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真昼
一人の男がテトラポットに座り
何か岩石のような物を
サンドペーパーでごしごし研いでいた
これは私のポエジーです
問いもしないのに男は言う
....
死期を悟ったと言って
父は仕事を辞めた
これからは好きなことだけして暮らすぞと言って
山奥の民家を買い
池と鶏舎つきだぞと笑った
週末に会いに行くと
家の改修を手伝わされた
鳥の世話も鍬 ....
探査星という名前の
もう戻ってこない人工矮星を
私たちは見送っている
稜線に海面が沈み
草原がブルーに染まっていく
追いかけるように
次々と浮かび上がる船団は
私たちの乗れなかった最後の ....
{ルビ天空=そら}に浮かぶ 三日月のゴンドラ
{ルビ暗夜=あんや}の海を 月夜のウサギが{ルビ操舵=そうだ}する
ボロボロになったアナタを迎えにいくよ
夜と夜の隙間から覗き込む金の帯 月色涙 ....
あとかたもなく崩れゆく遠い果実を見つめている
Hのしろい指がりんごの皮をむく
どこまでも切れることなくつづく紅い航跡はこの星を
ひと回りしてわたしのからだのやわらかい節々にから
みつく
....
あるひ、
人生がながれだして いや
これまでもずっと
ながれている
ことをおもう
おじいさんや女子高生が
目の前をひだりから右にあるいている
雲は勢いにのり ぐいぐいと
きえていっ ....
雛菓子をつまむ指先の
その感触は
母さまの温もり
ひとつまみ
もうひとつまみと
雛の飾りから拝借する君の
{ルビ当=あ}て{ルビ所=ど}ない{ルビ戯=たわむ}れは
長き ....
昔に植えた
自慢の椰子を倒してくれという
七メートルほどあるトックリヤシモドキが四本
これから台風がくれば
隣の駐車場の人様の車の上にいつ倒れるかも知れないのが心配で
風の日はよく眠れないの ....
<愛>
ふれることで確かめる
かたちをかたちにしない
きのうでも けさでも 一秒前でもなく
いまの呼吸 いまの温度
<読>
記憶が織り込まれた生地を
虫眼鏡でみたり
埃 ....
陶芸家の身(うつわ)はどうだい
いく筋も、寄せてはかえす指のとおりをつくってやった、朽ちるろくろのうえで、あたたかな心拍はいちどだけ濡れる、断層つづきの、ぬめる泥の顔で、柄でもないおかえり、兵馬 ....
フリルの青いふちどり 透明な金魚鉢
陽だまりに腰掛ける 丸く揺れる水
雲の尾びれが覗き込み ひとくち
指に 甘くて白い 隙間が 落ち
金網を越えて 草の上 風枕にのぼせた
黒い小石を ....
気になる
と いうことは
まだ
心 が
残っている と
いうことなのだろうか
深夜まで
足跡を読む
理解しきれない
文字たち
脳裏に残る
モノクロの横顔
....
唇は ほどよく濡れ
指先は ぬくもりを感じ
果ては 穏やかな吐息
木蓮は一心不乱に花を咲かせ
嘆くように朽ちていく
茶色い花弁を散らかしながら
乙女のように衰える
しかし枝には
細かな緑を隠していて
生きること
静粛な佇まいの内に主張している
....
そこを曲がると、雨が降る
ずぶ濡れのふたりが駆けてゆく
それは遠い昔のこと
耳を澄ますと何かが聞こえる
遠くで何かが聞こえる
近くで何かが聞こえる
透明な糸で繋がってる
たくさん繋がってる
たくさん{ルビ解=ほつ}れてる
辿れば辿るほど 道は険しくなるばか ....
雨上がりの夕暮れ前
大きな橋が{ルビ聳=そび}えている
それは 僅かな寿命ながら
私達の心にいつまでも残る
あの橋の彼方には
まだ見ぬ明日が繋がってるのだろう
まだ ....
見た目は女の子だけど、食べたらきっとおいしいからね、と知り合いから烏賊をいただいた。半ば強制的に渡された発泡スチロールの中に入っていたのは、本当に少女の烏賊だった。見た目は女の子だけど ....
くだらないこと思い出しながら
透明な月を見つめていた
サランラップにつつんで息の根をとめた
かなしみのはりついた君の顔
ぼくは何になれるんだろう
....
うすい羽のはえた夜行バスにのって
月あかりにかがやくいくつもの雲をこえて
あいした理由も
あいされた理由も
すべてあなただったから
いつもの街角、いつものバス停
やわらかな猫の手に夜の ....
写真とは
干乾びた
製造工場の正門の
錆びたポストに居つく手紙の重さで
天を劈く煙突の
かたちを得たけむりが笑っているようなもの
めくれば
白い鍵穴もかすむ季節に
「どこにもいけない」 ....
ゾウさんの鼻先あたり
あるべきものが無いというか
腰の高さでぐるっとフェンスに囲われていた
ご丁寧にも幼い好奇心を遮るシートまでかぶせてある
わざわざペットを囲いのなかへ入れて
おし ....
祭囃子を抜けると
そこに空白があった
二抱えはありそうな大きさで
私の祭りは勢いよく吸い込まれていった
振り返ると
ソースの焦げる匂いと
屋台の灯りがあった
外灯に虫が集まり
....
記憶の破片が降る
僕の肩に、額に
瞳に
鋭い角を立て
時の欠片が容赦なく降る
夕陽を浴び
舞う
髪に散る雪のごとく
溶け
傷を残さず
僕を傷める
過去の破片が降りかかる
眼の上 ....
レモン色のチューリップが
それは雨天のせせらぎであって
顔は飛沫(しぶき)をはじいていたのです
あなたは最初の花ですか
植物図鑑のはじめですか
あなたは「赤」のはずなのに
あなたの夢み ....
鳴りものに そそがれる蜜
削がれる 鉢植えの暗闇
黒い雪崩に つかまる鳥の爪
横切る 銀色ワイヤー
透ける板 はずさないで
みたくないなら みないで
あんたはカスカス
うちはスカスカ
ふたりそろおて、ほな、さいなら
渇く忘れ去られた庭に光があった
錆びついた鉄柵はきしみを告げる
ほしいままにはびこる夏草が
風を連れて通り過ぎてゆく
忘れ去られた庭の
土は乾いて陽盛りだけが
影を作り 思い出を形 ....
100822
本物件は建坪率を超過しており
同規模での建てかえはできません
なんじゃこらと電車乗り換え
お客様は帰られた
中古の一戸建てを売 ....
思い出の扉は
天瓜粉
慈愛に満ちた、そんな日々
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