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ちかごろでは、
神様の御札も
値段があがってきた。
不景気だったり 物騒だったりで、
あがったらしい。
そんなわたしたちを見て、
神様は、どういうだろ?
さぞかし心外だろ ....
寒風に手指をかばう
待つとも待たないともいえぬ朝まだき
冷え切った空気が
空高くから透明に降りて
ちいさな公園の
遊具に残る最後のぬくもりを絶やす
ほぅ、と湿った息を吐く
....
なぜ俺は岐阜の人間ではないのか
なぜ俺は島根で生まれなかったのか
三重のようなところで生まれていたらすてきな恋に生きただろう
青森で育っていれば今ごろ宮城あたりで金持ちだったかもしれない
茨城 ....
明日のための『今』を食べる
『今』を吸収した体は少し古くなり始める
古くなる体を抱えて、明日の続きに怯えたり、期待する
明日の続きは死へと確実に繋がっている
一つの歯車が錆始める
きゅるきゅ ....
蜜柑の木々が生い茂る
庭園の芝生に立つと
山の緑の間に
遠い海は{ルビ煌=きらめ}き
枝々の無数の実は
青みがかった光を帯びて
自らの歓びを
天に捧げておりました
....
雨が
ふると
おまえは
泣く
冷たい
シタイを
抱いて
泣く
柔肌に
食い込む
褐色の
夢
砂漠で
迷子
引きずった
跡
だけ
追いかけて
死んだ
焼 ....
ねこって可愛い
飼いねこは飼いねこらしく
ノラねこはノラねこらしい顔しているよ
やっぱし育ちなのかな
ひとに媚びるのうまい飼いねこがいて
いじらしいほどノラなねこがいる
そんなねこって
....
{引用=
大きな車輪が回って
はまぐりな子供たちが「さようなら」と
死んじゃった
残った大人たちは一体何がいけなかったかと
青い鳥を探しまわって
青い鳥はやっぱりいなくて、
黒い鳥しか ....
季節だけにではなく別れを告げるということ
窓のない部屋では聞こえないということ
言葉で削った窓のむこうは万華鏡じゃないということ
中途半端な闇の中
(匂いのしない風がテレ ....
フィチカ、雨の国。
春には雨の花が咲き
夏にはきらめく雨がふる
秋には雨も紅葉し
冬には白い雨がふる
(誰か)が「冷たかろう」と言い
(誰か)が「寂しかろう」と言う
....
アトリエが笑っている
色彩は幾重にも脱皮してゆく
輪郭は幾たびも辷り去ってゆく
窓を開ける
と
浮遊している
さまざまな色や形の椅子たちが
月に照らされ
遠く近く
....
きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。
灰色の雨に流され
こころの小石が転がる
舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
あぶない!そう思ったときにはもう突き飛ばされていて、コワレていた、かしゃん。音がして、包み中のわたしが、コワレ、ていた。コワレたのでみるみる中からわたしが漏れ出し、包 ....
りんごを食べたら
なつかしい故郷の味がした
と言ってはみたものの
この街で生まれ
この街で育ったから
故郷らしい故郷なんてどこにも無いんだけど
でも、不思議なんだよね
ひとくちか ....
爆弾が墜ちると
デマが流れた街で
警報に追われ
バンクするカーブを走った
この街の建築は
爪先から斜めに削れていて
鋭角に尖った
笑みを浮かべている
濡れた雛鳥の翼
抱えて
ひ ....
枝分かれしていく 夜の
長く、しなやかな腕は
わたしを覆いながら それぞれ
しだいにたわんで その先端からやがて
着地し、朝に触れる
不必要なほどに震える あなたの
声と、指先 ....
メロウ おまえ ちい先生を見たか
庭の大きな老木に しあわせにしがみついて
羽化をする せむしの 背から
ギラギラとした 出てくるんだ
真っ昼間から 羽化だぜ
メロウ おい メロウ おまえ
....
てのひらが
形を覚えている
包み込むと
うまくおさまらないので
足りないのだと気づく
これで消しゴムを買いなさい
少年は言いつけどおり
薄暗い文具屋で
できるだけ沢山の
消しゴム ....
昨日のゴミ置き場で
幸せそうに日向ぼっこしていた
白い便器の蓋が
今日は無い
腰を痛めて十日間
介護の仕事を休んでいたら
先月の誕生会で
目尻の皺を下げていた
....
今日も一日、朝起きたらすぐに身体検査が始まる
俺は髪倒れは髪倒れは髪倒れは神だカミカミカミカミ
防護服を着た男が「ウィィィーン」とか言いながら機械音の真似
下から覗くようにカメラが移動 移動移動 ....
子宮から産道を通って思いっきり息を吐いたら
絶望が打ち寄せてきた
だけどまだ、母の温もりを知らないので
知るまでは死なないでおこうと思った
階段を登ろうとしたら
絶望が打ち寄せてきた ....
ボトル開けてください
マスターは無口で気楽
狭い店内は薄暗く
窓の外にだけ鮮やかな色彩
まだ呑めるまだ夜は浅い
高い酒を黙って呑む愉楽
突き出しの菜はほどほどに辛く
心の中でだけ送る ....
071026
今年の夏は暑かった
どれだけ暑かったかというと
高校生が練習中に熱中症で倒れたり
お年寄りが気分を害して
政権党の支持を外したり
グラグラし ....
台所で
母が米を研ぐ音は
別な音がする
えっちら おっちら
えっちら おっちら
母の手が
つめたい水のなかで
ゆきをふみしめる
わたしはうまく研げないので
そんな音がしな ....
くらくらする
空気のなかに
沈みゆく
わたしの四肢達
同化した
観念は
やがては羽化し
また生きる
何度もめぐる
いのちのきせつは
静かに
わたしたちを伸 ....
白いプラスチックの大きな箱の中で
さっきから火事
もうもうとグレーの煙
激しい咳き込み
箱の下からは
ちょろりちょろりと流れ
とても清そう
ひとくち飲んでみたい
箱の上空では
....
牛がこない
遅れるなよと言ったのに
メールさえ返ってこない
電源を切っているのだろう
遠くに
うすちゃ色のまーぶるがみえる
きっとあれだ
おーい、と呼ぶ
MOO―、と感情を長くのば ....
他人のような起床だった
おまけに
水が揺れて上がれない
くるまれた水のしろい肢体が
暗いほうへ暗いほうへ
流されていく
そんな部屋で寝ていたからだろうか
朝になっても
何処にも辿り ....
日々の砂漠に
埋没された
わたしは一本の指
墓標のように立ちながら
指の腹にひろがる指紋は
いつからか
一つの瞳となり
遠くから荷物を背負い
こちらに向かって歩いて ....
セピアいろした靄のなかでは
柄物を照り返す鬼火は見えない
(ふやけたエナージーが衰退したからか)
そして 空洞化した脊椎のなかにも
白物を跳ね返す漁火は見えてこない
(病んだ血が淀んでしまっ ....
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