──ちょうど躓いた小石の先に連なった足が
氷柱を踏んで動かされていくようだった──
映像はいつもコマ割の上で音をあてていく
それは今日の病室でも変わらないまま
カーテンの外 ....
狐のかみそりが赤く咲いていた
藪のある舗装道路だった
ぼくが轢いたのは蛇だった
チュ−ブのようないきものだった
前輪でごつん 後輪でごつん
ぼ ....
結婚しよう
感情なんてどうでもいい
ハイ結婚した
子が生まれた
配偶者が死んだ
土地が手に入った
結婚させよう
子供たちを結婚させよう
本人の意思はどうでもいい
ハイ結婚した
....
境内の裏に入ると
空間を埋め尽くす
しなやかな竹林の足元を縫うように
白い石畳の道を辿る
少女は
ひしめきあう竹の頂を仰ぎ
さやぐ笹の葉の隙間の青をみつめ
木漏れ日を浴びる{ルビ女 ....
夏雲のひろがる街よ燃えあがる道路に赤き百日紅の散る
黙々と入道雲の空にたちのうぜんかずらの橙さえる
ここからは道の跡絶えて砂の海絶望までの足跡長し
....
乗り込んだ8番線ホームは
おかえりと張り紙がしてあった
朝顔の色を真似た夕暮れ
僕は余白に
ただいまと付け足す
忘れ物がいつまでも見つからない
開け忘れたカーテンのそば
自分色で横た ....
なに
書いてるのかな
風がみどりの木をゆらしているのは
巨人がおどっているから
と
彼女が申すので
書いてみた
僕が思うに、目に見えないってのは
風もそうだけど
見え ....
短い話の夢でした
ひらがなばかりの
セリフであって
半袖ばかりの
人と逢って
ところどころは
知る場所なのに
どこか遠くへ
運ばれて
目覚めたところの
この家の ....
心細さにうつぶせて
哀しく疎ましく
しょぼんと僕の影が
そこいらで
くたりと寝そべっている
今宵
僕に声は無く
ただひたすらに
ただ
ひたすらを
求めて黙り
....
雨降りの校庭には
死んだ生徒の霊が出るから
連れて行かれないように
傘は深く差して
声を出してはいけない
理科室の前の廊下は
いつにも増して薄暗く
硝子棚の奥で
骨になった ....
人生に失敗したので爆弾を作った
場所はカフェがいいな
とりあえず街に出かけた
中世の面影を残す門をくぐったとき、
刻まれた紋章が俺の勲章に見えた
足の裏に石畳がズンズン響く
目の前 ....
「水、持ってこいよ。」
シンちゃんが言ったから
公園の入り口にある水飲み場まで
バケツを片手にダッシュ
焼けた砂まみれの腕に
午後の陽射しは痛い
水飲み場につくと
犬を連れたおじ ....
どうして俺を選ばなかった
どうして俺じゃだめだった
今更聞いても遅いな
これ以上みじめになるのはよそうぜ
お前はお前の道を行き
俺は取り残される
表向き緩やかで
....
緑の海がたなびいて
少しのカーブで横切るレールを
3両編成の電車がすり抜けていく
乗り合わせた肩は語らないまま
ひとつひとつ 暮れていく
天気予報は雨
降水確率は不明
飾らない傘の行 ....
絶対に望まないのが絶望なら
絶対に望むのも絶望だってば
ループしたスカイウォーカー
ループしたスカイウォーカー
端からいらない順番に並べてったらいつの間 ....
ひび割れた
石の階段で話そう
どうせなら
星も呼ぼう
僕らも宙に浮いてる
お昼ごはんを
考えるより
大事なことがあるんなら
きっともう
眠ったりしない
....
なつのしょうめんで
あのこはワルツをおどってる
いちにさん
にいにさん
さんにさん
ほそいうでをいっぱいにひろげて
あのこはかぜをおこしてる
いちに ....
鳥と世界が
左目を語ってやまない
他のものが皆
目を閉じている夜も
砂浜では
さまざまな色をした風が
透明な凧をあげている
砂の羽が
ひらいては散る
雲が波に近づ ....
あの空の話
もう遠くなった映像の中では
坂道の向こうの太陽と
薄くなるグレーの空とが
混在していて
蝉時雨
引いては寄せて
寂しさを反芻している
知らない知らな ....
雨が近づき
誰もいない
贈り物を捨てた
霧に立つ
赤と白の脚
ひとつの弦を聴いた
動かない虫
窓ごしの雨
深緑の声
夜は去り
水は残り ....
風鈴を木にくくり付け
鳴るのを待ちながら
昨日を振りかえる
TVをつっけぱなし
パジャマで
膝をかかえている
今日をみわたす
パンツがすこしくらいみえても
ひらひらのスカートが ....
愛であろうと
なかろうと
その光りのまばゆさに
私は未来を見る
私は未来に無知である
あるいは愛にも
しかしその光りが
私の深く溝まで
照らし出す時
....
まるで貝のようだ
閉ざされた夏に細波が立っている
親しげに闇は寄り添い
「踊ろう!」と腰を抱く
大海なんて夢見るのはおよしよ
ブルーは誰のものにもならないさ
人形のまま一生を送るのか
....
夏は冬の寒さが恋しい
冬は夏の暑さが恋しい
僕もそうだよ
君がいてくれたら
季節なんかどうでもよかったろうね
君がいてくれたら
季節を楽しめたかもしれないね
....
夢は、夜の
街灯の明かり
スポットライトの下で
夢にならない浅い日の
出ていかない言葉を
止まりそうな川に投げ入れて
岸辺の草原の
揺れる夜露の中
反転している街並み
空 ....
こつこつ
とんとんとん
いしゃは
わたしのむねを
たたいて
ちょうしんきを
あてたりして
ふむふむ
わけしりがおで
カルテに
なにかを
かきこんでいる
わたしは ....
乳白の空へ電車は走る
「一緒にどうだい?」
そう言われても
なんとなく僕は起きただけ
まだまだ地上で夢見たい
「それならお先に」
と電車は消える
窓の ....
ながめるほど
とおくもなく
ふれるほど
ちかくもなく
るるりりらと
ボクのいしきが
きゅうじつを
あるいている
へっぽこ
かみさま
きょうも
あっちで
ごっつんこ
どうやら
あいさつしようと
してたみたい
でもでも
むこうも
こんにちわって
きたもんだから
あたまと
....
60ワットの月の宵です。
机の上を片付けて、
木目の表面をきれいに拭きましょう。
二万分の一くらいの地図模様が浮かび上がります。
そうですね。
机の先の断崖は、阿武川渓谷ということにしましょ ....
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