倦んでいた
人ごみを避けると風が冷たかった
空の色が変わろうとしていた
古本屋でたまたま買った
サガンの「悲しみよ こんにちは」を
喫茶店で一気に読み終えたあと
いたたまれなくなって
ひ ....
  ☆村野四郎「体操詩集」の場合




 次の詩を読み設問に答えなさい。

花のように雲たちの衣裳がひらく/水の反射が/あなたの裸体に縞をつける/あなたは遂に飛びだした/筋肉の翅で/日 ....
赤い谷間を染める月が
凪いだ海の底へと
落ちてゆく

波間の暗がりに
赤が滲む
その辺縁に蠢くのは,
青い夜光虫だ

沈みゆくあなたの死体に
波が触れる,そこから
夜光虫は,静寂 ....
ほかほかの焼きイモを
2つに割って
片方を誰にあげる訳でもなく
なんとなく寂しい感じがして
片手に持ったそれを
焼きイモ売りのおっさんに渡して
一人の道を
ポケットに左手を突っ込んで
 ....
普通の椅子だったのに
ある日、突然
わたしは人になった

初めて目でものを見た
初めて呼吸というものをした
初めて手でものを掴んで
初めて足で歩いたりもした

椅子に座らなければ ....
よんどころない事情があって
きりんはタクシーに乗ろうとするけれど
長い首がひっかかり
ああしたり、こうしたりしても
乗ることができない

もうどうしようもないから
きりんが運転手のお ....
縄とびをする子を探していると
ピンク色のセータに 水色の縄で跳ぶ子がいたので
失礼して
卵を置きました
割れて出たのは 木屑です
カラス 雀 みみずく キリンなどが それを喰うので
「トッ ....
私は拒否された
冷たく重い扉の外で私はゴキブリのようだった

歯の奥でコンクリートがじゃりじゃりする
深夜四時
新聞受けに挟んだ手を抜くこともできぬまま
このまま朝まで過ごすのだろうか
 ....
時間は思い出からなる
思い出は同時に存在するため
(一回限りの、回帰不能な時間)
は存在できない

空間は寂しさである
寂しさは永遠という単位
で読みとられるため
(計測できる単位を持 ....
紺がすりのような夜を眺め
穏やかな一日を思ううち
心は幼年に浮遊して
小さな手から落としたごむまりを
おにいちゃんが思いっきり地面にたたきつける
ぽーん
ぽーん
空を見上げて
追いかけ ....
バス停で
ネクタイをしていないことに気がついた
社会人としてあるまじき失敗
かといって家までネクタイを取りに帰る時間も無い
ネクタイに代わるものを探していると

あった
ベルトだ
 ....
軽々と、鉄骨の、ピロティのリズム、
スウィングした空を{ルビ調=ととの}え、{ルビ秋扇=あきおうぎ}。

見上げれば、落下防止の網越しに、つがいの蝶、
安全と明日へのオマージュ。

ここな ....
 夏に捨てられた蝶が
 ひらひらと自転車の前輪に身を投げようとしている

 これ以上ペダルを重くしないでおくれ と
 黄色いはねをかわす

 崩れそうな空
 地響き
 空鳴り
  ....
テーブルの格子模様に
グラスの底を当てて
君はその大きさを測っている
今週末は雨が降っていて
僕達はまるで
晴れ間をうかがうような顔でしか
会えない
八重洲の長い地下道を歩いて歩いてきて ....
いまひとひらの蝶
ゆっくりと私の眼を奪って
流れ着いたのは何の彼方でもなく
オフィスの私のデスクだった

電話の喧騒の中
不意の来客は用件を語るでもなく悠然としている
よく見ると胸に社章 ....
野分荒野を渡りて
悪しきもの全て散らす
灰の空脆くもありき
頬撫でる風冷たし
朽ち葉舞い踊る
秋の夕暮れ
しずかな池に
つまさきだけ
ちょっと入ってみたならば
たちまち
ぶるっと寒くなり
思わず笑って抱きついた
あなたの腕に
抱きついた
あまりに自然だったから
もう笑い事にもできなくて
 ....
僕の窓から
うさぎが見える
いつも一人で
踊っている
河原で
時には
人気の無い
公園の木陰で
誰かを待ちながら
所在無げに

恋人の窓からは
洗濯干し場の
はしごが
みえ ....
店内には人もまばらで
通りが見渡せる
ガラス張りの
ファーストフードの二階
ハンバーガーを食べ終えて
コーヒーを飲みながら
文庫を読むふりをしながら
活字が目に入らない
彼女のことを考 ....
  ☆黒田三郎「逃亡者」の場合




