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さようなら、の向こうで
夢、夢の花が揺れる
その花びらの裏側で
思い出が溜め息をつく
生きて行くことは
分かれ道の連なり
傍らをゆく風さえ
その地図を知らない
今日にうたえば
....
灰色に曇った窓の雫を
つ、となぞると
白い雨は上がっていて
弱々しい陽射しの予感がする
こうして朝の死角で透けていると
ぬるい部屋全体が
わたしの抜け殻のようだ
だんだんと色が濃 ....
きみに会いに行く
本当だった
列車に飛び乗ること
それも盲目ではなくて。
灰色の雨に流され
こころの小石が転がる
舞い散った落ち葉を踏みしめる音は
きみの泣く声に似ているから ....
仄白く明けてゆく空と
暦の眠りから覚めた蕾が
共鳴して
三月の和音を弾く
冬を忘れた陽射しは甘く
僅かに紅を挿した絹の切れ端に
はなびら、の名を与える
こころにある哀しみや空洞を ....
サテンの光沢まばゆく
風が雲の緞帳を翻すとき
ひととき白日夢に眩む
まだ蕾、とも呼べぬ小さな膨らみは
幼すぎて花の名前を知らない
その風の名残のなかで
わたしは繰り返される春を
....
不愉快な覚醒が
北寄りの強い風で更に増して
両手の無意識がコートのポケットを探す
ひんやりとした裏地や
捨て忘れた入場券に
指先は触れているが
今はそれより風から逃れたい
月 ....
カーテンの裏に潜んだ結露を
指でなぞると
するすると雫は流れ落ちて
行き場のない小さな水溜まりは
冬の外気と人の温みのあいだで戸惑っている
わたしはうっすらと冷えた指先を持て余しながら
....