蟻地獄柱時計の午後三時
ブルースと夜霧のためのバーがある
黒百合や母のピアノの埃拭き
角を曲がる
過度に曲がる
曲がりすぎて
大破する
大破した木造船の
欠片を集めて
人の形にしていく
そうしているうちに
祭りは終わる
消灯時間になる
何が耳かわからなくなる
誰か ....
あいをください
ゆるしてください
こころをあらわせてください
たすけてください
....
音大生とつきあったことがある
NTTのとか、東京海上とかもある
大学や会社と付き合っていた訳じゃない
深層心理では、そうなのかも知れない
新緑の影が濃くなる
そのした ....
肩に通う筋肉遠く山奥から
道ひかる部落へ無色の板を手に
感染経路青く塗る母国語を捨てて
電線にティッシュ弾かれ交わる影
へこむ石に頭を寄せては返すひと
電球吊った天井高く ....
地下の機械室で
とつぜん白熊が働くことになった
あの北極の白熊である
会社では白熊も雇わなければならない
そのような法改正があったらしい
私の部下として配属された
初対面のとき
イッ ....
砂浜のちいさなたそがれに汐風をうけて
ふとった子蜘蛛が舞い降り詩集の端の水をのむ
大気中のかなしみも八つにきざみ鋏角にはこび
せんべいのように噛みくだかれたこころ
わたしはお前に咀嚼されな ....
地下鉄はきらいだ
そとは暗い
こんな朝に
あいさつを
したいのに
*
このうすいからだの皮膚に
染みだしたような
うわずみのような感情が潤んで
それを掬おう ....
階段が出港する
上る人も下る人も
その時だけ水夫になるのだった
ドラを打ち鳴らす男、今日も支配人
石の庭に椅子を出して座ると
どちらが本当の笑い話か
ほとんど区別がない
きみどりの薄皮をひらいて
瑞々しい透明を露出させる
縦に切っても
横に切っても
どこまでもたまねぎだから
うれしくて
うれしくて
なきそうで
やわらかい切り口に
崩れそうになる
か ....
どちらを向いても なぜかいつも向かい風
「宿命なのさ」と笑う君
つないだ手さえ「宿命なのさ」と笑う君
向かい風にも ふたりで行こうね
素潜りで
{ルビ鮑=あわび}を密漁する
丹後半島の
夜明け
海で生まれた太陽と
山に入る月の夢、
肩がこる
髭の男が少年や
座礁した五月
白身のま ....
名付けたいひかりの先に
やさしいリビング・ルームがない
一握りのたましいが
あかるみに美しく滅んでいる
並んで有機物が芽吹く
動とも植とも
青とも赤ともつかないまま
....
三丁目のタバコ屋さんの向かいの家に
春のはじめに女の子が遊びに来ました
少女はギターを抱えて 切なく響く歌声で
僕を幻想の世界へ つれていきます
三丁目のタバコ屋さんの向かいの家で
....
1ヶ月のうち15日まで寝ないで働いて後はずっと眠っている
この社会の生き物達はみんなそうだ
しかし中には真逆の生活をして悪さを働く者もいる
その為に警察は悪さを働く者と同じような生活をし ....
葱の葉を包丁の刃が貫いてきらっと光りじっとしている
喫水を傾いだキャラベル船から
周辺の魚にふるまわれた金貨が
凍える泡を巻きこんだ海流の底に
横たわった鏡をつらぬいて
細い螺旋を描きながら沈んでいった
激しく凝集する深い奥には
歪んだ 乾 ....
漆を塗り
さらに金箔を張った
豪華なわたしの部屋には
窓がありません
窓際無いのトットちゃん
トホホ
髪が伸びる
ゴムのように伸びる
オホホ
扉を窓にかえようよ! ....
駅前に
都会が落ちていた
命のように
きれいだった
なくさないように
拾って
ポケットにしまった
そして
三年振りの待ち合わせに
僕は現れなかった
この世の
美しいものだけをあつめて
花束にして
ガードレールにそっと
捧げよう
PRAY
絶対的な速さの
むこうがわに逝って
野垂れ死にした
男に
祈りを
墓標の代わ ....
ふと机に落ちてきた虫の
羽が綺麗に光っていた
いつもは黒く見えていた羽は
さわやかに透明だった
何の因果があって
ここに落ちてきたのか
少なくとも自分に
わずかな命の存在を
教えてくれ ....
・
初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
....
街灯に蛾が群れている
明滅する明かり
雲がさあっと横に分かれて
月が顔を出した
誰もいない
蛾がひっそり群れている
角からぽーんと勢いよく
何かが飛び出した
赤いビニー ....
炎は燃えたまま凍っていた
寒さが突然とやってきて
熱い炎を丸ごと凍らせたのだ
絶えず形の定まらない炎は
この冷たさに固定された
動こうとする意志を持ち続けたまま
静止している
その世界で ....
まどろみの限界の中私たちは生きている
崖を踏みはずしては根っこにつかまり
そこから養分を得て私たちは生きているのだと言う
真下を見下ろせばなにもない暗闇とも言えない
だだっぴろい空間だけが ....
抜け殻
風にそよいで色あせていく毛皮からでたりはいったりするたましい
水たまりのわだちで
のぼりたての太陽がぼんやりと揺れている
ハレルヤ
ハレルヤ
ハローしんせつなサマリアの ....
夏はまっすぐだ
降り注ぐ光や
伸びでくる枝など
何から何まで直線で
それでいてどこか
やわらかい
まっすぐな夏は
どこもかしこも元気で
隙間があれば
そこは自分の場所だと
我先にと ....
闇に流れ込む
冷えた空気
海辺に
忘れられた
硝子の破片
そこには只 自然だけが
そこには只 自然だけが
風の中に夏がいる
瞳を輝かせている夏がいる
汗の匂いが風を通して
伝わってくる
じりじりとする太陽の
その気温に負けないくらいの
心に燃えるものを抱いて
一生懸命の夏がいる
結 ....
山鳥は、
語りえない
ゴム、しゃぼん
せかいは いとも
かんたんに
喧嘩する
きみを ぼくは零す
しゃぼんのせかい しゃ
ぼんの せかいは 簡単に
....
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