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 足許濡らす時雨の冷たさ
 夕刻に立ち寄るスーパーで
 野菜売り場の陳列棚から
 外れた隅へ歩み寄る

 (やあ、おかえりなさい!)
 わたしに呼びかけて来る
 焼き芋機
 鼻先へ ....
 昨日届いた知人からの喪中ハガキ
 十二月がいそぐ街道で
 歩むわたしの跡に光っている
 薄いオリエンタルブルーの粘液

 これは体のタンパク質と
 多糖分と大量の水分
 角が右も左も交 ....
 山裾の丘陵地
 総合病院の裏出口から
 人通りすくない小道を往くと
 閑静な民家の中にログハウスも立ち並ぶ

 金網張られる路端に
 あかるんできた雨空をあおぐ朝顔が
 緩い風の懐であ ....
 冴ゆる風にこぼれて舞う
 レモン色した木の葉のひと翳り
 そういうもので
 詩を書きたいとおもう

 心に満ちる平穏な日常は、
 わたしの気付きもしない情景のなかで
 なにものとも く ....
 小さく硬ばった花片を
 朝風に震わせる白菊が霜に打たれて
 紫色にうち伏した
 
 昨夜
 把えられないあなたの
 おぼろな姿が身近く訪れた
 手を差し伸べて
 髪を撫でようとすると ....
 
 夜のしじまに浮かんでいる
 朧月の
 のどやかな微笑
 
 (お疲れさまでした)
 あなたからスマホへ届く
 おやすみなさいの短いメッセージ  
 いちにちの流動の
 しずかさ ....
 
 氷鳴る
 グラスの縁に刺さっている
 大きめなカットレモン
 摘み上げて絞れば
 目にもこまやかに射しこんでくる
 濃度を増す酸っぱさ

 其処は尾道の坂の途中にある喫茶店
  ....
 京都三条大橋の側にあった
 六階建の大きな旅館
 非常階段の踊り場から見下ろす
 起き抜けの街の静けさが好きだった

 あの頃は赤のマールボロを一日半箱吸っていた

 廊下の重い鉄扉が ....
 西陽とたわむれる
 噴水の水の音は
 子どものようにまるくなってかけまわり
 わたしへ小さく手を振って
 「またね」
 …… 、

 鈴懸の樹が葉を落とす風に鎮もる

 涼風にのっ ....
 
 パサパサの餌をたべて
 噛み砕けども詩にはならず

 烏輪の光を受ける郷も今宵、雲裏から出ぬ草はらで
 落ちてるひらがなを拾いあつめて
 ぴん とお耳を立ててみる
 霧が匂う
 隠された風景の先を見ている
 霧はたえず
 その気配でただようしかなく
 歩み出れば崖っぷちに咲く野の花の細い茎を
 つかむような愛ならば

 もはや私に 
 緑なき ....
 衣装ケースの底に今も蔵って有る
 レトログリーンに白ドット柄の
 スカート付き水着

 もう 着れる歳でなくなってからも
 ずっと処分せずにいた
 これが一枚の写真の様だから

 眩 ....
 
 クスノキのそば
 芒漠としたまひるまの陽光に
 蝉の ヒビキ

 離れて住まう年老いた父の声が、
 聞きたくなって
 
 
 冷蔵庫から取り出した
 ガラス小鉢の紅茶ゼリー
 ノンシュガーのルベウスに
 ちょっと多めにのせる生クリーム

 リビングには尖った葉を上向きに茂らせる
 アンスリウムが、柘榴石のような ....
 日照りつけて
 前方に霞む百日紅には
 二匹のクマンバチ

 ふと足もとを
 蜻蛉のちぎれた一枚羽が
 微風に 晒される
 
 古道の低い石積みの傍、
 生い茂る樹木の根元で
  ....
 畳の間、煙立つ
 半分に折ったお線香
 母へ挨拶する私を
 初夏の陽が
 ただ ゆるゆるといたわって
 
 六月の寒い日が
 まやかしの告白の手紙を読んだ様に
 そくそくと背筋に迫る

 化粧水の冷たさが掌に残り
 それすら重い

 黒いオルフェにとりつかれて
 ピーナツをかじりなが ....
 アテネの丘から
 陽の落ちるのを眺めた人
 暖かい心がある
 鋭い頭脳がある
 広い度量がある
 だが そのどれよりも弱々しい男の魂が
 彼自身を求めている時
 かたい指がある
 細 ....
 雨雲の 垂れる夜にした恋だったから
 跳ね上がることもしらなかった
 若い胸
 月日がたって
 ゆれ動いた女の性の激しさは消えた

