すべてのおすすめ
人さし指と中指で
腕についた血を軽くはさむ
もう流れないそのかたち
なかば閉じかけた三本の指のあいだから
口と目のない白い髪の女のにおい
....
雲になる花
見えない鳥
午後は夜より深く
地は空より暗く
屋根だけが鈍く透きとおる
高く遠いひとつの窓が
誰もいない部屋を明るく照らす
ちぎれずにいる雲から先に
逆 ....
わたしは
命ではないものの声を聴く
わたしをここに
わたしをここに置いてゆけ と
横倒しになったわたしの心
たったひとつの言葉に浮かび
たったひとつの言葉に沈む
横倒しの ....
かがやく小さな雲の群れが
夜の白をすぎてゆく
河口に 入江に
小さな舟がひしめきあい
薄いむらさきのなかで揺れている
雨を照らす手のひら
雨に照らされる手のひら
....
ひび割れた岩の目が
波に降る花を見つめている
鳥の翼の生えた草を
銀の署名とともにつかむ手
燃えつきることなく火のなかにある
明かりの下で器をかたむけ
草を焼いた粉を見つめ ....
雨が止み
もの皆かがやき
手のひらが痛む
ゆらめくいのち
その名とともに
世界となるもの
ふたつの惑星が
三番めの惑星に落とす影
午後と夜の間の ....
見わたすかぎり
群青の花が咲いている
鉄を打つ二つの人影
冷気が恐怖をはらい
からだを重くする
静かに笑み
花のなかに
降る水の暗がりに
はじめて地を踏むように立つひと
....
水に映る自分を
かきまぜてもかきまぜても
自分にもどる
二つの言葉の義眼をはずし
二つの穴にたまった雨水に
羽根が沈んでゆくのを見る
けだものの心に近づいてはいけない
けだものに喰われてしまうから
けだものの心を知ってはいけない
けだものになってしまうから
けだものの心は
晴れわたる心
恣(ほしいま ....
思い出せない言葉のかわりに
鳥を葬り
砕けていく雲を見つめる
質問と答えを
同時に失うとき
翼を求める気持ちをおさえられない
....
火のなかに失ったもの
火のなかに忘れたもの
火のなかに入り
置いてきたもの
三つのものの区別がつかなくなった今でも
お ....
マリアンヌあなたが眠る七月にあなたが強く響くのを聴く
マリアンヌ七月の原をふりかえり星の海を見つめつづける
マリアンヌ石壁を越えあなたへと滴のような声がしたたる ....
思いもよらない場所に
手が くちびるが
触れてゆく
思いもよらない場所に
いるはずのないひとの
手が くちびるが
....
すべての星をつないで ひとつの星座を作りたい
火でできた椿の 輪を作りたい
空に映る地の原に 咲く花を見たい
海に落ち ....
蝶のための海岸
岩に潜るもの
砂粒を喰むもの
夜のにおいの枯れ庭に立ち
ふいに風を振りかえるとき
ヴィンセント
....
憎しみを憎めぬ己に目をつむり走りつづける霧の日の朝
手をつなぐふたつの季節の境いめのついばむ鳥さえいない花の実
何もかも光も土も不確かな滝のように流れるふち ....
たくさんの葉のなかの
ひとつだけが震えていて
どこか見えないやわらかなものへ
届かないくちづけを繰り返している
なにゆえに見放すことができようか我が奥底に棲む群盲を
しかばねの多さに目を突き哭き叫び地獄の番犬喰らう日に記す
何億人殺めようとも救われぬ我が魂に触れるもの ....
遠去かる陽がうなずいた草の輪にやがて降り来る雨のふちどり
痛む目となだらかな背を持つものは皆それぞれにぽつんとしている
ひとりだけ此処に居ること奏でれば返る応え ....
「昨日はふたつの嘘をつきました今日は今日とて数え切れずに」
たくさんの傘が車道をすぎてゆく雨上がりの陽に影を失くして
風あおぎ枯れ川の春祝うのは帰る場所無き ....
春の花ほつれゆくまま雨模様
現し世のなべて二重の涙かな
雨の舌双つの蝶を行き来する
手のなかに生まれ滅びる己かな
留めおく術も失くし ....
休日の朝だけ傍若無人の人
「役立たず」叫んだ後悔あとに立たず
部屋のなか足で優雅にコーディネート
ぽちゃぽちゃと茶のなか茶柱バク転す
平日の何が「平 ....
赦すがいい赦せぬものを赦すがいいおまえがおまえでありたいのなら
できませんどうしてもそれはできませんわたしがわたしでありつづけるなら
かがやきのただ ....
気づくと右手は濡れていて
描きはじめたばかりの夜に
銀色の線を引いてしまった
見る間に乾く三日月の下に
明日の朝には消えてしまう
羽や光を書きつらねていた
隠さ ....
波が波に描く絵が
次々と現われては消えてゆく
海を覆う点描が
鳥を照らし点滅する
蒼い光のひとがいて
歌い舞う花のうしろで
草に沈む岩を見ている
海からも声のなかから ....
火の舌
鉄の舌を持ち
語ることを持たない子がいて
その語ることの無さゆえに
ただ疲れ果てては眠りにつく
眠りはしばしば覚まされる
幾つかの鏡が子のそばにあり
何も映 ....
隻眼の花にこぼれる
はじまりの波のはじめから
めぐる魚からほどける光
片方の目はまばたいて
沈みくるものを受け入れる
敗れつづけてなお勝つものがあり
不幸せの上に成り立 ....
林の前を透明が過ぎ
曇をわずかに残してゆく
枝が風に
風が枝になるさまを
雨は照らしつづけている
水と水のふるえのはざまへ
羽はさしのべられてゆく
水を聴かず 音だ ....
何を書き何を消し去る踏切夜
目の前に灯し火の音ひらく雨
歩む背に消し炭の夜やわらかく
描き出す描くともなく描く夜
春のうた頭上の夜に触れてゆく
....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13