傷ついた心は、高値の付く宝石
伝えるすべを持つ者たちが
言葉や音、像に添えて
ショーウィンドーに飾る

傷ついた心は、ため込まれた負債
精算できぬ者たちが
なけなしの硬貨と引き換えに
 ....
見るものすべてが嫌になり、
瞼を閉ざす闇の中。
沈黙に勝る音楽はなく、
肌を刺す冷気よりも
痺れさせてくれる抱擁はない。

゛お前なんか゛と笑う眼差しの剃刀が、
 私という果実を切り刻む ....
 人身事故で電車が遅れると、会社帰りにそれで足止め食らったりすると、迷惑だなあと思ってしまう。そういう感想に対し、日本人は冷たくなった、自殺した人が可哀そうだ、という声が上がる。「可哀そう」という言葉 .... ぼんやりと立っている
つり革に掴まって 
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある

ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの ....
首の後ろ辺りから
広がっていく空白と

瞼の裏を掠め過ぎる
拳の記憶

喜びを道連れにして
悲しみが死んでいく

心が死を擬態するのは、宿主へのいたわり
仕組まれた機構に過ぎないと ....
この峠の一部になれたら
きっと、深く眠れる
死んだことも忘れるくらい
安らかに

四季に逆らわず
空を巡る風

淀みに濁らず
海に還る水

峠の道を私は歩く
積んでは崩すを
 ....
食べ過ぎて気持ち悪いのに
さらに胃に詰め込む
なんなんだろう

空っぽなのは消化器じゃない
もっと別のどこかにあると
解ってはいるのに

抜けるほど青い空の下で
窮屈に歩く
私を閉 ....
美しく輝く
掌の中のガラス玉
大理石の床に叩きつけたら
この星に息づく命と
同じだけの数の破片となって
飛び散った

思い出で繕った柔らかい屍衣に
心地よくくるまっていたら
裏地から ....
膿を垂れ流す虫歯が疼き
よく眠れない夜が明け
飯も食わずに布団の中で
丸まったまま

飛び去りかけた夢を
手繰り寄せようと目をつむるが
縄と編まれたお日様の光を
首に掛けられ
新たな ....
結局、生きるしかないのだ
という諦めの言葉が
泡となって水面に浮かび、弾けた。
そう、言葉はいつも弾けて
行方知れずになる

かつては
胸の奥の熱い火が
水のような心を沸かせた

 ....
言ってはいけない言葉がある
振り子のように揺れている
あなたの胸の内側を

言ってはいけない言葉がある
渇いた喉を塞いでる
吐き出されるのを待ちながら

想いは蜘蛛の糸
あなたは捕ら ....
叫ぶように笑う 君の癖に触れて
押さえつけられた 涙の気配に気づく

いつもはしゃいで 明るい君がふと見せる
深い影の中 手を伸ばしてみたくなる

悲しい記憶を乗り越えてく
空を飛ぶより ....
銅、リチウム、カリウム
これらの金属は
ある種の状態で
炎に炙れば燃え盛るが

緑、紅色、薄紫という風に
それぞれが、違った色合いの
火を吐き出す

情熱が
その上昇気流が
人の ....
1

晩夏の夜、郊外。
棟を連ねる家々の窓明かりが
街路に光を落としている

そこを、通り過ぎる人影が一つ
彼はうつむきながら
こんなことを考えている

…人は互いに繋がりあって ....
「なぜ人は誰かを傷つけるの?」
 と、娘が問いかけてきた。それは、私が常日頃胸に抱き続けている疑問でもあった。

「それは、自分が傷つくことを恐れているからだよ」と、私は答えた。
 春の ....
 僕は歳をとった。

 もちろん生きとし生けるものすべては、常に老いているわけだけれど、ある時から、肉体はそれ以上成長することをやめ、ゆっくりと衰え始める。空に放ったボールが高く高くあがりながら、 ....
私を、ここに居させてほしい。
ここが、好きなわけではないけど、
一番手近な場所だから。

何者でもない私を
どうか、踏みつけないでほしい
権利も義務も見えない目で
ただ、空を見上げている ....
赤は一番派手な色
身体の内をめぐる色
目立たぬように歩みを運んでも
一皮むけば飛び散る血潮
命の滾る熱の色

