つり革
まーつん

ぼんやりと立っている
つり革に掴まって 
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある

ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの汗の名残がある

鉄の車輪がガタゴト歌う
暖かい椅子は眠りを誘う
栞を挟んだ記憶のページが
瞼の陰で捲れだす

無数の人の沈黙に
甲虫が恋しくなる
指先に乗せて
無言で語り合いたい

素敵な出会いを思わせぶる
小憎らしい春が来ることを






自由詩 つり革 Copyright まーつん 2024-02-23 11:35:18
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