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今僕は、ショパンの曲を聴きながら、以前古本屋で手
に取った「吉野弘詩集」を開いています。薄く赤茶けた
表紙の中心には太陽らしきもののデッサンが描かれてい
ます。なにげない日常の場面を描いた「夕 ....
{ルビ空=から}のビニール袋を
ゴミ箱に投げたら
口を開いて
ふわりと立った
すべてのもの
を
で
すいこみそう
気づくとぼく ....
{ルビ霞=かすみ}のかかる朝
交差点を横切る車の窓に
雲間から射す
日が光った
( 冬の澄んだ路上に浮かぶ
( かたまった光の残照
次の瞬間
「通りゃんせ」の唄は流 ....
蜜柑の木々が生い茂る
庭園の芝生に立つと
山の緑の間に
遠い海は{ルビ煌=きらめ}き
枝々の無数の実は
青みがかった光を帯びて
自らの歓びを
天に捧げておりました
....
昨日のゴミ置き場で
幸せそうに日向ぼっこしていた
白い便器の蓋が
今日は無い
腰を痛めて十日間
介護の仕事を休んでいたら
先月の誕生会で
目尻の皺を下げていた
....
日々の砂漠に
埋没された
わたしは一本の指
墓標のように立ちながら
指の腹にひろがる指紋は
いつからか
一つの瞳となり
遠くから荷物を背負い
こちらに向かって歩いて ....
旅先で出逢ったひとと
うまい酒を飲んだ日は
深夜にひとり戻ったホテル部屋で
まっ赤な顔のまま
はだかになりたい
ベッドの上で
パンツいっちょう
はだけた浴衣
へべれ ....