私は薄い橙と白をちりばめた花束を買い
今日も此処で貴方を想う
数年前のあの日バスから降りてきた貴方は
手にいっぱいの花束を抱え
顔いっぱいの笑みを浮かべ
驚いた私を嬉しそうに見つめた
....
不思議だった
いつものオリオン座が
いつもよりも綺麗だった
寒い夜だというのに
しばらくの間
その輝きを見つめていた
不思議だった
いつもの霜柱が
いつもよりも美しかった
冷たい ....
電柱が侵食する細い坂を
テクテクと上る帰り道
背中越しのフロントライト
生き急かすようで落ち着かない
今日を振り返る帰路は
目の前に細く伸びる影さえ
緩やかな歩みを許さない
小さ ....
春からひとり
流れてきた
おまえ
こんこん冬と
墨染めの宵の川は
さぞ冷たかろう
月様には出逢うたか
さぞ澄ましていたろうに
あれは誰かを
好いている
一に ....
若き頃
道なき道を歩いたな
誰からも相手されずに
涙{ルビ眼=まなこ}で恨みっこ
自分の未熟さ所以だね
今だから分かる若き微熱
こうしてる今も
振り返る日がくれば
....
雨はまだ降っている
何があるわけでもないが
窓の外を
ぼんやりと眺めている
雨はまだ降っている
ぼくはまだ眠らない
窓ガラスを打つ雨音が
不思議と体に響いて
ぼくの呼吸と合 ....
胸のボタンを外すとき
あなたの狡猾な指先を思い出す
背後から不器用そうに
それでいて
未来に待ち受けているものを欺くかのように
(それなのに忘れられないのは
部屋の灯りを消しても
情念の ....
私は一人、円を描き
つま先でリズムを取りながら踊る
夕暮れ時の空は頬染めて
つま先まで 染めあげて
私はは震えを押し隠し
未知の世界に挑むべく
くるりくるりと回り続ける ....
闇に押し潰されて
ぺたんこのあたしと
黒猫いっぴき
三日月の下
『ねこ、ねこ』
ぺたんこのあたしはぺたんこの声
黒猫はにゃあと、
やけに現実でただいっぴき
おまえはあたしを愛し ....
今の自分がすることは
今の自分を壊すこと
今の自分を壊さなければ
今の自分のままだから
今の自分を壊さない限り
新しい自分が生まれない
今の自分がすることは
今の自分を壊すこと
....
愛してる、と何度言葉にしても
飽和し続ける
あたし、そのすべて
瞳からぽろぽろ
それはもはや溶けることのできない
あたしの愛だ
あなたの舌で掬いとって
味わってよ
あたしの ....
日々の繰り返しが
時を止め
時間だけが過ぎてゆく
月曜から金曜は
他人の空間の中に
特別な意識もなく
身を沈めている
小さな場所の中で
自分だけの時が
ほんのわずかだけ動き始める ....
口から零れる本音と建前
あまりに多くて混ぜこぜで
戸惑い顔を見つめたときに
初めて気がつく本当の意味
ほんのり染まる静かな心
独りになりたくないからと
悲しい瞳で私を見ても
私も同じ ....
ドロシー、カサブランカ、
喪中の君が
家の塀で遊んでいる
数台の引越しの車が側を通り
今日もどこかで引越しがあるのだ
と何となく感じる
言葉はまだ書けないから
でも言葉はもう口に出来 ....
そこに花がある
名前は知らない
けれども
その花にしかない色がある
それだけあればそれでいい
そこに鳥がいる
名前は知らない
けれども
その鳥にしかない翼がある
それだけあればそ ....
脳をまさぐると
まるでさっきまで
そこに在ったかのように
断片が輝きを放っていた
思い起こす
笑顔のような表情
涙声と数々の溜息
隙間を広げた綻びから
記憶が流れ去っていく
....
恋が苦しいってことを知らなくて 恋をしたわけじゃないのに
胸を締めつける切ない痛みに耐えられず
どうしていいか解らずに ただ泣くだけの自分
自分を責めたって痛みは消せない
あの人を責め ....
あの日、僕は光の中にいた
何もかもが眩しくて
光を受けず、光を放っていた
夏の中だったのかもしれない
あの日、僕は光の中にいた
何もかもが輝いていて
光に当たらず、光を照らしていた
....
黄色に銀杏の葉は染まり
秋の終りの冷たい雨を浴びて
一枚、また、一枚と散っています
月日は流れ香りだけ残し
貴方は遠い場所へと旅立って
私は二度と帰らぬ貴方を待ち続ける
未亡人と化す
....
飛び立とうと
夢みる鳥は
太陽を目指し
あの時羽ばたいた
幾度ゆめみただろう
飛べなくなった翼
空に反発する事も無く
力無き瞳を覗けば
惰性と少しの岐路が
常に揺らい ....
丘の上で 小さく うたたね
目覚めれば
バニラ
二年前の ジャムの気持ち
きみは いつも
ちいさな 舌で
そっと くちびる 舐めてくれたね
リードは
きみと ぼくとを 繋ぐ ....
月曜日は新聞当番なので
いつもより一時間早く出勤する
業界紙も含めた各紙を切り抜き
部長室分もあわせて十三部コピーする
厳密に言えば著作権違反という議論も
今ではどこかに行ってしまった
そ ....
お時間です。
名残惜しいけど。
帰りましょ。
電柱と同じように
等間隔に植えられた木々の公園
朽ちた木材のベンチだけが
元来の自然を人々に示す
誰も座れなくなったベンチは
誰も迎えることができず
ただ一人で
日向ぼっこを楽しむ
....
どこにも行かないで
そばにいてみつめて
月も凍えるこんな夜は
誰もが人恋しさに震えながら
星の{ルビ運命=さだめ}に想いを寄せるの
流星がスパークしながら
落ちて行くわ涙のように
....
陽だまりのベンチで
あなたの姿を見つけたよ
何気ない仕草のひとつひとつから
幸せのあり方を掬いだしては
これで良いのだと
ひとり頷くあなたの姿
大きな卵でも抱きかかえるように
胸の前で孤 ....
大切なことは
大切にするということ
大切にすることができなければ
大切なことを失うということ
大切なことは
大切にされるということ
大切にされることができなければ
大切なことが消える ....
あなたは澄んだその声で
小さな愛の歌を口ずさむ
私はそれに耳を塞いで
雨の音ばかりを気にしてた
明けない夜はないって
あなたは私を抱き締めた
私はその手を振り払って
また一人に戻って ....
冬の中に
君の白い息が眩しくて
なぜか視線をそらしてしまう
ぼくがいる
冬の中に
君の凍える姿が悲しくて
なぜか空を見上げてしまう
ぼくがいる
冬の中に
ぼくの凍える姿に手を ....
今日、流れ星を見たんだ。
星も疎らな、そらの中で。
ホント、何年ぶりだろうか。
風邪気味の体が、少し楽になってね。
ちょっと恥ずかしかった。
願いごとなんて、云う暇なかっ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15