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色が無くて
血で描いていた
緑の絵の具を
わたす手に触れた
春の花が
葉をちぎり
痛みに泣きながら
微笑み 差し出すようだった
血の枝に
緑の枝が重な ....
涙をぬぐう手の甲ごしに
おまえが見つめた火の生きものは
空に焦がれて死にかけていた
朝は目のようにゆうるり動き
世界は風のなかの風にたなびく
こすり
火を生み
....
鈍色の唱の季節をかきまぜて微笑み交わす龍とけだもの
視が視から離れるたびに近くなるけだものは視る光のみなもと
おまえには自身を射抜く弓がある行方知れない弦のけだもの ....
逆さまの絵が文字になり唱になり降り来るを視るひとりけだもの
かけらからかけらを生むはおのれなり触れもせぬまま砕きつづけて
水涸れて見えぬ片目に見えるもの ....
首から下の感情が
水の底にひらいている
水は濁り
水は隠す
鳥が一羽
木守りの実を突いている
子らの悪戯な指と目が
雪の枝に残っている
ほのかなものが上にな ....
硝子を失くした窓の列を
鳥と花と草木が通る
ここは痛みを知らぬ胸
ただまなざしに焼かれるところ
道から湧く音 光まじる音
重なりを解いてはつなぐ音
....
木琴が鳴る
放つことなく
受けとめるまま
木琴は鳴る 木琴は鳴る
明けてゆく夜
蒼つなぐ蒼
明ける色の手
見えない手
隅に集まる
光の渦
紙に染み込み
....
水に降る水
白を摘みとり
蒼を咲かせ
水に降る水
空から空へ
伝うまなざし
水に降る水
水に降る水
子の胸に
しっかりと抱かれた鏡から
にじみゆく色
ほどけ散 ....
夕暮れと同じ色をした
雀の群れを乱しては進む
道標を飾る白い花
いつの世も悲しい子らはいる
わずか数秒のねむりのつらなり
分かるはずもないくりかえしのわけ
ねむりのまま ....
重なりつづける眠りの底に
かすかに生まれ
浮かぶ手のひら
目をつむり 在るのは
無いということ
分からぬくらいに
離れていること
隠しても隠しても
は ....
灰の混じる手で
顔を洗う
灰は髪になる
灰は語る
火が残り
背を照らし
髪の影を燃し
ひとりを浮かべる
月を連れ 別れる
赤い光が 鉄路を去る
隣を歩む ....
火と花と手
小さな胸
火は花は手
風と声が水になり
窓の外を流れている
音の影は 鳥に分かれる
古い息が聞こえくる
指に触れて 景は走る
何かから逃れようと振り ....
雨と晴れをくりかえし
建物はまた高くなる
いつのまにか空は細く
うたは縦に縦に流れ
震えと響きははざまを覆い
異なる風の種が降る
いつか道の涙から
小さくひらくかたちが現われ ....
雨がひらき
匂いは昇る
あたたかく 甘く
光になる
白い歯車
心をまわし
雲の映らぬ涙になる
手のひらの空に繰りかえし
現われては消え 叫ぶもの
二分きざ ....
夜はせばまり
夜はひろがる
粒と浮かぶかたちと唱と
妨げを泳ぐ轟きと尾と
波の終わりとはじまりに
砂の言葉と花火があがる
水からひろいあつめた羽と
貝のかたさの音のつ ....
濡れた羽が陽に群がり
熱と風をついばんでいる
粒にこぼれ 分かれる光
陽のかたちをひろげゆく
わずかな空と多くの地があり
様々な花に覆われている
重なりとはざまのひとつ ....
すれちがいたち
ひびきたち
ある日ふたたび
はじまるものたち
雨のなかの火
海辺の火
生きものに囲まれ
朝の霧を燃す
髪の毛から見える
耳の応え
ひらい ....
重い足
その先の
風すぎる風
打ち寄せては途切れる
灯火の声
選ばれることのない
夜の目の道をゆく
風しかいない風
窓の奥に立つ子の手
....
家の陰の家
窓に映る窓
白詰草 光の辺
鳥と風 声の影
低い曇を照らす原
曇とともに揺れる原
歩むもののないにぎやかな道
川岸に沿い 川に重なり
流れとは逆 ....
碧に緑で描かれた円が
四羽の鳥となって飛びたつ
地には器と光が残され
祝いの言葉に響きつづける
泣いてはめざめ
泣いてはめざめ
水をほしがる子の手を握り
しずくの径に消え ....
雨が地を{ルビ圧=お}し
音はまたたき
山から空へ照り返す
空白の{ルビ主人=あるじ}が
空白を置いて去り
空白は 家になる
雨のための唱があり
夜をしずくの ....
草色の羽
水はじく羽
鈴の手を聴く
鈴を見る
夜と宵
光と声が
同じでいられる影のなかへ
指は撫でるように沈みゆく
荒れ野を見つめる
片目をふせる
はざまゆ ....
ちぎられたもの
砕かれたもの
ひとつひとつに触れる指が
それらの色に染まりゆくさま
色のないもうひとつの指に触れ
血のにじむまま触れ
あたためるさま
染まりゆくさま
....
小さな影に
小さな水が触れ
小さな手のひらのかたちとなり
雨の木陰に結ばれてゆく
風を後ろに
花はひらく
ひろく けむる
ひとつ ゆれる
野に落ちる光
川に立 ....
口に重い想いをひとつ
あなたの口に移しても
もっともっとと欲しがりつづけて
想いは軽くなるばかり
想いは薄くなるばかり
あなたが書くものが詩であるなら
わたしが書くものは詩 ....
葉の冠
羽の傷
石をめぐり
消えてゆく声
葉は羽になり
傷は消える
石の上に
残るささやき
木陰 波音
水から石へ
つづく足跡
飛び去る羽
曇に ....
触れようとすると
指は変わる
光
漏れ聴く 光
見ているものは
既に違う
光
遅い 光
雨のはじまりを鳴く鳥に
枝はまぶしく満ちてゆく
羽と幹と音のはざ ....
空わたり沈むまなざしみずたまり
二季またぎそよぐ野の墓みずたまり
何も得ず何も見ず居るみずたまり
輪を{ルビ描=か}かずめぐる生の輪みずたまり
....
木々によるさまざな動議が
夜の土に投げ出されている
光源を追い抜く影の群れが
道を軋ませ ころがってゆく
空は三つの重なりから成り
そのどれもが朝から遠く
空は
自由 ....
曇を知らずに
ついばむかたち
花のかたち
あこがれ
うしろめたさ
午後の砂の輪
置き去られた目の幾つかが
むずがゆくからだにひらいても
窓を見つめることがで ....
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