世界最短の詩が何であるか、皆さんはご存知だろうか。

恐らく誰もご存知あるまい、と筆者は思料する。したがって、この文の最後にもういちど、皆さんに同じ質問を投げかけるので、以下の記述を読んだ上で、あ ....
曇り空だから 
そんなに 映えない 姿だったけれど 

透過100パーセントで 描いた 
背景のような 
美しい虹が 掛かっていた 

出勤時 車窓から眺めた 
一瞬の 煌 ....
二十歳が近づくにつれて
首を絞められるようになった
雨で濡れた道路を俯いて歩く
必死で生きていく
虚しさを感じる

この街のスーパーで働いている君は
僕と同じ街に住んでいるのに
なぜ会 ....
わたしは覚えている
あなたはわたしの詩をよんで
あなたはわたしの言葉をよんで
これがすきだと
はにかむように笑ってくれた

わたしは覚えている
あなたは太陽の下で
あなたは吹雪のなかで ....
レコードジャケットの中で
ビルエヴァンスの黒い手が
握っている、白いボールの
{ルビ刳=く}り抜かれた内側に
真空のそらが、広がっている

もし、僕が大事なあなたに向けて
ボールを投げる ....
私に背中を見せたまま
茫然と立ち尽くしている人を
振り向かせたいから
静寂の悲しみを震わせるために
遠くまで聞こえるように
私は心を刻むのです


私の影に隠れてしまって
ひざを抱え ....
父がハーモニカを吹く
孫らに
子らに
万感の思いを込めて
「花の街」を吹く

私は父が奏でるハーモニカが好きだ
80歳になっても奥深い響きは変わらない
何十年経っても変わらない響き ....
放射冷却の夜があけて
風もなく
日中の気温は上がる

この穏やかな春霞
雪どけの水蒸気
あふれる陽光に
紛れ込んだ
毒の微粒子

笑顔に溶かした
敵意のように
言葉に塗られた殺 ....
夜明け
窓を開けると
空に明星が瞬いている

テーブルにこぼした煙草の灰を
手で掬いとっているうちに
夜が終わっていく

春先の
暖かい雨は降り止み
朝日が微かにひかる
神経が泡 ....
あむりたを
すすめられたのを
ことわって
でもどうしても行きたかった
金をつめば
舟がだせる


すべりだした舟のうえで
ゆめごこちの
ふなべりにほおづえする
はるか長い ....
何度話しても苦手意識を感じる相手へのお愛想
豆腐とわかめが入ったお味噌汁の味
左右対称非対称すべて
ボタンの掛け違いのような勘違いもすべて

昨日と今日の差がないものだか ....
<クレームと改善>

・おはようございます(今は夜)

・こんばんは(今は朝)

・こんにちは(人類は汎用性の高い単語を開発した)


<メモ>

『真夜中と早朝の中間地点に ....
銀行の
待合室の
灰色の片隅で
女の子が泣いている

傍に腰かけた母親は
無言で書類を書いている
時折娘の頭を撫でたりしながら
けれども
娘はちっとも泣きやまない

待合室の私達 ....
つながれた指の
無言の理由を探りあって

にじむ光の
遠くを見つめるふりをして

みずからの域を出ない
ふたつの熱帯魚



あれは雨の日だった

つたない呼 ....
レールは、強い日差しに過熱している

煤けた少年が、レールの上を歩いて
線路脇には、赤いカンナが咲いている
熱いレールに耳を当てると、ことんことんと
走り去った列車の鼓動が遠ざかる

列 ....
毒づきたくて見あげたはずの
夕焼けが綺麗で
たとえわたしがポエマーでも
言うことなんか何もないくらい
それはあらかじめ完成された一編の詩となって
目の前に広げられていたから
もう死にたくっ ....
ショーウィンドウの前から
ふわりと剥がれた影は
軽やかにステップを踏んで
もうひとつの影にくっついた

大きな紙袋をぶら下げて
せかせかと動き回る影は
スマホを耳に押し当てたまま
 ....
つまづく者を 見守る者は
つまづくことで何かを 掴んで来た者たちだ
つまづかないよう 見守る者は
つまづく度に何かを 失って来た者たちだ

石造りの壁に つながれたなら
不貞腐れてる間に  ....
名前が変わる前のようにはもう生きられないだろうと彼女は小部屋で言った
「自分の中でこっそりと作ったルールは500円までだった
大体高校生が多かったからおやつみたいなものだと思う」

盗人は大人 ....
子猫を拾った公園
子猫といっしょに
風を切って揺られた

おなかと片手にやわらかさ
ねむくなった子猫
あたしも目を閉じる

上がって下がって
上がりきって下がる瞬間に
子猫が爪 ....
大きく膨らんだお腹に手を当てると

ぐるんと窮屈そうに動いてくれた

明日生まれるよ

君は明日生まれるよ


後ろからそっと抱きしめると

安心そうに身を委ねてくれた

明 ....
ここにはない
何も踊らない
ただ搾り出された絵具のように
眠たげな静物だけ

わたしの中か
わたしの外か

楽しげな人の姿が
ゆっくりと薄れ消えて行く
古いスナップ写真が
毎 ....
会いたい人がいるはずなのに
会わなくても生きていけて
なんとなく煩わしさを感じてしまって

地方から東京に出てきて
祖母とも叔父とも疎遠になっている
わたしは健 ....
藍色など
群青色などと言って
壊れないで下さい

星が点滅する
或は惑星、
と言うか

全ては夜の表に光っている

私は私の肌色を光らせて
草原の上
月の下、
或は上

 ....
はるののでツクシをつんでいるとき
かんぼくのあいだを とおりすぎるかげ
そいつはイタチだ

かんぼくのなかをのぞくと
なくしたスーパーボールや
ミニカーがみつかるにちがいない
イタチのこ ....
目が覚めて
隣に寝ていたはずの
ひとがいないと
私はひとりではないと知る

しなければならないことがあって
私が私に着陸したことに
感謝する
魂がからだに

少し今朝は
自分を気 ....
開け放った窓からカーテンがあふれだしたからオルガンを弾いてともだちと身体を絡ませておどる/まだ子供なのになつかしくなるような錯覚/点滴があと少しでおわるから看護師さんを呼んで/丸い体の看護師さ .... 妻に物をプレゼントしたことがない
物より思い出ばかりプレゼントしたからだ

それでも妻は物がほしかったようで
時々古ぼけた腕時計を指差すこともあった

あの世でね
と私は言った

私 ....
私の顔は古い写真のようだ
いや
私の顔は古い

このアパートに来たときにトイレの棚に置いた手鏡は
ほこりまみれで
何の役目があったのやら

ほこりまみれであること以外
何も特徴の ....
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