瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている
僕は機関車と同じ匂いの ....
視界は常時、光が触れてくる
手をかざせば影が口元を抑えてくれる
喉元は絞められるためにとっておくよ
どこに君はいる
僕は離れ方を探している
ごめんなさい
謝る声が逃 ....
きよらかな ふゆの
卵を ひとつだけ
孵らせる ために
些細な じぶんを
しきりに ふりおとす
癒えるにつれて ひどく
かゆくなる 若いころの
途方もない ゆめをみて
あけがた 目をさますと
指先が 血まみれだった
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あな ....
ここに 在ることの不思議
みんな 誰ともちがう
経路をたどって いまを
生きている のだから
しあわせを ひきくらべるな
薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい
消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶ ....
どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた
その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛 ....
好きな花の名前を聞かれた
うまく答えられなかった
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
正しいものと
正しくないも ....
空の 鏡 に ひび
はしり く だける かけら
燦燦 と ふる その
う たかたの き らめきに
死 すとも くや まず
たったひとりの あなたへ
とどく かもしれない
ことばの しんじつを
かんがえて こどくを
えらんだ のです
またひとつ あらたな
欠落を ありがとう
ともに ぎんいろの
ページを すごした
しめやかな 夢の小冊
手作りケーキのお店で
あなたを愛した
愛したあなたは
ケーキを作った
作ったケーキは
おそらく誰のことも
愛することはなかった
その向こう
山と海とが
平行に交わっている
窓か ....
やぶれめが ひたいに
あるので うつむくと
こぼれて くずれさる
すなの ふくろだから
かおを あげてあるく
まだ夜の明けないころ
街は少し壊れた
機械の匂いがする
昨夜からの断続的に降る雨が
いたるところ電柱にも
あたっている
いくつかの窓の中には
ささやかな抵抗と
使い古された ....
つぎつぎに矜恃の
虹をかさねて重く
はじけないように
あふれないように
みずからを律して
あなたと その周辺を分解し
組み立てなおし 恒星のことばで
したためて 郵便受けに
ほうりこんだが 返事がない
いや たぶん絶対に こない
かみさまが 足あとを
のこすのは きまって
救いへの 導きだから
すいません その道は
しばらく 使いません
飼い殺した新鮮な感情 目は曇っている
心に吊ったてるてる坊主 一体 何個目かな
絶えない否定と肯定 大丈夫 昨日は戻らない
慰めるだけ 虚しくなるから わかっているのに 忍ばせた
卵が ....
老婆はいた
透明なアトリエに
少年とともに
パレットの上ではいつも
色がつくられている
新しい色は
ひょっとしたら 美しい色
かもしれない
ふたりはひとりで
....
背が伸びる事
それは色々な『こと』がわかる事
『小さい頃に描いた夢のこと』
『大きいと思っていた世界のこと』
『明日を思い描いていたこと』
『宇宙飛行士になりたかったこと』
それが ....
空に 空に
吸い込まれる
真っ白い太陽が
風の吹かない季節の王
海へ 海へ
ゆっくり溶けていく
真っ赤な太陽が
風の吹かない日の王
わたしたちの心を
焼いて 焼いて
記 ....
練習船
黒い尖塔
木馬の何頭かを失ったまま
メリーゴーラウンドは廻転している
空はいつでも鋭角
時折少年が墜落してくる
旗竿の上で
燃え尽きる旗
その下でそれでも昏い宴はつづく ....
明るく 狂いはじめた
台所で 近代の抒情を
さんまいに おろして
こんがり 焼いてから
店頭に ならべておく
どんなに 踏みかためても
道は じぶんのものに
ならない どれだけ
あるいても あなたの
背中に たどりつけない
月を めくってみる
秘密を のぞいたら
夜空を ひっかいて
泣きながら 百億の
星を はがしてゆく
寝台車の匂いが
掌にする
腕はまだ
距離を測っている
残されたものを集めると
骨の近く
きしきしして
初めて靴を買ってもらったときの
恥ずかしい喜びしか、もう
いらない
....
老廃物と手をつなぐ
せつないから
死んでるようだ
見たものが
足元で花になり
ピアスでしたね
初めてのプレゼントは
初めてでしたね
はがれていったのも
見送ることは時々
見送ら ....
階段を さかのぼって
その当時に もどると
親友を 裏切った直後の
わたしが あめかぜに
漂白されて 立っていた
ひこうき雲が ゆったり
拡散しながら 高度をさげて
着陸場所を さがしている
地につくまえに すっかり
消えてしまう というのに
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