(一)
 
 ストーカーという言葉など存在しなかったころから、俺は陽子一筋だ。中学二年の春、同じクラスになった時からずっと。高校二年の時、文通して下さい、と手紙を書いた。思い切っ ....
頭の中に眠っていた蝉が摘出された冬
ぼくは石になった

意識は確かにあるし 五感もしっかりしている
でも
転がっている

新しい臍から注入される食事と薬
定期的に交換される下半身
 ....
ころころと
笑いながら
転がって
水平線と遊んでいた太陽が
すとん、という音だけをのこして
消えたときから
五感をなくし
闇にのまれた

どこからか
歌が聞こえる

エーテルの ....
涙を語るのは
あの流れに立つアオサギの得意とするところだ
ながれてゆく
今を
捉えようと
日がな一日立ち尽くす彼は、彼女は
ここに生き場所を求めているかもしれない
あなた、や、わたし。
 ....
見上げたとき
それは

蒼く凍えていた

凍える空が
美しい
なんて
だれが言ったのだろう

私たちは
閉じ込められ
凍えていた

閉じ込められ
凍えつづける教室で
あ ....
「あらあら、どうしたの? 健ちゃんはなーんにも悪くないからね。よしよし」
 保育園から泣いて帰ると、そう言って抱きしめてくれた。乳の匂いがした。大好きな幸恵(さちえ)の胸に抱かれて、泣きじゃくりなが ....
 薄暗い姉達の部屋で、僕はズボンとパンツを脱がされ、ただぼんやりと立っていた。
「いーい、健太はおちんちんの病気だから、今から先生達が診察してあげるからね。じっとしてるのよ、判った?」
「うん」
 ....
毎年、元日の午後七時になると、その男は現れる。
 女が、ステージでうつ伏せになるのを見計らって添い寝し、白い尻を軽く噛んだあとペニスを突き立て、激しく腰を動かす。
 激しく、激しく、動かされて ....
まるで
三十分で
いっきに大人になったみたいだったよ

疑問符そのもののような顔をした檸檬

突然
目の焦点を断ち切られたように
視界が曖昧になった
いびつな夜明け

青空の穴か ....
 お爺ちゃんも、お父さんもそうだった。
 僕たちの仕事の要諦は嘘を本当だと言い通すことだ、と言っていた。
 そんなこと小学生の僕に言うなよ。
 どこかに遺伝子の記憶があったのか、明らかに嘘と誰に ....
ノアール以外は何もない。風も吹かない。山は音という音を忘れている。
「マリンスノウみたいだね」
「そうだね、マリンスノウみたいだ」
「雪の匂いがするよ」
「そうだね、雪の匂いがするね」
 ....
おお、おお
やってくれるとは思っていたが
ここまでとは思わなかったぜ、安倍ちゃん
いかすぜ
鳥肌ものだぜ
憲法の解釈変更で集団的自衛権を行使しようとする
噴飯のお坊ちゃま

だって、僕 ....
立っていた 浅瀬のなかに
立っている 同じところに
立っているだろう 同じ顔して

流れに立つ鳥の名前は
知らない
でもそれが通常アオサギとよばれることは
知っている

彼だか 彼女 ....
おまえのアオが好きだ
そう言ったとき
どんなアオが好きなの
、と真顔でつめよられて
俺は黙ってしまった

おまえのアオだよ
、と言ったとたん
おまえのアオが
牙をむいて襲いかかってく ....
銛に射抜かれた言葉が満月のなかに跳ねている やぁ、みんな
海だ

青のなかに
たくさんの鳥だ

鳥は
多くのおまえの顔をしている
、と風は言う

風は
多くの海の顔をしている
、と鳥は言う

みんな
おれは
パプ ....
三月
守宮(やもり)は
たべる。

ゆっくり
ゆっくり
味をたしかめるように
たべる。

産まれつづける現実(うつつ)をおかずに
夢を
たべる。

くり返されてきた儀式が
 ....
am6:30起床
洗面 風呂掃除 新聞取り 妻目薬温タオル洗面 妻オムツ交換・経管栄養・薬投与・とろみぬるま湯投与・希釈酢投与・咳止め吸入・歯磨き・エステ
am11:00 pt来宅妻リハビリ
p ....
今でも憎しみの気持ちを持っている。
8年前おれたちの生活を破壊した医者に。
奴は、手術が失敗する確率は1%
はっきりそう言い切った.
だからおれたちは手術を決めた。
おまえの右前頭葉にできた ....
目の前の壁で
よちよち歩きの緑をだいて微笑んでいるのは
光だ
この先に今日が待っていることなど
このころぼくらは考えもしなかった

