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(伸ばされていたのは僕らではなく、日の光だよ)
そう、
つぶやいていたのは誰の横顔だっただろう
同じ服装の顔と顔とが集まっていく、丸顔の時計の下は
いつも降り積もるばかりだった
きょうし ....
ぐはぐははひとじゃなかった
でもはぐはぐしちゃった
だってあったかいもん
ぐはぐはは「ぐはっぐはっ」よろこんでた
ぐはぐはいうからぐはぐはなんだよ
それってわかりやすい
....
風に とばされてきた
ことばが ひとかけら
髪の毛に ひっかかっていた
手にとると 雪のようにとけて
わすれていた人を 思いだした
空が飛んでいる
空が飛んでいるので全ての羽が浮上する
見つめることはいつだって透きとおる
見下ろせば ものの在りかはかなしい
重力の堆積が歴史で出来ているなら
ぼくらの言葉は足跡のように ....
雨の来ない図書室では
忘れるように眠ることが出来た
背の高い書架の影で彼らは
姿を確認するために囁き合う
私の載っている本がない
私たちの乗っている街は
地球儀の上に針で止められている
....
すてきな しっぽのある
いきものを もらった
まちがって しっかり
聖水で 洗ったら
死んでしまった
降り積もるものだ
わたしたちは更新されていく
みえているものがあきらかにぬりかえられていく色に
毎秒ごとに降り積もるものに
くちびるを噛みながら凍り付いた湖の上をショートカットする
ト ....
もう自分の場所に
やすらぎがあるので
という理由で
前に進むことを停めた友へ
アガー整骨院は
久茂地交差点の近くにある
それは痛いという意味なので
痛くなったらおいで ....
君の声がどうやって千切れてゆくのか知らない
どうか耳をよせてください
いいやよせないでください
僕はカミキリ虫みたいに叫んだ
その声は成層圏を真っ二つにした
そんなわけない
ど ....
花に触れるとき
手のひらは
香りにも触れている
手のひらでは
匂い
感じられないけれども
花に触れるとき
手のひらは
色にも触れているのかどうか
手のひらで
....
中学校の図書室で
詩の書き方という 本をひろげた
文芸部に入りたてで
それなりに 真面目だった
そこで 出会ったのが
高村光太郎様作 火星がでている である
ひと読み惚れという言葉 ....
あなたの黒髪を
巻き付けて
どんな電流を流せば
私は磁石になるのか
あなたのコイルで
包まれて
熱が生まれると
それは法則だ
磁場の中で
迷子になり
熱が冷めても
....
さ
望んでごらん
何でも手に入るよ
君が望むなら
君は夢にある小川を望む
切ないほど優しく流れる子守唄のように
たゆたう小川
君は永遠の花火を望む
黒い貴婦人の胸に輝く ....
先生
唇が、
ふるえてしまいます。
電線に
飛行機雲が斜線して
雨上りが地上をうっすらとはいでいきます
あの日
陽炎で生まれました
わたし
浮遊する
夢みるからだで透けていき
....
昨日の高い 高い空から
ハッカの香りを感じた のです。
それは 甘くなく
気道から凍るような
冷たさだけ残して
昼には そっと
消えてしまったけれど
これから何度と無くやって ....
私はとても小さいので
海を見れば
海でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
空を見れば
空でいっぱいになってしまう
私はとても小さいので
風を匂えば
風で ....
教えてください
正しい愛の捨て方を
燃えないごみの日に
燃え上がったら困ります
生ごみといっしょなら
傷んでくれても困ります
大型ごみでは あるんですけど
影もかたちもないで ....
ただ手を暖めるためだけに
両手を 握られて
この人が救急隊員でなかったら
ありえない事に
じっと まかせた
仕事と言ってしまえば
それまでで
人としての思いやりが仕事
でも
そこ ....
声を聴かせて
おのずから妙なる旋律を宿すその声を
流れがうまれる
その声が意識に触れた場所から
涼やかにゆるやかに
深くたゆたう流れがうまれる
私はその流れに
身をゆだね
漂う
....
冷たい風と一緒に
クマが走ってきた
大きな目をまん丸にして
涙がポロポロ
首からさげた手ぬぐいで
目を拭きながら走ってくる
冷たい風が目にしみるんだね
冬眠するの 間に合わな ....
降り始めた雪に濡れながら
翔る若葉よ
じゃれて 絡まり
互いに触れた体の温もりを
互いの手の平に感じただろう
彼等は 彼等は
何処へ行ったのだろう
....
耳をすませば
月と星の ささめき
うしなわれた言葉の
ゆりかごを ゆすって
噴水が歌っている
なだらかな夜の背骨の上を
滑るようにして僕は歩く
温度を持たない
曲がり角を曲がり
名前を寄せない
ガードをくぐる
透明感を隠した街に焦がれる
僕を覆う他人の溜息
....
遠くにいる人を想っている
列車は夜の手のひらをすべるように過ぎてゆく
舞い落ちる雪はその速度に蹴散らされて
散らされた後たいへん静かになり
静かに舞い落ちて
舞い落ちて
落ちて
落ち ....
質に入れたはずの女房が
ある日ひょっこり帰ってきた
質流れでもしたのだろうか
おかえりというと
ただいまもいわず
お茶だけ
のひとことで
台所に立ちお湯をわかしはじめる
そのうしろすが ....
朝になればよかった
朝に向かえばよかった
夕暮れは言葉のように少しずつ薄れて
地図はただ一色の紙切れになっていく
なぞっていたはずの大通りは
いつの間にか細い線になった
アクセルを踏み ....
私はあんなに憎い人を知らない
穏やかに過ごしていた日々を
圧倒的な力で根こそぎ運びさり
最もうとんだ葛藤と労苦の
深くにごった河へ流し込んでしまった
こんなところで生きてゆけない
....
満水の夜に
感覚をとぎすませながら
無数の魚が泳いでいる
距離と、位置と、
上昇する体温と、
そういうものを
止めてしまわないように
蛇口に口をつけて
あふれ出すカルキを吸うと ....
{引用= 空をイチョウが渡っていった
最初は一枚
次には乱舞
真上を通った瞬間に
くるくるイチョウの形が見えた
落ちてきながら
落ちてはこずに
....
芽、夏の始まる頃
なだらかに繁茂し
雨戸のような
古い匂いのする部屋
少年は水棲生物の絵を描き
鉛筆の芯はそのために
おられ続けている
逝くもののために祈り
生まれるもののために祈る
....
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