林の前を透明が過ぎ
曇をわずかに残してゆく
枝が風に
風が枝になるさまを
雨は照らしつづけている
水と水のふるえのはざまへ
羽はさしのべられてゆく
水を聴かず 音だ ....
踏み込んだところが山の入り口でお眠りここがゆめの入り口
僕はまだ死んでいないとあなたから雲の手紙がひろがる深空
この花の名前をあなたに聞いたはず昨日の夢の廃屋の庭
生きて ....
さらり、さらり
さら
さら
さら
もう少しで越えられそうな
海辺の砂の城が
指を折る度に
遠ざかっていく
懐かしい人の声で
ここから離れることのない
耳の奥で鳴り続ける乾い ....
五月は光がとても
新しいものに敏感で
そこにだけ眩しい未来を
産卵させている
私は太陽系の
地球という
小さな惑星に生きていることを誇りに思っている
神様という人へ
明 ....
やわらかく流れる小川わたくしのちひさな闇にきらめくひかり
クローバー探して回る少年と少女の絵画にみとれるぼくら
ぼくたちのこの関係を奪うのが風なら運び来るものも風
河原に ....
郵便局へ行く方角から
とても苦しい声がして
(と言ってもそれは自分の感情で)
ハンドル ブレーキ みんな操作効かなくなったりして
と言ってもルールはもうすでに
あそこの雲だって知っているはず ....
寝転んで見上げる空に何が見える?
真っ青な空に白い雲
夜ならきっとキレイな星が見えることだろう
この季節この時代に
こんなに自由であることをありがたく思わなければならない
もっとも誰にか ....
ぼくにできることは
ほんのすこしのこと
だけどそのすこしが
ぼくやだれかをほんのすこし
うれしくさせられたらいいな
ぼくにみえるものは
ほんのすこしのもの
だけどそのすこ ....
黄色い鎖が
何を縛るでもなく
地面に置かれている
廃車と遊具の鉄は響き
午後はゆらりと夜になる
夜のなかを
夜が動く
その高みにある輪郭が
すべるように落ちてくる
....
はじめて詩を読んだ時
若くて とてもかわいいと思った
しかし しだいに冴え
凍るような苦痛 けど
美しさをまして
貴女は 詩を うとんじていた
悲痛な思いを記す事を 嫌悪し ....
出窓にならべた
傘や 飴玉や しおりや うた
降っていない あめは
わたしを抱きにくると約束して
まるでしらないものに
なった
いつも
泣いている人だけがかなしいのだと
笑 ....
斜体
滑空する
地平は沈黙したままの
全くの木蓮
光/グライド
焼けだされる
きれいな、
春を
{ルビ廻輪=くるま}の中で幸せだった
花の匂いがしていた
四方八方が ....
現れては、消える
どこか遠い宇宙で
星がはじけるように、生まれるように
現れては、消える
深い
深いとだけ言える心の水面の縁に腰掛けて
切るようにしてつま先を遠くへと投げ込めば
それは確 ....
また一つ
約束を破った
夕涼む縁側
うちわ
ねつ
におい
笑うしかないと
娘は知っている
一人で立っている
あなたは
吹きすさぶ風に向かい
横顔しか見えない
見せてはくれない
風があまりにも強いので
あなたは
目をしばたいていて
けれど
目を背けることはなく
....
朝は聞こえず
雨は遠く
水平線の陽
かたわらの光
からだをつらぬくかがやきの芯
やわらかくやわらかく変わるかたち
滴の重さの鳥たちが
つまずきながら屋根をわたる
....
雑音まじりのレコードを絵にしたら
古いテレビの画像みたいになって
鳥と葉っぱの区別がつかなくなった
川べりを歩く ゆうぐれ
右の道が途切れると
橋をわたる
左の道が終わりそうになった ....
どこに
どこへ?
見あたらない確かなものって何?
環状線で、きた
絶望のままにか
よれよれのTシャツで
ふらふら歩く
悲惨の影も見当たらない曇り空の遠く
頬がピクピクけいれんす ....
花を摘んだの?
群青に沈んでゆく
風の流れてゆく
窓辺で
聞かれて
君の後れ毛を
遠くに感じて
僕は急に
君の腕をつかんだ
とてもやさしい腕を
君は驚いてそして笑っ ....
乱反射している飛沫に映るきみ刹那に過ぎ行く夏のはじまり
六月を雨の季節とたとえれば花嫁たちのヴェールは時雨
水の中の八月だから転校すきみの街までクロールでゆく
ひたいから ....
(いいちこを呑む夏の夕暮れ
人生はとてもぼんやり過ぎて
私は詩を書いていたりする)
あれは遠いせいしゅん
わたしはわたしに呼びかけたりした
美しかったりした
あれは遠いせいしゅん
....
時計を見ると、待ち合わせの時間から1時間くらい過ぎていた。連絡は来ない。僕が待つもの。約束なのか、友人なのか。
愛が報われるなら永遠でも待てるといったエミリディキンスン。彼女は約束なんてちっぽけ ....
その名残はもう届かない位置で
懸命に手を振りながら明日に挟まれていく
折り重なり、押し寄せる毎日の隙間
風化する
足跡はもうどこにも残っていないから
辿ることも
手を伸ばすこと、も
....
五月になれば 静かなものたちが風に揺れる
栞の挟んだ読みかけの本を開いてみる
わたしの記憶はそこでたちどまっている
色褪せた光の染みを読むように頁を捲る
その先を読むことも また
許され ....
雲海に
戻れそうな
根雪
きちりと
した重み
いくつも ふまれて
ていたく かじかんだ
積もりはじめたばかりの頃の
やわらかなにごりは
くろく
かたどっている ....
ふわりふわりふわたり雨よ
ゆりちゃん、さわってごらん
うわぁ、ほんとにやわらかい雨
めったに見れないけしきだよ
むこうになにがみえるかな
お店がいっぱいみえてます
なのにとってもかろや ....
花が咲き出しますと
わたしの中で
やさしいものたちが
皮膚を透して 蒸発していきます
それはわたしの 遠い方向の片側で
不細工であるけれど
組み立てられていくのです
そこにだけ 微か ....
さかさまつげ と診断され
父に手をつないでもらって
眼科に通って いた頃
診察してくださった先生は
遠くをみつめなさい と言った
遠くの山の緑 遠くの景色を
とても 眼にいいか ....
果たして夜は来るのだろうか。
僕のイメージはほこりをかぶったまま闇の中にほおむられている。そして、君が、好きな誰かへの感情も、きっとそうだ。なぜなら、ここはネバーランドじゃないから。
世界の中 ....
僕らがあの不確かな情景をそれと呼んでいた頃には
まだ君は躓かない足と目線で
確認済みの経路を泳いでいた
風をよけるような手付きで
あの足跡から
十五番目の通路の奥で
黄色い花が咲い ....
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