炬燵の上にはみかんの入ったざるが置いて在る
あたりまえのように炬燵に入り蜜柑の皮を剥く
子供の頃は至極あたりまえに蜜柑を食べたもの
蜜柑やりんごはいつも一箱ごとに八百屋さんが
届けてくれて ....
りんごを食べた
わけありりんごを食べた
わけあり家族で
りんごを食べた
みんな無言で
それぞれの方向をみて
ペットのハムスターだけが
かさこそ音をたてて食べた
北国から ....
同じ道を歩むはずだったのに
繋がれた手は離れていって
背中さえ見えない今はもう
一番星はそこにあったはずなのに
微笑んでいた月は欠けていて
幾千の星が輝く今はもう
溢れるほどに注が ....
交響曲第一番「亀戸」を作曲しようと思ったが
口笛も吹けないので断念し
リーマン予想を証明しようとしたが
9の段が苦手だし
素数はブルドッグしか知らないので諦めた
4回捻りに挑戦しようとも考え ....
窓をあけるように
テレビをつける
人に会うように
ネットをつなげる
手紙をかくように
独りをつづる
扉をあけるように
脳ミソひらく
いくら開いても
広 ....
生まれてくるときはひとり
死ぬときもひとり
だけど
笑うのも
泣くのも
怒るのも
ひとりではできないのが不思議
そして
笑ったり
泣いたり
怒ったりしないと
....
芒
あちこちゆらゆらゆれるしろがね
原っぱで ぽつんとひとりそよぐ
手の中のまるみをおびた小石が
ほんのりあたたかい
地面の土は黒く底はなく
白い息 宙へ解ける明滅
山脈の稜線の縁は ....
あの季節
自分のからだから、言葉がはがれ落ちてくのを
見てた
のりに浸した活字みたいに薄い
僕のなけなしのロマンチックを
きみの目がやさしくピンセットで
やわらかな原稿用紙に押さえつけ ....
私の中に言葉がやってくると
私はつい沈黙してしまいます
・・・私、詩人なんです
馬鹿馬鹿しい事に
私だってジャニーズが好きです
特に、亀梨君が好きです
真面 ....
西側の二脚の椅子に
座っていた
子らは
ふくふくと育ち
ようようと三月へと出かけていった
つながったひとつのベンチに
結果 残されたようになった
夫婦は
横に座って
同じ景色を眺 ....
瞳
二月の白い雨の中
何もかもが凍りついた冬日
畦の匂いさへ凍りついたまま
も吉は冷たい闇の中で
いつもの道を見失ってしまった
今日はどうしても
まっすぐ歩けない
も吉を ....
{引用=
「カスタネットを叩く小さな手が、乾いた音を空間に弾かせて赤と青のあわいにある星を見つけようとする。白眼は青みがかっていて世界中の秘密を引き連れてまだ秘密を作ろうとしてい ....
かなしい歌をつれて、
春風がきみの頬をさわるとき
ひとびとのささやきは町を彩り
光が、もの静かな雨のように靴に落ちる
白い花の影がひとつ、心のなかに揺れている
....
出来るでしょうか
目に見えない心を磨くことなど
出来るでしょうか
形のないものを磨くことが
かつてある食品会社が
「水を磨く」と言いました
大河の水は汚れています
池の水も汚れて ....
彼は私の事が好きだと思ふ
夕方彼の後ろに確かに居た
タレソカレ
彼の影は彼だ
だのに
影の彼は私に違ひなゐ
沈黙の微粒子が
ソーダ水のようにはじける
僕の部屋の夕暮れ
音楽も聴かず
テレビも見ず
ソファに座っていた
LEDの電灯は
人の気配に感応して
点灯するのだが
やがて
ぼんやりと消 ....
ひとの心に降るという
ましろな雪に
触れたくて
ずっと
ひとの命に寄りそって
ひとの命を
慕ってきたけれど
それは
もしかしたら
ひとの命を奪うことに
なっていたのではあるまい ....
野辺に咲く花は彩りささやかな風に揺れていた
太陽の光を浴びたその場所は緑の芝生が敷かれ
青い空と白い雲が浮かび眩い光景に満ち溢れる
花園と小鳥と蝶と蜜蜂が飛びかい猫や犬と戯れ
時には小 ....
0が1を
たべつくして
朝になっても
明るくない
うすく凍りついた水たまりを割ると
世界の底で
あなたがスープみたいに眠っている
私の死を
誰かが殺してしまったので
私は生きることしかできない
私の生も
死と一緒に死んでしまったので
私は生きることもできない
返しておくれ
返しておくれ
私の大切な死を
....
都合の悪いことや
不快なことは
予め伏字にするという
配慮が
いつからかこの国では
行きとどいているので
よほど気をつけていなければ
事実は見えない
まして
事実を都合よく見誤ろうと ....
【人間】
初めてのアルバイトは中学1年の冬休みだった。
親戚の雑貨店でのレジ打ちの仕事だった。
年末のある日、事件は起きた。
その日の昼食後、レジに戻ろうとしたら、おばあさんが
お茶碗を買い ....
いのちの素描
躍動の結晶を背景に
白い天啓の不規則性
欺くように舞って
――つめたい耳たぶに腰をかける
そとには沈黙が降り積み
うちには言の葉降り積む
....
ボールが転がる音がして
振り向いたら
それは冬が去っていく音なんでした
冬は寒いものを転がして
古くなったものを巻き取って
辺りをふかふかの風景にしていきます
それが春なんでした
....
‘日本の凶悪犯の95%以上が
犯行直前の24時間以内に口にした食べ物がある’
これは統計上ほぼ真である
主婦A : そんな恐ろしい食べ物は禁止すべきでしょ。
会社員A : ほほう ....
最初の人間がこの列島に入ったように
この川に入った亀は何匹だったろう
ミドリガメと呼ばれていた子亀のころ
生まれ故郷から 人間に連れ出され
あげくに捨てられたのか
それとも
遙かな故 ....
電車はまもなく暴動地区に入る
ここからでも赤色灯が多く点滅しているのがわかる
忘れていた携帯端末が最後の爆弾になるんだ
誰かにそう話した後
本当に旅客機が空中爆発した時には驚いた
ケーブ ....
光のどかな
朝の軒下に
あいさつ日和が訪ねくる
つがいの雀のたわむれも
いたずら烏のお散歩も
汽笛も煙も
風花も氷柱も
みな
やわらかな一見さん
ごきげんよう
....
米メリーランド州フォートミードの米国家安全保障局(NSA)が、インターネット未接続のコンピューターでも遠隔監視できる秘密無線技術を開発し、実際に情報収集していた事が報じられた。
見てはいけな ....
再就職先の紹介をした知人に
立派な菓子折りをもらった
上用饅頭が詰まっているものと
内心ほくそ笑んだが
上品な包装を開けてみると
見事な上げ底であった
しかし
饅頭を取り除けた底 ....
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