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冬の夕暮れ 老人ホームの庭に出て
A {ルビ婆=ばあ}ちゃんと若い僕はふたり
枯葉舞い散る林の中へと ずんずん ずんずん 進んでく
「 A さん、目的の宝物がみつかりました・・・!」
....
目には見えない「現実の壁」に敗北して
言葉を失いしばらく立ち尽くしていた僕の背中は
やがて青空からの{ルビ息吹=いぶき}に押されて
いつのまに
古時計の長針と短針がゆったりと逆回転する
不思 ....
世の風に流され
秘め事を{ルビ懐=ふところ}に隠し
灰色のコートを羽織った背中を丸めた男の後姿が独り
世の風に{ルビ抗=あらが}い
闇の向こうに見える光へと澄んだ瞳を向け
空色のシャツを ....
今夜も僕はこれから詩を書くだろう。
この世界の何処かで初冬の密かな風に震えて
独り詩情を求めて街灯の灯る夜の小道を歩く
名も無き「も ....
僕が以前働いていた特養で十三年生活していた
身寄りのない K {ルビ婆=ばあ}ちゃんの告別式が老人ホームで行われた日の夜
他施設との懇親会が行われ、
僕は「はじめまして」とテーブルについて
「 ....
つまずいてばかりの日々にうつむいて
ちぢんだ心を{ルビ潤=うるお}す
水の湧き出る場所を探し歩いた
立ち止まり シャベルで穴を掘り続け
気がつくと
静まり返った暗い穴底にひとり
小 ....
老人ホームの廊下にぽつんと置かれた
老婆の横たわるリクライニング
動かない首をギブスで固定され
閉じた瞳を{ルビ顰=しか}め
入浴の順番を待つ
「{ルビ今日=こんにち}は」
....
北鎌倉・東慶寺の敷地内の喫茶店
外には店を囲む竹垣が見えるガラスの壁
に寄りかかりコーヒーをすすっていた
顔を上げると
店内を仕切るガラスの壁の向こうに透けて
カウンターの中に一人の妖精が{ ....
親父は定年退職し
母ちゃん専業主婦となり
息子のぼくは半人前
母ちゃん家計簿とにらめっこ
ばあちゃんが払う食費も1万ふえて
なんとかやりくりの日々であります
雨もりがあふれる床
....
人と争うように働いて
話す気にもなれず
押し黙ったまま一日を終える
仕事帰りの公園のベンチ
あたたかいゆげで慰めてくれる
たこ焼を食べていると
目の前の通りを
なかなか客に呼び止めら ....
「なんでぼくはいきているんだろう・・・?」
十代の頃から十年以上問い続けてきたが
宙に浮かんだ透明な「答」を今もなお{ルビ掴=つか}みあぐね
差し伸ばした腕の先に手を開けば
只 僕というち ....
一枚の葉も無い
一本の細い木のように
突っ張った体がベッドの上に横たわる
焦点の合わない瞳
微かに呼吸する半開きの口
折れ曲がり固まった枝の腕
真っ直ぐに交差した両足
手首に刺した点 ....
真っ青な空が広がる秋晴れの日
息絶えた老婆は白い{ルビ棺桶=かんおけ}に{ルビ蓋=ふた}をされ
喪服の男達の手で黒い車の中へ運ばれた
人生の終止符を告げるクラクションが低く鳴り響き
親族と ....
暗闇に咲く白い花は風に散り {ルビ蝶=ちょう}の羽となり
ゆるやかに宙を舞い
残された葉の一枚も一本の細い茎を離れ
ひらひらと
豪雨の過ぎた激しい川の流れに飲み込まれて ....
真夏の日差しの照りつける
石畳のオランダ坂を下っていると
左手の幼稚園の中には
元気に足踏みしながら歌う
水色の服を着た子供達
入り口には
ひとりはぐれて泣いている男の子
笑みを浮か ....
高く澄んだ青空の下
広い芝生の上
この細腕には少し重いベンチを
歯を食いしばり運んでいた
色とりどりの枯葉が無数に敷かれた
穏かな秋の陽射しに影を伸ばす
あの{ルビ木陰=こかげ}まで
....
*前編*
去年の夏、僕は声をかけてもらっていた詩の朗読イベ
ントの出演も兼ねて、神戸への旅に出ていた。旅に出る
と決めた時から、僕が敬愛する故・遠藤周作先生が幼い
頃に母親と通ったカト ....
29歳の僕と53歳の N さんが
向き合うテーブルの上に離れて置かれた
2つのコップ
減り具合もそれぞれに
薄い道の途中で{ルビ佇=たたず}むように
遠い未来の方から
おぼろにやって来 ....
思い返せば僕にも「青春」と呼べる時期はあった。新宿・歌舞伎
町で地面にダンボールを敷き、夜明けの始発の時刻に僕等は立ち上
がり、それぞれの現実に向かって歩き出し、駅の改札で互いの手を
打ち鳴ら ....
振り返れば
手の届きそうで届かない
「昨日」
に責任の全てを背負うかのように立っていた両足を崩して
独り誰からもかばわれることなく
地に身を伏せている私がいた
幻想の友情に終止符が打た ....
天神で評判のラーメン屋でとんこつラーメンを2杯食い
満たされた腹をふくらませて夜の{ルビ那珂川=なかがわ}沿いを歩いていたら
遠くに並ぶ屋台のぼんやりとした明かりが見えてきた
橋の傍らにひっ ....
