リトマス紙の夏
望月 ゆき

右曲がりの坂道を
30歩のぼったところ


雨上がりには
アジサイが
酸性やアルカリ性に色づくので
それならば涙は、と
通りすがりのにわか雨を
ふたたび


つま先に 
ひとつぶの氷
ひろってそれをポケットに


透けてみえるほど近くに
夏は在って
ポケットの中で
氷は揺れている


にわか雨もやんで
アジサイは
名残りのアルカリ性


ポケットの中では
相変わらず
氷が揺れている


どうしても 氷が騒ぐので


もう 夏は
あきらめなければ、と
思った



自由詩 リトマス紙の夏 Copyright 望月 ゆき 2004-07-09 02:16:32
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