だから、
冷たい振りなどするな
表情を捨てた仮面を被るな
撫でれば悶え、 ....
いつか
そのうえで踊るため
香ばしく腐りゆく土を
踏み固める

汚れていく裸足が
大人になっていくようで
誇らしい

肌に刺さるほど近い景色を
押しのけると、それは霞みがかり、
 ....
覚束ない手で握った
透明な定規を
まっさらな星の肌にあてて
まだオムツを付けた子供たちは
ぶつぶつ言いながら
線を引く

柔らかく上下する面を
よちよち歩きを覚えた足が
飛ぶ暇も ....
時は贈り物だ
どんなに惨めで
苦しい時であっても

なにやら知った風な顔をして
そう言い切るのは、
愚かなのかもしれないが

小さな無人島に立って
ヤシによく似た一本の木から
毎夕 ....
壁紙が剥がれ落ちていく
鱗のように、枯葉のように
ポロポロ、ポロポロと
私は何になりたかったんだろう

その答えは
崩れゆく壁紙の向こうに
隠れているのかも

男はじっと立ちつくして ....
小高い丘に
鉄塔が立っている

周辺の家々に
電気を送る為なのだろうが
今はもう使われていない

住む人も絶えた
この地域には
もういらなくなった

このあたりに
ポツリポツリ ....
ポコポコ、ポコポコ

草なびく大地のどこかから
打ち鳴らす太鼓の響きが
聞こえてくる

訪れる春の気配に小躍りした若木が
己を縛る土のくびきから引き抜いた足で
刻むステップのように、軽 ....
目覚めの薬

始めたくない一日
ベッドの脇のギター

黙らせた目覚まし時計から
バトンタッチされたテレキャスター
僕にやる気を出させようと
甘い声で囁きかける

僕は布団の中から手 ....
そのビー玉の中に
小鳥が住んでるよって言ったら
少女は指で弾くのをやめて、
目を細め、陽の光に透かして
覗き込むようになった

そのボールの中に
昔亡くした筈の子犬が
隠れてるよって言 ....
優しさには牙をむき、
肩にかけてくれた毛布を切り刻み
寒い風の中怖い顔して笑う君が
ノイズ交じりのブラウン管に
白黒で映る

苦しみに
飽きることはない?
野の獣となった君の心 ....
散らかった部屋を掃除したら
埃を被ったガラクタの下から
顔を出す思い出が一杯

浜辺に打ち上げられた
ペットボトルの溺死体みたいに
塩辛い記憶を吐き出した

僕は年老いた若者
時の目 ....
沢山の偽物をつぎはぎして
自分という人形を作り上げた
糸と針で縫い合わせた、
建前と奇麗事のパッチワークを

ああ、
何も変わっていない
疑いを知らない、無垢な心を
この世界に差し出し ....
一人、
部屋にうずくまりながら
深い海溝に墜落していく
そこには冷たい水のかわりに
闇だけがある

孤独、果てしない孤独
膨れ上がる世界と
縮んでいく自分

エゴに押し潰される自画 ....
まーつん(252)
タイトル カテゴリ Point 日付
共感の宝石自由詩424/3/16 10:23
切れ長の目に生まれたかった自由詩4*24/3/10 23:08
人身事故散文(批評 ...2+*24/2/25 23:55
つり革自由詩4*24/2/23 11:35
擬態自由詩5*24/2/18 22:13
峠道自由詩3*24/2/18 11:37
石で出来た卵自由詩324/2/12 23:48
愛と殺意自由詩424/2/12 10:49
ダンシング・フィンガーズ自由詩023/2/18 12:36
自由詩1*22/12/2 18:12
言ってはいけない言葉自由詩322/10/8 22:28
空を飛ぶより難しく自由詩122/8/29 3:59
炎と花の色自由詩4*20/8/10 11:05
血栓(1)自由詩020/8/10 9:58
ある疑問散文(批評 ...120/5/24 13:12
ボール散文(批評 ...120/3/22 10:07
私の居所自由詩320/3/21 8:56
熱の色自由詩120/1/19 10:43
踏み固める自由詩419/2/23 7:24
星の鼓動自由詩618/6/4 11:51
時の果実をかじる夜自由詩3*18/5/6 13:29
壁紙自由詩6*18/4/13 11:04
鉄塔自由詩5*18/4/4 11:25
春の太鼓自由詩6*18/3/25 20:56
目覚めの薬自由詩3*18/2/11 16:39
優しい殺し屋自由詩318/1/29 21:23
不幸の天才自由詩218/1/21 19:36
千の色に染まる水自由詩318/1/21 14:37
人形だって泣けるんだ自由詩218/1/3 21:38
空き缶の自画像自由詩717/12/30 9:21

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