 雨の跡を縫いながら
 古い み寺を歩くと
  ....
 われらはビーチグラス埋まる砂地で咲く
 浜木綿なのか

 空に憧れ
 海に真向い
 樹々にさまよい
 陽を讃え
 愛の溢れた瞳を求め微笑み合う
 ひとり あなた
 ひとり わたし
 ....
 地下へ降りる階段の
 足音を吸いこむノワールプロフォン
 ぞわぞわ 脈打つ気配に取りまかれる

 手のひらで触れる空洞の壁
 その冷たさしか頼れるものは無く
 心細さに すくむ足でく ....
  終章 「冬日和」



 「豪州産切落とし牛でいいんよ! これと、鶏のモモ肉にしよ」
 「お肉、八百円いってないわっ」
 「タレはさ、こっちの使い切りサイズで料亭の味っていうフレーズの ....
  第六章 「死の砦①」



 「な、見て。またやってはるわ……『松の廊下』」
 「ほんまやなぁ」
  午前の館内清掃へ向かう若手職員らが足を止める視線の先には、主任と
 副主任の姿。 ....
  第四章 「メモワール」④



 「なんなん? あのベット」
  四歳年上の先輩の木崎さんが、病室の西側の壁へピッタリ寄せて在る空
 ベットに目を向けた。敷かれる古びたスプリングマット ....
 ピアノの鳴る室に
 ふと情事の匂いを嗅いだ
 犬や猫の恋ではない
 汚れ切った人間の恋でもない

 冷たい冬の北大路をよろめきながら
 月の無い日をさまよって
  この生命
  唯美 ....
 
  序章 「橋」


  瀬田川に架かる鉄橋に軋む音。光の帯は今を、過ぎた。
  友人の引っ越し祝いで新居を訪問した帰り、瀬田唐橋の欄干から眺める
 そこに拡がるものは、時の流れすら呑 ....
 あれは 昨年の秋のこと
 サバトラ猫のアタシが居候している
 竹薮と雑木林の土手の裏にある大きな家の
 離れの建物の中庭に行くと
 
 「あ、鈴ちゃん来たわ。」
 迎えてくれる おばあさ ....
 「はじめまして。」
 こんな所で、突然
 自己紹介させてもらうアタシは
 サバトラ猫よ

 「サバトラ」というと品種のように聞こえるけど
 これは毛色の名称でね、鯖に似てるからなの
  ....
 瀬田川に架かる鉄橋に軋む音
 光の帯は今を、過ぎた
 
 引っ越し祝いで友人宅を訪問した帰り
 瀬田唐橋の欄干から眺める
 そこに 拡がるものは

 時の流れすら呑み込んでしまいそうな ....
 「な、なっ、これ。あたし持って帰って
  味噌汁に入れるしラップで包んどいて!」
 友人へ手渡す 小さなまな板で半等分にした
 えのき

 玄関開けた沓脱場から上がってすぐ傍、
 ガスコ ....
朧月夜さんのリリーさんおすすめリスト(139)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
焼きいも- リリー自由詩12*24-12-11
街角のかたつむり- リリー自由詩11*24-12-7
吐息- リリー自由詩7*24-12-4
プロフィール- リリー自由詩11*24-11-29
白菊- リリー自由詩6*24-10-24
夜しずかに- リリー自由詩6*24-10-19
レモンスカッシュ- リリー自由詩6*24-10-12
喫煙所- リリー自由詩13*24-10-8
秋うらら- リリー自由詩10*24-10-6
五行歌_うさぎ- リリー自由詩8*24-9-23
Reason- リリー自由詩15*24-9-20
波の思い出- リリー自由詩9*24-8-4
五行歌_一首「烈夏のこえ」- リリー自由詩7*24-7-31
灼夏のいろ- リリー自由詩12*24-7-30
陽炎- リリー自由詩15*24-7-23
五行歌_一首「花琳」- リリー自由詩6*24-7-12
紅い花- リリー自由詩6*24-6-14
悪魔- リリー自由詩8*24-6-13
性(さが)- リリー自由詩6*24-6-9
仏蝶- リリー自由詩7*24-5-31
闇に歩けば- リリー自由詩10*24-5-15
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-25
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-20
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...6*24-3-19
色神- リリー自由詩6*24-3-17
鏡像_【改訂】- リリー散文(批評 ...5*24-3-16
鏡像_(3)「秋海棠」- リリー自由詩7*24-3-3
鏡像(2)「藪の小道」- リリー自由詩6*24-3-3
鏡像(1)「橋」- リリー自由詩11+*24-3-2
Cheers_- リリー自由詩9*24-3-1

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