すべてのおすすめ
確かなる音して机上にベコニヤの
花ガラ落つる物読むときに
賀茂川の段差の水も春めきて
吾が影長く 流れに写す
草伸びて 足にまとえる散歩路に
踏み行く処 つつじ咲きつぐ
雨 ....
廃屋でナイフの肌を重ね合う禁じられたあの遊びをしようよ
抱きとめた夜の重みに喘いでる君の肋骨君の肋骨
Tシャツを着替えるように毎日を無造作にいきて沢山失って
名前 ....
焦点をぶれさせるため朝はある 指のすきまに宿る色彩
眠り明け 耳鳴り低く響くので 夢のはしから余白を殺す
むしられる前のつぼみに似たひとの、首をしずかに傾けるさま
唐突に遠さ ....
チクタクと時計の針が刻む音音もないまま積もった想い
夢を見て泣いて目覚めた{ルビ朝=あした}は遠く気づいてしまう母も老いると
竹の葉に埋もれて眠る秋の午後「もういいかい?」のこだまは遠く
....
そう、確か約束したのは今日でした。あの日と同じ月は無くとも
まっくらな夜に逆らう星たちを握りしめよ、と右手をかざす
涼しさは不意撃ち気味に訪れて何も言わずに終わっていく夏
....
お見合いの場をとりもちて話題とす
梅雨の晴れ間の夏萩の色
方形のタイルに朝日照りかえり
台風去りて厨秋めく
無人駅に日ぐせとなりし雨に逢い
止むを待ちつつ夕顔に佇つ
想い出 ....
夕暮れに一緒に歩く帰り道 二人並んだ長い影見る
目の端に映る紅、桃に白。君が好きだと言った秋桜
棘刺さる胸の痛みを誰や知る ムクドリのように色には出難きに
外にいて見るともる灯の暖か ....
今日かぎり歌わじと思う心にはなにものもなしさらさらと水
月光も揺らるや海の真ん中で無き夢となり朝日を待つか
一人では死にきれぬ故か入り来た部屋の夜虫をまずは殺して
寂しくも悲しくもないよただ、ただ暗闇がずんと来るだけ ....
声高に客呼ぶ声に客は無く
山の如くに蟹を売る店
降りそうな空を支へて木蓮は
仁和寺の庭に煙るごと咲く
尼寺はどうだんつうじに囲まれて
静かな一角春陽をまとふ
雑踏はめっきり ....
相手との距離をいちいち測ってるそんな定規、恋にはいらねえ
半目開け寝るクセ笑顔で指摘され治らなくてもいいかと午睡
完熟のすもも真っ赤なジャムにしておまえも染まれと唇にあてる
....
七色をくりやのサッシに散りばめて
夕陽は秋の入日を急ぐ
絵の具にてぬりしか如き文鳥の
若草色の胸毛がふるふ
喧噪の巷を逃れ花野ゆく
嵯峨の小径は露しとどなり
その名もて紫式 ....
太陽に撃たれてしまった今日という夏が私を浄化していく
反乱の白い日傘を青に塗りわたしと空が同化する夏
「その花を頂きます」と来る予告、たぶん夏には盗まれている
風鈴の ....
草市に うみほほづきを購いて
海の味する遠き幼日
朝ごとにくぐもり啼ける鳩の声
故里に啼く森を想えり
西陽射す路に日課の水をまく
秋めきし風に虹たてながら
白白と待宵月は行き来 ....
蚊をたたく
てのひらためらう
夕暮れ時
夕餉時までの
薄昏のとき
近くにて花火の爆ぜる音のして
幼等の声 広がりてゆく
指染めて高菜をもめばよみがえる
故里の畠にゆるる菜の花
窓明けて寝ながらに見る夏の夜
高層ビルの窓に動く人影
夕立の前 ....
新雪を犯して歩む足跡が黒く
続きて物語めく
人走る足音ひびく小夜床に
大寒と言う静けさかとも
蓑虫が瓦に下り風花に
吹かるるが見ゆ窓に寄るとき
胸のすく音させて割る うす氷
....
不可思議と呼び捨てるにはまだ早い
猫の目うるる、美しいよる
いくすじも星をえがいてよるが降る
ふたつ並んで揺られあう尾に
滅びても興り続けた王国をたどり違える満月の ....
七月の海が三日月たべている
平和な孤独をつかんではなして
猫だけに見える景色があるという
二足歩行の失敗例です
席を立とうとしてつま先を踏んづける
また僕 また僕 また僕なん ....
夜を覚めて雨音に肌の潤えり
冬の旱に満ちて心良し
霜などは年中知らぬと紀州路は
オランダ豌豆 冬花盛り
サルビヤの花立ち枯れて残る紅
紀州路を行く旅の実感
それぞれに旗を揚 ....
ブルドーザー河川工事に爪上げて
アワダチ草を踏みしだきゆく
谷わたる霧のさざ波見て過ぐる
炎ゆるが程の紅葉なかりし
皮はがれ磨がかれし肌のつややかさ
杉の匂いの立ちこむる里
杉 ....
かけゆきていきぎれするほどのぞむさきのぼりみつめたあなたのそのせ
そのひとみながめるものをとせをのばしおなじめせんにうつるあおぞら
かえりみちくつずれかくしすずしがおとおい ....
風めくるページの中に君を見る押し花のよな僕の心は
暗闇に輝く電子その震え君の思いを伝える小箱
走りきる海の無い道走りきる人生の崖君を求めて
ただ雨を飲み干し満たすこの渇き恵みの雨の慈 ....
目の前の妖しき影にいぶかりしも
あげ羽蝶なり思はず和む
家毀ち空地となりて草萌ゆる
中に蒲公英艶やかに咲く
北山は吹雪と見えて霞みゐる
吾が行く川辺 陽は燦燦と
山茶花の花 ....
芝草の緑一雨ごとに伸び
犬と行く道 青く広がる
街路樹の高き梢に銀杏の
黄金に熟して風をはらめり
玉葱を吊して土用の暑にこもる
風吹くらしき つるバラゆるる
純白の酔芙蓉咲 ....
洗剤より生れしシャボン玉の遊泳を
掬えば窓に にげる虹色
シャボン玉掬はむ姿勢 すかされて
運動神経 鈍る年かと
俄か雨に荷物ぬらして声もなく
ちり紙交換 信号に止まる
....
長雨の晴れておちこち競ふごと干し物
ひらめく冬空の下
おしどりが小さき雨の波紋消し
みどりに染みし池をめぐれる
(苔寺にて)
花冷えの椿の寺はひっそりと五色の ....
《宿題は涼しいうちに済ませましょう》 お前の胸は痛むだろうな
ぢあぢあと蝉が鳴くのを外に聞く お前の胸は痛むだろうな
世を嘆き人を憎んで夢の中 お前の胸は痛むだろうな
....
会話なし ずうっと見てる窓の外 地下鉄なのに 地下鉄なのに
雨音のぱたりぱたりと心地よくけぶる視界にひらく番傘
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11