 黒田三郎といえば詩集「ひとりの女に」(1954年刊)であるらしく、はやくも60年代のはじめには「戦後詩人の恋愛詩のなかで古典的な位置を占める」(大岡 ....
ボクの靴底は減りがはやい。そう感じているだけなのかもしれない。そもそも減ること自体、認識されていない。いつも結果だけだ。昨日と今日との違いはもちろん、今日と明日との違いさえ見当つかない。この論理で進め .... 家族が
微笑みあって食事をしている
目の前に出された献立はみなそれぞれ違うのに
年齢も性別も所属団体も違うのに
それぞれがそれぞれの話題を
提示してかきまぜて咀嚼して
家族スープになって
 ....
灰色の空
ばかりが映る窓を悲しいと思ったのはいつからだ
廊下

ゼンマイのオモチャが走っているのだ
ゼンマイのオモチャが走っているのだギィギィ
たとえそれを止める術が無いとしても
ゼンマ ....
神戸についたその夜に
変な老婆に捕まった
彼女は白骨化した頭蓋骨のような顔をしていた
まるで髑髏だ

月から垂れた灯りは
鬱蒼とした大地に降り注いでいる

老婆は僕の行く手を塞いだ
 ....
青い目のカモメが鳴く
口をこぅと飽けて
喉を震わせず 
声もたてず
静かに
海の音を拾い

岸壁にならぶポプラを
透きとおった舌液に映し
カモメは鳴く

初めて砂をにぎった足の感 ....
ニュージーランドにいるキウィという鳥は
羽がすっかり退化してしまっていて
空を飛ぶことができない
夜行性のその鳥は
夜になると木の穴の中などから出てきて
えさを探す
もちろん飛ぶことが ....
ワンルーム
ペンダント
けす つける
けす
昼下がりの
暗がり
ワンルーム

雨音
ふぶき
バイク水しぶき

ラジオ
けす つける
けす

小机
頬杖
ひだり
や ....
流されるように
従ってきた
働くとは
こういうものかと
思ってきたが
部品はいつか壊れるように
許容量にも
限界がある
出張先から
帰ってきての
報告で
笑いながら
居てもいな ....
幻光音勝る神に重厚せよ焼香する翳り臭いは外耳に渦巻く神秘に激しい光振動を伴い触媒する躍動する精神に若輩或は若年妄想が透明な不透明を貫通したる恥辱の極み程自殺者の血液を薔薇に変え転生する我と我の子ら憎し .... 森はあたしの同級生で
森というのは苗字ではなく名前で
苗字は山田とか佐藤とか鈴木とか
そういう犬のクソみたいなたぐいだったと
思ってほしい

あたしはいつも森とだけ呼び捨てにした
mor ....
狸亭さんのおすすめリスト(850)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
十月×日- 岡村明子自由詩603-10-4
風のオマージュ_その2- みつべえ散文(批評 ...1703-10-3
海があなたを受容するのは,あなたが....- do_pi_can未詩・独白303-10-3
焼きイモ- 桜 葉一自由詩203-10-3
普通の椅子- たもつ自由詩903-10-3
きりんタクシー- たもつ自由詩1203-10-3
公園- 山内緋呂 ...自由詩1003-10-2
むし- 岡村明子自由詩403-10-2
踊る石- まんぼう自由詩303-10-1
ごむまりの月- 岡村明子自由詩703-9-30
人生劇場- たもつ自由詩403-9-30
現場からの秋は- バンブー ...自由詩103-9-30
オウタム- マッドビ ...自由詩403-9-30
テーブル- 紀ノ川つ ...自由詩503-9-28
- 岡村明子自由詩703-9-28
小さい秋- 天風澪自由詩203-9-27
そのまま- かなりや自由詩1*03-9-27
ゾルバ- まんぼう自由詩403-9-27
待つ- ねなぎ自由詩303-9-27
風のオマージュ_その1- みつべえ散文(批評 ...1403-9-26
靴底の考察- バンブー ...散文(批評 ...103-9-26
ファミリーレストラン- 岡村明子自由詩403-9-25
家族がいない- 黒川排除 ...自由詩403-9-25
髑髏をドクロと読まないで- 桜 葉一自由詩303-9-25
カモメの砦- 湾鶴自由詩303-9-25
夜に走る- たもつ自由詩603-9-24
うずまきスタンディングオベーション- バンブー ...自由詩203-9-24
あもっく- ねなぎ自由詩603-9-21
フレグランス・アットマーク・ノット・シナプス- 黒川排除 ...自由詩5*03-9-19
森の背中- 佐々宝砂自由詩5*03-9-19

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29