光は輝きを増し
緑はかくじつに明日の姿をつかみ
そし ....
私の言葉を 少しも疑わない母さんに
嘘をついてまで 行きたかった宮崎
強い日射しとフェニックスのある街
ゆったりと落ちついた街
5時間 汽車にゆられて
たどりついたあなたが住んでいる街
行 ....
いつも輝くような笑顔をうかべて
まわりのみんなに光をあたえていた
あなたが笑顔を失って8年目
あなたが口から食事を摂れなくなり
胃瘻から人工栄養の注入を受けるようになって2年目
子供たちと初 ....
月は上弦
あの子の心も
上弦

をむきかけた狼が
月を
ひとり見あげる
厳冬

しんとした音が

しん

と、漂っている月

粉雪がふりつづく
あたしが新年おめでとうと階段を登っていくと
洋ちゃんやみっちゃんが石になっていた

ふたつの石は
空けましておめでとう
と言いながらお年玉をくれた

お年玉袋の中から
ふたりより
も ....
だれが言うんでもないが
晃は一年前に死んだんだと
なんども響く声・・・・・・のようなモノ
に惹かれてここに来たけれど

来たけれど

美しさを孕むことは
僕ら男には・・・・・・孕めな ....
あなたが
死んで
産まれてから
八回目の年の瀬がきた

その少し前には
サンタが
入院先のベッドに
インドのパンツを届けた

去年、おととし、その前の年・・・・・・
二人が咲いて ....
饒舌な静寂が夜を駆け抜けるとき
一億人の思考を吹き飛ばしたAは
3Dコピーで一億人のAを創り
闘うべき赤鬼はもう
きび団子の英雄には倒すことはできない
雉も猿も犬もみんな置換されてAになって ....
私たちの希望は
まだ生きている
サンクチュアリを奪われはしたが
私たちの希望は
野蛮人の意味を調べて
退行する人たちと同じように
まだ低いところに橋のようにかかっている

突然目の焦点 ....
きこえてくるのは拳(こぶし)
吹き抜けるかぜだ
三人で掴んだ世界の頂点だ

親父は独善的に漫画の世界のテクニックを教えた
それしか知らない親父の悲しさを
俺たち兄弟は世界に出て初めて気付く ....
あなた、という山を真正面に見て
あなた、という山を直角に見る

そこが二人の
ポイントだ

あなたの仕掛けは細くしなやかで
おれの仕掛けは太く不器用だ

あなたとおれが
山立てして ....
草野大悟2(167)
タイトル カテゴリ Point 日付
陽子のベクトルは太郎を指向するのか散文(批評 ...1*14/8/11 23:03
白夜自由詩2*14/8/11 20:40
極夜自由詩5*14/8/7 20:37
凍える自由詩1*14/7/30 21:47
凍える空自由詩3*14/7/24 22:23
ナニカ散文(批評 ...014/7/22 22:32
クラブマリノス散文(批評 ...0+*14/7/17 22:31
小屋散文(批評 ...1+*14/7/13 23:01
彩雲自由詩0*14/7/13 22:06
笑えるぜ安倍ちゃん、ヒトラーかよ自由詩2*14/7/11 21:16
自由詩014/6/23 20:15
血迷ったな安倍ちゃん自由詩5*14/6/18 21:14
流れに立つ鳥自由詩1+*14/5/8 21:32
自由詩3*14/5/7 21:17
凪の夜自由詩0*14/5/5 20:24
鳥山の立つころ自由詩2*14/4/21 20:52
三月の守宮(やもり)自由詩3*14/3/20 22:30
1週間あるいは怨自由詩3*14/3/11 21:58
自由詩5*14/3/6 21:54
海の瞳自由詩0*14/3/5 22:17
二十歳(はたち)のエチュード自由詩1*14/2/24 1:19
笑顔・・・食べる自由詩2*14/1/23 21:16
粉雪の月自由詩2*14/1/13 22:29
ローリングストーンズな三歳のあたし自由詩3*14/1/5 22:02
遙かにイイ自由詩0*14/1/2 23:45
年の瀬自由詩1*13/12/27 21:13
ミルキーブルーのVanity自由詩1*13/12/15 22:36
時雨虹(しぐれにじ)自由詩1*13/12/12 22:35
拳(こぶし)自由詩2*13/12/3 22:19
山立て自由詩1*13/11/28 19:54

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