そこは陥没した土地の底だった
ふしぎにあおぞらに囲まれ
馴れ馴れとSiraketa鳥のとぶ低地
新しいだけがとりえのその土地に
湧き出る雲は白くて尽きないのでおそろしい
すうすうすうすうゆく ....
地平ちかくにいっぽんの痩せ木があった
雲は
絶叫
しない。
ハリエニシダ
遠しといえど難からず
近頃の人間は半袖というものを着ない
だから腕に掻き傷のひとつもないのだと
おじさんは言う
茂みを抜けた岬の荒れ地は
見通しはいいけれど
とお ....
青空の下に
大きな穴が並んでいる
列車が来て停まる
線路の端に
白い雲が湧いていておそろしい
時間になると汽笛がひびき
車両に載せられた人と財布を
地番外にできた
あたらしい穴まで ....
海にむかって荒れた泥土の地だ
青々と
七月の草が茂りきっても
空には爽快な音を残し
人が飛んでゆく
診療所の一軒も残さぬ海岸は
茫々と
ゴミだ何だが顔を覗かせ
日がな 風にばたば ....
―あるいは隠棲と知識
その先は海へといたる低地帯
広大なだけの空が暮れはじめると
きょうも
{ルビ背=せい}の高い草は
静かで乾いた音をたてる
立ってること ....
柔らかく 昏い光が
ひっそりと漏れだしたように
わずかに傾斜した平坦な地の
襞に、影
鉦がきこえて
列がゆく野は
さびしい海にむかって開けていった
或るひとつの手の
美しい ....
陰鬱に晴れた岩場に
大きなバッタがしんでいる
白雲飄々と去来し 大地は黙し
どうにも
雲間の
空が あおイイ
「ふん、
空気掻き分けるで からだぁ 冷えるヴァ」
ガッシリした ....
大陸東岸の島嶼では、なんとも夥しい数の
言葉が浜辺に堆積し続ける。行き先を持たぬ
者らは、最後は海辺に横たわるしかないのだ。
一日の始まりから終わりまで、波は鳥という
鳥のかたちを投げかける ....
「民は国なり、国は民なり」。人のために国家はある。民の利益は「個」のレベルでは互いに衝突する場面があり、そこではじめて最終調整力(強制力付き)としての「公」が要請される。つまり、まず「個」があって、 ....
1.しりとり
とり
とりのかげ
翳りの棘 (いりーだ
とかげの森
〈森
〈森の陰の森
2.とかげと森
きみは
森で石に抱きついている
とかげの心 ....
とりがいる
「Pain
「ぴア
弧を描き
弧をねがう
ひわひよひわ 啼き声を発しながら
希薄な大気には失語の気配
〈だがひとは、 太古 このとりの足跡を見て 文字を学んだのだ ....
開く度に人の貌だった
思いがけぬ このよの{ルビ摂理=ことわり}
華やかな秘密
どこの{ルビ世界=黄泉}への 扉なのか
人界の
花弁の上に閉開する ちょうつがいの{ルビ生物=いきもの}
羽 ....
詩を書くとは
ろくに泳げぬ者が、寂しい山中の湖にひとり
溺れているようなものではないか
鳥はそらをとぶ魚
地は往かず
なのになぜ
鳥のみが
寂しい風土を暗示する
海上に 白き海嘯を湧かすことなく
羽ばたき軋む骨格のゆえか
それとも
その骨奥にほそぼそと伝えられきた捕食と ....
赤と書かずに赤。
青と書かずに青。
海と書かずに海。
太陽と書かずに太陽を!
─あるいはナンタラ落書もどき
どうも前々から空がおかしい
ミシミシ無気味な音がきこえてきたり
何か欠片のようなものが上から落ちてきたりする
どうしたことだろう
....
{引用= ―オフィス街のすきまから
唸り声と酸の匂い}
蒼く林立するビルの足許には
反転する魚群のうすくろい影と 幽かなハミング
水辺に群れる野 ....
土に混ざる
かスカの ガらすや 枯れたものの匂い
一望 赤い斜面の
縞
に細く震える
繊毛のような{ルビ海霧=ガス}
の
かかる
奇妙な海岸
息を出し入れしているものは みな ....
シャボン 影ない
行進
街に響くくつおと
楽隊
シャボン
かぜがふき
影
風にまぎれ
見失われるひくいこえ
支柱なき旗ひるがえり
あたまのなかにサいレンきこえやしないまちまひ ....
遼原に
かぜが吹いても
僕は魅惑する午睡である
泥炭の午後
巨大な軋れおとをたてて 目蓋があく
午睡である
鳥
は地平から近づく囀りの
沸き返りの
天秤の
朱のいのちは青銅 ....
─佐々木好に捧げる
象が飛んでゆく
キリンが飛んでゆく
バオバブの木や やわらかな色合いのにんじんもとんで
ねえ、
どれもこれも飛んでゆくものたちはまる ....
僕が転んだ
白い雲がながれていた
僕が転んだ
麦の穂を風が掃いた
僕が転んだ
膝に石を刺した
しんとした痛みを
ただこらえた
何も居ない
笑いごえもない
ひざを押さえた道端で ....
おおきな赤ん坊の寝床だ
そして赤ん坊は
不可解にして かつ世に堂々のあるじぶりだった
赤ん坊が這い出していったあと
どうしてこのようなしわくちゃのものが遺ってしまったかについては
世界は調査 ....
我が浮力は何ぞ
この鳥ならば考えたに違いない
何を見ても灰色
否
我じたいが灰色に充たされた浮体であるとき
眼から脳までの
ながいながい距離
山岳を漸くにして越えると
途方もな ....
無意なる旋回
{引用= ―鳥たちは旋回し
そらに 籠のようなかたちを編みなし}
鳥はそらをとぶ魚
地は往かず
なのになぜ
鳥の ....
{引用= ―飛ぶ そらを
びゅうびゅうと風の音を聴く}
ルルる
おお
手をひろげ
風を身いっぱいにうける、ルル
はてぞない世 ....
淋しい海岸には古びた洋館が建っていて
僕たちはそこでひと夏を過ごした
きみは髪の長い とてもきれいな女の子だったね
/だけど思い出せるのは 逆光に浮かぶはかなげなシルエットと
今ではもう時代 ....
札幌の市街地は
徐々に西から山影に入ってゆく
ほら
人魚たちの棲息する台地のようじゃないか
あの
東市街地は
あかるい
薔薇色に浮かびゆき
ここは
穏やかな漁 ....
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