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―あのね〜、お母さん!
今日ね、お弁当の時間にね、
ちーちゃんが一人で笑い出したの。
だから「どうして笑っているの?」って訊いたら
「分からない」って。
それでもちーち ....
喧嘩した ただ私が勝手に怒っているだけ
あの人は 云えばわかってくれる
されど 女には お願い解ってという想いが溢れる
特に不安定な時 お腹が大きくなってきている
私は怒っている
....
「会社が潰れるかもしれない…」
夫が青白い顔でポツリと言う
「そう。じゃあ、じたばたしても仕方ないわね」
私は、パッションフルーツ入りの
プレミアムヨーグルトを食べながら答える
視線はス ....
壁を見つめて壁に書いた
壁に眼で書いているから
誰も気が付かないだろう
もうこの壁ともお別れだ
明日は別の壁の前に居る
じっと壁を見つめた日々
壁の前に机を置いている ....
月が満ちた午前零時
引力は拮抗する
三角関数が
どうして重要なのかを
知りたくないですか?
月のひかりは
海底までとどかないから
微弱な引力の波動を
感じているしかない
....
わたい、もやしはきらいや。
病室のベッドのうえで
母がぽつりと言う
六十年も付き合ってきて
母の好き嫌いをひとつも知らなかった
そんな息子だ
お父ちゃんがな、腹切ったときに出て ....
コンビニのある風景の中で
あたりまえのように生きている
交差点に立って周りを見渡すと
視界に5軒ものコンビニが存在する
そんな生ぬるい便利さと手軽さに
日々愛撫され続けている生活を
無 ....
髪を切りました、ばっさりと
決別です
春です、今日からわたしは
春の柔らかな外套はいらない
寒風をしっかり遮る重いコートが欲しい
凍てついた大地を確実に踏みしめる足と
流れる雲をよみとる眼差しを
桟橋に繋留するための無骨な舫い綱あるいは
海底ふか ....
線路沿いの黄色が日に日に
仲間を呼んで
背伸びをうんとして
集まって
つげる どうにも麗しい春
まるで園児たちの黄色の帽子のよう
元気だけを呼び覚ます
どうし ....
ゆっくりと
頁をめくる
それは
何かを
惜しむような
誰かを
見送るような
こころもちで
結末を
知ってしまえば
この手の中の
物語が終わってしまうから
桜は咲いて散る
....
地中深く眠る鉱石を
掘り出して
パカッと割ったら
紫色の透明な石が詰まっていた
その美しい紫の石は
小さく小さく刻まれて
首飾りや指輪に加工されて
世界中の女性たちを飾っている
....
雛人形は海を渡らない
「今日は雛祭りよ」
「雛祭りってなあに?」
童話を聞かせるように
雛祭りの話を聞かせる
「ふ〜ん」
それはまるで
おとぎ話よりも遠い世界のお祭りごと
....
削いでほしいとおもう
まとわりつくものはいつもきれいな花びら
ではなく 鱗のような厄介なものだ
きらきらとしていても からだから離れればいいのにとおもう
あのまま 埠頭へとびこめば
綺麗 ....
早瀬のそばの竹やぶに
住んでおりましたので
笹舟を流しては遊んだものです
手を離すと同時に
それは勢いよく
旅立っていきました
赤い橋をくぐるまでは
なんとか目で追うことができましたが
....
蟹は
前を向きながら横へ進むのか
横を向きながら前へ進むのか
蟹のからだの構造上
顔のある方が前だから
蟹は前を向きながら横へ進んでいるのだ
が しかし
蟹も何か目的を持って進んでいる
....
Vの発音 Vの発音 Vの発音 Vの発音
言語聴覚士に何度も発音を矯正される
だけどまだできない
標準的なVの発音
ボールを投げて キャッチして
ボールを投げて キャッチして
作業療法士 ....
掘削船がやって来る
おれの堆積した泥土を掘り返す
脳だけクラゲの揺蕩いで
光の海に温む予定が台無しだ
山の麓に猫女が住んでいるという
噂の真相を求めて捜す者も多いらしい
捜 ....
知らないほどに、人は愚かで
知るほどに、人は悪く
けっきょく救われヘンのやなぁ
生きているということは
自分に穴を開けるということ
生きているということは
穴から塩辛い結晶手放すこと
生きているということは
穴を塞ごうともがくこと
生きているということは
....
異国の少女の瞳のよう 青く澄み
だが雲はお構いなしに夢の中の鰐だ
純白に生れ落ち
気まぐれな冬の微笑みにほだされる
だが夜には冷たくあしらわれ
朝には固く汚れた肢体を通りに ....
新しい言葉を綴ることは
新しい土地を開墾するように
そこへ種を蒔くように描いてゆくこと
自由を描くことは難しい
だれも自由の光をみたことがないから
それでも描こうとする
愛を定義す ....
自分で自分をくすぐっても
くすぐったくないのはなぜだろう?
僕は誰かにくすぐってもらわないと
くすぐったくないのだ
詩を書いて
自分で批評しても
自画自賛しても
くすぐったく ....
北の海
冬のモノトーン
旅に出ます、なんちゃってさ
*平成22年3月 詩集「十二色入り」より
温かいご飯
温かいお風呂
温かい布団
この三つは
心まで温めてくれる
寒い冬の夜
わたしは寝る前に
下布団とシーツの間に敷いた
電気毛布のスイッチを入れておく
しばらくし ....
手渡しされた新しい年は
少し
湿り気を帯びていて
私の砂時計は
サラサラと流れていかない
古い年に取り残されたものたちが
色を失い
塵、となって積もっては
風に吹かれて
冬空に溶 ....
いつの日も
夕日は、約束に似ている
すっかり、
日が落ちるまで
果たせなかった約束をかぞえては
また、
あしたに賭ける
ぽつりと、残された
オレンジの雲は
あしたへとつづく
....
美しい音楽が流れた時、私の過去は蘇った
私の脳裡を揺さぶり私の心をも揺さぶった
蘇る過去を追いかけて遠い遠い記憶を探す
私は現から翻り遠い記憶を辿り追いかける
記憶の世界はとても淡い色 ....
今年も届いた母からの小包
まずは
?AKB48みたいな洋服がほしい?
という娘達のリクエストに応え
母が見つくろってくれた
チェックのワンピースやミニスカート
その下には
ハロ ....
笑顔が足らないから
適当な思想が抱きついて
どうしようかと
喉元まで逆流してきた
雲合いも無慈悲に見えて
自分を是が非でも厭ってしまう
口元を咄嗟に手で覆い
少し あかぎれた ....
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