自分の名前がついてるとも知らず
いわしは
雲を見ていた
自分の名前すら知らないままに
その赤く染まるのを
あの夜
たしかに家出は決行された
両親が寝静まるのを待ち
荷物は何も持たず
ズボンのポケットに
ありったけの小銭と札
そして中也の詩集をしのばせたあの夜
たしかに家出は決行された
....
会社を休んで
食卓の電卓の上に隠れてみた
電卓の5の上に立って
19731973と打たれたら
きっと楽しいだろうと思う
電卓の5の上に立って
14.26と打たれるのは
スリリング ....
横丁の角を
曲がると
公営住宅の
アンテナの遥か上
ライオンの
かたちした雲が
広いサバンナを
駆け抜けていた
ときおり うなずいて
はにかむ頬に マァーマレードジャム
トーストのオコゲを
スプーンで 懸命に削いで
遅刻してもいいから
縞模様の食パンをもう少し
ネクタイの粉を叩くより
....
感情の吐露です
それは美味いのですか
脂がのってるのですか
私は場違いではありませんか
大将、
はちまき ずれていますよ
ずれているのは何だっけ
そ ....
ヤギの角から
風が飛び立ってゆきます
壊れた蓄音機からは
もう染みださない炭酸
かわりもしたし かわりもしない
時計の螺子を抜くと
走りだす犬のシッポ
揺れては困るウッドチェアに
蜘蛛 ....
銀と言うのは
電気を通しやすい物質で
金の方が通すのだけど
安価だから
コンデンサの中にも
と
友達に話したら
殴られた
あざになるまで蹴られた後
髪の毛を捕まれ
指輪には
大切 ....
大切な人への手紙は
必要以上に 重い部分をを伝えてしまうから
僕は二通の手紙を作ります
さらけ出す文を一通作って
あなたに出す二通目のほうには
一通目の表面だけを丹念に ひろいあつめ
恥ず ....
父も母も老いた
しばらく会ってないきみの両親も
老いたことだろう
時々ふと、水洗いでかさかさになった
きみの手を握りしめたくなる
というのはかっこのつけすぎかもしれない
十年た ....
一
あなた
あなたから
あなただから
あたたかだから
あなたあたたかだから
あなたあたたかなからだだから
あたたかなあなたはだかだから
あたたかなあなたはばかだから
あかさかはあさだ ....
そこはかとなく匂う
色めき立つ
日々過ぎて去る
速すぎる師走の
風に吹かれて
独り溜め息を吐く
黒く
ただ歩いていたように
日の冷たさを味わい
道に声をひそめ
失い洶々とする
咲 ....
かなしい
かなしい
かなしい
音が
三回して
水たまりの鯉は
のたうちまわっていました
おたまじゃくしは
海の中で目を白黒させていました
砂漠では
珊瑚が立ちつくしてい ....
☆山中散生「JOUER AU FEU」の場合
いま私の手もとに「JOUER AU FEU」という一冊の詩集がある。このタイトル、外国語なので、もちろん読めない(笑)。が、検 ....
彼女は早起きしてお弁当を作って
今日はピクニック
いいお天気
彼女の調子もいいみたい
ひさしぶりのピクニック
外に出るのもひさしぶり
彼女の退院記念
彼女の作ったお弁当の中身 ....
永遠は流れ星
恋という宇宙を
ついとかけぬけて
儚い夢へ消えてゆく
意味など
何もない世界に
今 私たちは
生きている
もしかしたら
この世界は
誰かの夢の中でしかないかもしれない
もしかしたら
この世界は
何かの本の中でしかないかもしれない
....
手のひらで掬いとった砂が
指のあいだからこぼれる
どうしても掴みきれずに
こぼれ落ちていってしまう
キラキラとひかるその砂のような
どんなきれいですばらしい壁も
見えるものは壁そのもの ....
倉庫に積まれても
思い出すのは 彼のことで
「藁が多いですよね」とか話していた
目の前の男に
「足1本ちょうだい
しがみついて寝るので」
と言ってしまった
外に出たら
これ ....
ppp free connection begins....
lolololololo..............lololololololo................lolololololo ....
綿ぼこりを握りしめていた
お乳を飲むときおっぱいを押した
初めの一歩バランスを取るために前にのばした
泥まんじゅうを作った
じゃんけんをした
桜吹雪のなか母の手に包まれた
ハナハトマメと書 ....
おばあちゃん、久しぶり
ここに来るのはいつ以来だったっけ
たびたび来られなくてごめんね
あなたの息子夫婦は、相変わらずまた
旅行に出かけましたよ
今年は雨ばっかり降って寒いから
あんま ....
あみだくじ
あみだくじ
からくじ なし の あみだくじ
しまいまで ぶじ たどりつけるか あみだくじ
じんせいは あみだくじ である
めのまえに つぎつぎ あらわれる せんたくし を ....
わたしのせなかというものを
つくっていただけるのであれば
どうか車輪の跡を忘れずに
しあがりのまえに
たっぷりと日干ししたものに
あなたというものを
ペダルにのせて
し ....
いまはもうない家の
いまはもうない裏の畑で
空いっぱいに舞っていた
アキアカネ。
物干し竿に 洗濯物に
それをとりこもうとしてる母の髪に
それを見ている私の肩に
アキアカネ。
....
凸凹配位座はいつでも漂っていて
なにかの拍子に
繋ぎ合っている手のひらの合間にもある
ついさっきまで当たり前のことが
風ひとつ吹いただけで
何ひとつ理解できなかったり
その道理に畏れたり
....
青春を 青 と言う
青春を 春 と言う
色と季節と くくるなら
「白秋」の
想い
見えて
「極刑」:まぶた切除−視覚の永久開放
旅立ちの鳥は
透き通る光は
風浴びる葉は
ものいわぬ詩人
羽ばたきが
きらめきが
さざめきが
彼らの言葉
不器用な友は
無口な父は
すれ違う人 ....
『長いキス』
君がコーヒーを運んでくる
その姿が近づいてくる時から
すでにキスが始まっている
『キス』
キスするのには理由がある
簡単な理由だ
ふたりがキスしよう ....
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