揺れる陽炎に 渇水し干からびたミミズの死体は
祈るように折れて アスファルトの道なりに続いている
あと数メートル先に 花咲き誇る 土の庭があるというのに
透き通る炎の中で 養分さえ焼き尽くさ ....
このままどこかに行ってしまおうか
帰りの車中でそんなことを言っていた二人は
どこにも行けないことは知っていたけれど
その言葉だけで十分満足だった
今、僕らは三人になって車も一回 ....
最初から
おじいさんや
おばあさんが
いたわけではないのです
ただ風ばかりが吹く
何もない夕暮れのようなところから
むかし、むかし
と物語はいつも始まるのでした
やがてお話が終わる ....
読みかけの詩集を逆さまにすると
文字の列たちは
不ぞろいのビルディングになりました
そして
下のほうにあった余白は
広い空に
しばらくその様子に見とれていましたが
何かが足りない気が ....
あなたが
そらに
うたったうたは
かぜのなかに
あめのなかに
ひかりのなかに
ふくまれて
わたしのうえに
ふりました
どこにいたって
だれといた ....
琵琶の鳴る 能楽堂の床板に
今宵 満月の光り溢れ
ばちに当たる 光り雫 飛び散り
聞き入る人々に 幻想を
降りかけては 歌い
掬っては 奏でる・・・・
齢 19のわたしの帯を
力 ....
短い話の夢でした
ひらがなばかりの
セリフであって
半袖ばかりの
人と逢って
ところどころは
知る場所なのに
どこか遠くへ
運ばれて
目覚めたところの
この家の ....
時計が遅れたり
進んだりするのを気にする人は
何よりも時間の大切さを
知っている人です
けれど
時計には時計のペースがあることを
忘れないでほしい
など
ホームの水飲み場で
あな ....
ひび割れた
石の階段で話そう
どうせなら
星も呼ぼう
僕らも宙に浮いてる
お昼ごはんを
考えるより
大事なことがあるんなら
きっともう
眠ったりしない
....
なつのしょうめんで
あのこはワルツをおどってる
いちにさん
にいにさん
さんにさん
ほそいうでをいっぱいにひろげて
あのこはかぜをおこしてる
いちに ....
退屈をにぎりしめて
おもてへ出た
そぞろ歩きのアーケード
レモンの駅のホーム
まわるバスターミナル
あと3日で実が落ちるびわの木
ドアの前についた時
にぎりしめていた退屈は
ど ....
バナナが一本
海を底の方へ
ゆらゆら
落ちていきます
見たこともないその物に
身を翻し逃げていく
魚たち
大きなクジラが
大きな口を開けて
ザブンと飲み込む
夜、台所に行くと
....
あの空の話
もう遠くなった映像の中では
坂道の向こうの太陽と
薄くなるグレーの空とが
混在していて
蝉時雨
引いては寄せて
寂しさを反芻している
知らない知らな ....
夏の朝は暑い
水を撒く匂いと音が好きだから
枯れそうな花にもじゃんじゃんかけてしまう
息子はDVDを見たがってる
しょうがないのでセット
明日もあさってもずっと夏休み
永遠に続 ....
そらが
投げかける光を
見なかった
膨らんだ
ほおぼねのあたり
あかく火照る
夏の痣がひりひりと
ひりひりと
うずいて
コンロのうえ
やかんから溢れる
湯気が
おも ....
愛であろうと
なかろうと
その光りのまばゆさに
私は未来を見る
私は未来に無知である
あるいは愛にも
しかしその光りが
私の深く溝まで
照らし出す時
....
卵をひとつ落として
夕焼けは夕焼けへと帰っていきます
さよならを言うのが嫌で
いつまでもふざけていたのは
言葉を越えられるものは
言葉ではないと
ある日ふと知ってしまったから
ちびた ....
朝靄に煙る海岸線伝い歩けば白いくじらのあくび
砂浜に誰かの書いた「速達」の文字に急かされ振り向けば君
波音に耳を傾け君の背に地図を広げて「夏」始動する
陽だまりに投げるビー玉 あの海 ....
三両電車のガッタン
に連れられて
これからは僕は
夜の国へ
翼があるのか
ないのか探しもせずに
だけど既に
僕のカラダはちょっぴり
浮いている
向かいの窓に
....
湖底の朽木となって
魚のはねる音を
聞いていたい
乳白の空へ電車は走る
「一緒にどうだい?」
そう言われても
なんとなく僕は起きただけ
まだまだ地上で夢見たい
「それならお先に」
と電車は消える
窓の ....
くちびるを閉じると
世界とわたしは
分かれます
くちびるを開くと
世界とわたしは
またつながります
分かれたり、つながったり
くりかえし、くりかえして
わたしはまた少し
遠くへと ....
春が
わたしの中に入ると
増えます
やがて溢れ出して
玄関では靴が
遊びたそうにしています
花火は落ちて
どこへいくんだろ
涙は涸れて
どこへいくんだろ
夢の続きは
どこへいくんだろ
想いは鎮まり
どこへいくんだろ
過ぎ去った時は
どこへいくんだろ
....
零れ夜の
ざわめき
ほっと
息をする
倦怠たちの
集い
さよなら街よ
さよなら時よ
僕はもう
眠ります
ただ
眠ります
夏の陰に
あのビルは
誰の羽なのでしょうか
あんなに高くて
空に届かない
見上げるわたしたちは
いつまでも
一枚の写真でした
なんてゆるゆると
今が歌う
カタチを持たない
雲に向かって
メロディーを忘れた
僕に向かって
そうさゆるゆると
今は歌う
分かりやすい
寂しさに向けて
....
光りに触ってみたいな
カラダ中がココロ中が
透けるくらい照らされる
光りに触ってみたいな
音になってみたいな
ナミダが零れるくらい
胸の弦を震わせる
音に ....
軒下で鳴ってる
縁側ではいつも同じ場所で躓いてしまう
窓は池
今日も小さな沈黙を保ち続ける
外の通りを
笑わない男の人が歩いていく
僕らの小学校
黒板の右、日付の下では
誰かが ....
寄せては返す
波の中で
僕の足は柔らかく
砂に沈む
ひっそりと
息をする貝殻たちの
その世界に少しでもと
寄り添いながら
報われなかったことよりも
望める ....
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