もう一度
その無数の紅く小さい花々を闇に咲かせたシャツの下に
酔って赤らんだ白い背中で
僕に{ルビ凭=もた}れてくれないか
なぜ
君の背中のぬくもりを
もっと素直に感じなかっ ....
頼りなげな細い女が
曲がりゆく細い道を
秋風に揺れながら歩いている
茶色く{ルビ褪=あ}せた{ルビ麦藁帽子=むぎわらぼうし}に顔を隠して
道の上に時は無く
女に年齢というものは無く
長 ....
やがてテントを夢色に染める
オルゴールの{ルビ音=ね}は消えゆき
客席に響く拍手の{ルビ渦=うず}におじぎするピエロ
幕が下りるとくるりと背を向け
舞台袖を降りて入った
楽屋の鏡の前に座り
....
草よ、伸びよ
我が胸の内に
人々の胸の内に
その幾人もの胸の土壌に
根よ、根よ、根よ、
張りめぐらされよ・・・!
人と人を結ぶ{ルビ縁=えにし}の糸が
誰かに手を差しのべる
....
4年前の夏のこと
きみとぼくは
上野水上音楽堂のイベントスタッフで知り合い
深夜の上野公園の不忍池のほとりに
しゃがんで向き合うふたりの間には
垂らした線香花火がちりちりと光っていた
....
誰かさんに怒られると
すぐに浮かぶのは言い訳ばかり
のどの奥に ぐっ と飲み込む
( 夏の窓辺には蝉のぬけがらが置かれていた )
ぼくの{ルビ至=いた}らなさで
誰かさんの表情を ....
三階のレストランの窓から見下ろした
木造の橋の向こうへ伸びる石畳の道をゆく
白い服を着た君の背中はだんだんと小さくなり
緑の木々の下に消えた
立ち尽くす僕は
次いつ会えるかもわからない
....
晩ご飯を食べようと牛丼屋のドアを開くと
レジの横で店長のおばちゃんが
「生活の重荷」を背負うように細身の背中を{ルビ屈=かが}め
書類を{ルビ睨=にら}み何かを書き込んでいた
厨房では新入 ....
真夏の昼下がり
{ルビ春日通=かすがどお}りを歩いていると
ふと右手に
「東京都民戦没者・慰霊の地」
と記された入口が静かに口を開いており
吸い込まれるように足を踏み入れた
頭上の青空 ....
銀猫さんの服部 剛さんおすすめリスト
(276)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
柱の印_〜働き者の_A_婆ちゃん〜
-
服部 剛
自由詩
9*
05-12-6
夢の小部屋_〜もの忘れのお婆ちゃん達と共に〜
-
服部 剛
自由詩
7*
05-12-4
「鏡の中の紅い花」
-
服部 剛
自由詩
6*
05-12-2
詩人の墓前に祈る_〜北鎌倉・東慶寺にて〜_
-
服部 剛
散文(批評 ...
9*
05-11-20
白い花に囲まれた寝顔_〜_K_婆ちゃんに捧ぐ_〜
-
服部 剛
自由詩
11+*
05-11-17
「井戸の底」
-
服部 剛
自由詩
13+*
05-11-17
茨の冠
-
服部 剛
自由詩
9+*
05-11-14
「ガラスの壁の向こう側」
-
服部 剛
自由詩
6*
05-11-8
さといも家族
-
服部 剛
自由詩
22*
05-11-5
白いゆげ
-
服部 剛
自由詩
23*
05-11-1
鏡の中に映る人_〜誕生日に想う〜
-
服部 剛
自由詩
7*
05-10-30
裸の女
-
服部 剛
自由詩
11*
05-10-27
枯葉の散る頃
-
服部 剛
自由詩
11+*
05-10-18
一枚の葉に浮かぶ顔
-
服部 剛
自由詩
12*
05-10-14
魔法の文字_ー長崎にてー_
-
服部 剛
自由詩
10*
05-10-9
秋の呼び声
-
服部 剛
自由詩
8*
05-10-4
孤狸庵先生の面影を探しに_〜‘04__8月_Poete_on ...
-
服部 剛
散文(批評 ...
8*
05-10-3
2つのコップ
-
服部 剛
自由詩
9*
05-9-30
改札で詩友達と別れた後に
-
服部 剛
散文(批評 ...
7*
05-9-26
草叢から仰いだ空
-
服部 剛
自由詩
7*
05-9-22
旅先の川沿いを千鳥足で歩いた夜_〜博多にて〜
-
服部 剛
自由詩
7*
05-9-19
背中のぬくもり
-
服部 剛
自由詩
12*
05-9-17
幻の花
-
服部 剛
自由詩
9*
05-9-12
月夜のピエロ
-
服部 剛
自由詩
10*
05-9-10
草の下に埋もれた鳩
-
服部 剛
自由詩
7*
05-9-6
再会の日_〜’05_9月4日_上野水上音楽堂にて〜
-
服部 剛
自由詩
9*
05-9-5
ぼくのぬけがら
-
服部 剛
自由詩
6*
05-8-26
「夢のひととき」
-
服部 剛
自由詩
9
05-8-23
牛丼屋にて
-
服部 剛
自由詩
4*
05-8-18
静寂からの呼び声_〜’02年_8月15日・終戦記念日〜
-
服部 剛
自由詩
5*
05-8-15
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
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