に会えぬ代わりに
言葉ばかりが目に降りそそぐ
....
水滴の柱が
ゆうるりと地に立ち
午後と夜を映し
震えている
沈みきるまで
樹を見つめる月
荒れた青を
荒れた灰の的に射る
諦められた水色のむこう
....
行き場のない さみしい汗
スリッパの底に 刺さった画鋲
崖の上の銃声
まるく重なり ゆらぐ虹
深夜にたなびく衣の群れ
何かを殺める夢から覚めた
行き場のない さみし ....
からだが
前に前に傾き
おおいかぶさる
眠りつづける
四つんばいの少女
自分もそのまま
眠ってしまう
ぶおう ぶおう
ざば ざば ざば
自分もそのまま
....
幼い虹が
水たまりを駆けてゆく
窓を流れ 昇る曇
誰かが何かを読む声が
水路の終わりに響いている
空に迷う鳥の声
白に降りる白の声
割れた渦にざわめく森
....
水の底で
むかいあっている
水草が
こちらを見ている
水面の陽はむらさき
月が 横切ってゆく
....
灰皿に捨てられた
飴玉のように
灰色に灰色に
笑っていた
青空の下
ひと山いくらのペット
焼き魚のにおい
轢かれた音楽
不親切な
海への道のり
....
布の鳥が鳴き
ほどけては地に落ちる
六角柱の空が
球になろうとして震える
砂煙の夜を
すぎる猫の背
二色をわたる
赤子の息
花のように立つ銀河
白は白 ....
蝶を呑んだものの肌に
蝶が現われ
真昼の終わりまで
話しつづけている
小さな音の
まわりだけの冬
鳥は追う
羽を忘れる
石の径の影
曇のなかの声
....
枝の先端の鳥
影だけの猫
小さな足裏を見つめるうた
花の衣裳で踊る子の
悲しげな指に気づかぬまま
皆は拍手をしつづけていた
....
ひとつの鏡
三つの姿
耳の真上を
すぎてゆく花
つなわたりの月
心に削られ
かけらは降り
夜は
夜ではないかのように
水を昇り 黒は暴れ
さらに高く ....
人の背たけほどある
横長の宇宙船を縦にかかえ
横断歩道をわたり
洞窟に入った
なかには同じかたちの
巨きな宇宙船があり
底のほうにある継ぎ目を押すと
むかって左側 ....
とどかない色
陽の輪郭の
ひらきかけた
ふたつの手
ひとつ まぶしく
請われるかたち
夕暮れをしまい
常なるものをたたみ
庭の雪を見るともなく見
動かない川を ....
けだものがけだものをほどき
同じけだものを編もうとするが
うまくいかず
やがて 泣き出してしまう
見向きもされないものを負い
どんどん重くなるばかり
進めなくな ....
歩みの内に散る色が
音を音に書きとめる
文字と文字と文字の間に
瞼と瞳を忘れながら
夜の窓の
二重の背
霧は霧を咬む
陰を 淡くする
午後とこが ....
すろすろすろ と
言葉は融けて
羊は羊飼いに従わず
次々と夜に飛び出してゆく
目が目でしかないのなら
信じなくてもかまわない
死なないくらいに
傷つけばよい
....
はだか しずく
つたう指
描くことなく切り
なぞる指
動くもののない
冬の対岸
砂に埋もれた
こがねの音
自身の影をついばむ鳥
暮れから暮れへ曳か ....
無いものが
楽譜の床を舞っている
壁のなかに踊るもの
羽に逃れ 曇を巡る
夜の山のむこうから
横顔が昇りくる
黄色に巨きく
振り向きながら 巨きく
泡の ....
河口の雨
割れた水門
岩に触れると
聞こえる音
土の上の
午後の重なり
終わりまで歩いたのに終わりは無く
また同じ氷を引き返す
どの脚を使うか尋ねられ
む ....
霧の村のむこうに
霧の村がある
耳の奥の音のように
白い
小さな花の生えた機械に
水をやりにくる鳥
機械はいつも
眠ったふりをする
いきどまりの ....
空の底の渦を見ていた
塩の海に降る
塩の陽を見ていた
岩から生まれる木を見ていた
息を吹き
声を吹き返される
上も下も
冷たい光の径
捕食の森の
....
爪は冬にのびやすい
良く水を飲み
多く分かれる
手のひらを埋める群集
白旗と痛みを今日も観に来る
耳もとに流れついたさまざまな木を
彫っても彫っても同じかたちにしかならないので
枕もとに置いたり
うなじにぶら下げたりしていたのだが
いつのまにかまた流れ去ってしまっていた
....
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