ひとつ 不在
木立 悟





夏が降り
降り終わり
何もないはざま
何もない宵


明るい
曇だけの
静けさが
滾る


横切っては消える
声と光
水たまりには
別のものが沈む


遠く 近く
風はすぎる
灯の無い径を
蒼は照らす


水は去り
水は追い
水は消え なお
またたいている


晴れてゆく
何もない径が覚めてゆく
暗く 蒼く
ただ在るがままに
無いがままに


鏡の背の羽
艶の無い羽
何も指さずに
すべてを指す標


銀と鉛の曲がり角
居ぬものの足跡を満たす雨
無数の轍 無数の季節
無数の迷路にかがやいてゆく

























自由詩 ひとつ 不在 Copyright 木立 悟 2014-06-21 17:11:17
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