イザベラとのお付き合いが始まって、一緒に散歩に行ったり、一緒に食堂でご飯を食べたり、部屋に呼んで料理をふるまったりしてみて、分かったことなのだけど、イザベラは若い日本から来た留学生の女の子たちとはち ....
世の中にはたぶん腐れ縁というものがあって、ぼくにしても、そうした抗することのできない不思議な力の命ずるままにこんにちまで生きてきたと言っても嘘ではない気がする。
ぼくには大学時代からの友 ....
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楽しいドライブではあったけど、短い時間の間にいろいろなことがあったせいか、エルウッドは結構、疲れていた。帰途に着くすがら、車が盗難にあうんじゃないかとか、イタズラされても困るなあとか、いろい ....
{引用=或いは小噺『洗顔異譚』}
「顔を洗って出直して来い!」って言われたんで
顔を洗ったら顔がとれちまってね
仕方がないからそのまんま取って返すと
....
現在まで女性から、心無い、哀しい非難を受けても、屈辱的な想いをさせられても、甘んじて受けて、大概の場合は、我慢して耐え忍んできた。
はっきり言って僕の外見には、魅力は無いと思う。髪が細くなり、そ ....
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さて、ジェイクが消えた後も、しばらくのあいだはご機嫌に初夏のシカゴの街を車でとばしていたエルウッドだけど、いつの間にか、制限速度を守って走っている自分に気がついて、思わず「俺も歳とったな」と ....
ぼくらがその時住んでいたアパートは二階建てで、二階のちょうど真ん中の部屋がぼくらの住処だった。
深夜一時半、月が白々と全てを明るく照らし出している夜の中へ、ぼくはひっそりと出ていくことにした。
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{引用=*《明科》
{ルビ山間=やまあい}にある明科という名の小さな駅から、ぼくは下りの電車に乗った。よく知っている場所のよく知らない駅だった。それは梅雨入り前のこと ....
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次の瞬間、エルウッドはクラッチを踏んでギアをバックに入れて、アクセルを踏み込んでいた。普通のアメ車ならタイヤが空回りして、白い煙を吐き出してから、後退し始めるところだが、ツイーとスムーズに走 ....
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「どうだ兄弟。悪くないだろうがレガシィは。」ずれたブルース・ハットを被りなおして、ジェイクは葉巻に火をつけた。エルウッドは思わず、その煙にむせて、咳き込んでしまった。登場したジェイクは背中から ....
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「うーん、2.0リッターか。」と腕組みをしながらエルウッドは考えこんでいた。彼にとっては、もっと排気量の大きな、そしてトルクの大きなアメリカ車が望みだったのだけど兄貴やレイたちが予言したとおり ....
親しみを覚えるのはノリに乗った文章ではない。
ところどころ覚束無い感じの消しゴムで消した跡が今にも見えてきそうな文章がいい。
ためらいがちで、口下手で、それでいて丹念な性格が見て取れるよう ....
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エルウッドはなんだか不思議な気持ちだった。よく知っているつもりのレイが生前、日本人とかかわりがあり、それがまだはっきりとしたわけではないけれど、ブルースと関係があり、自分もそれに首を突っ込むこ ....
近所に打ち放しコンクリのばかでかい博物館がある。
館内はなぜだかいっつも薄ら寒くて
無機質なあいつの心ん中みたいなんだ。
奴はそれこそ、のっぺりした四角四面の「ぬりかべ」だね。
ちょい ....
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さて、いつも以上にのんびりと時間をかけて路地を抜けて、シカゴ・エキスプレスの前にたどり着くと、ちょうど九時の開店時間だった。開店するまで仏頂面して待たされるはエルウッドも嫌だったから、機嫌 ....
営農センターの方から多くの桃が北側の倉庫に運ばれて来ていた。
フォークリフトの爪が木製のパレットに引っ掛かかる時に出す苦しげな音が梅雨明けの北信地方に反響し、鉄で出来た{ルビ軌条=レール}のような態 ....
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あれっと思って、エルウッドが気がつくと、まだ真夜中で、アパートの窓の外では煌々と月の光が、シカゴの街並みを照らしている。シカゴにしては静かな夜だ。
「まさかね。いくらなんでも、それはないだろ ....
6
エルウッドかふっと気がついたら、またまた天使の登場だ。ブルース・グラスにブルース・スーツ、ブルース・ハットで、ジェイク、レイ、そして今度は一人増えている。義理の親父のカーティスまで枕元に並ん ....
ネットアイドルの世界は、深い。
この深さとは多様であるというだけでなく、多様な世界を止揚した上で希薄な接続をも一つの因子として処理しうる、一般に”業”と呼んでも差しつかえない寛容さが生む途方も無 ....
5
エルウッドの上機嫌ぶりに、あきれかえっているシカゴ・エキスプレスの常連たちを、後にして、彼は意気揚々と、アパートに引き上げてゆく。デーゥイやマイクや、や常連たちはてんでに、「あれ、何だよ。」と ....
その歳若い上司は、ぼくどころか妻よりもずっと若く、なんとその若さで現場のチーフを仰せつかっているとの事だった。
妻はつねづね、その上司が、制服の上から胸や腹のあたりを無造作にガリガリと掻きむしるのが ....
物音と話し声を聞いたとき、ぼくは布団の中いた。
ぼくは、しばらくじっとして、できるだけ注意深く外に耳を済ませることにした。
空耳ではないはずだった。
たしかに、微かな話し声と、横たえられ ....
4
エルウッドは食事をしながら、ここのところ毎日、見る夢のことについて考えていた。
日本だって、日本のブルース・スピリットなんて聞いたこともない。第一、英語が喋れない日本人にどうやってブルースが ....
さて、いつものように九時から六時までの単調な仕事を終えて、シカゴの市電にゴトゴトゆられながら、帰宅する。
夕食はいつもお決まりのトレーン・キッチン「シカゴ・エキスプレス」で済ませる。
いつも ....
2
例のルイジアナでのドタバタ騒ぎが一件落着した後、結局、エルウッドはルイジアナ州刑務所で五年は食らい込むハス゛だったのだが、カーティスの息子のキャブやペンギンの奔走で、今は里親のところにいるバス ....
心奪われる詩、とりわけ自由詩のそれにかんしてはだいたい数行読んだだけでピンと来て、後頭部から頭のてっぺんにかけてスッコーンと何かが抜けるものだ。
しかし、なかには例外もあり、これが不思議なところ ....
「イラハポ」は、「イラストレーション+ことのは=ポエム」の略(イラ は ポ)です。
ポエケットで販売しようと思って詩画集みたいなよくわからない冊子を作ったのですが、コロナ自粛で参加できなかったので、 ....
「エピローグ」
1
最近、エルウッドは毎晩、同じ夢を見ている。そいつがまことに変な夢で、いつものように、エルウッドがジム・ビームスを一杯、引っ掛けた後で、シカゴ市鉄のそばの安アパートの煤けたベッ ....
「家が裕福で顔立ちも優れた青年が《街》におり、」とその物語は語り出される。
思い掛けない一角から起こる破裂音が年々音量と頻度を増しているこの街の中で、世代を越えて変わらない物はこの上演会だけだった ....
{引用=くたびれはてたやつらが
ざくざくとわきだしてきて
としとったたいようとあくしゅをする
わたくしは
くるい
すべてをだめにしたあとで
えりをただして
あしたにあいさつへいこう}
....
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