喰うか喰われるか
皮まで気持ちをかみしめて
キミハクエドからきしぼくは
暗い傀儡 インドの残像
九字を切っては籤を引き
舵を切っては網を引く
きーりきーり舞ったら荷を縫って
カーリカーリ ....
桜が咲いているのを最初に見かけた日
あくる日にはいつも激しい風が吹く
思い起こすと毎年そうだった気がする

咲いたばかりの桜は見かけによらず強情で
千切れそうで千切れず
散りそうでも散らな ....
曇天のいろむらに
絵筆をあらう少年の
かなしい青を見た
あなたの
深い行間の谷の底
眼裏に熱いわななきを拾う


ゴミ箱の中身を外に捨て
空になったそれで世界をすくいとる
だがわた ....
ああ春霞 
それともかすみ目か

大切なのは自分のまぼろしだ
それが大きななにかを映し出した
鏡の砕けた欠片だとしても

預言者はまぼろし中で真実を見る
多くの人は現実にまぼろしを重ね ....
帰り支度がすんだなら
明日にでも行くがいい
旅する天使はおしゃべりで
その上酒癖もわるいときてる
翼ある者は去るがいい
おまえたちの羽根のほとんどは空気
膨らんだ胸の中身さえ
絡みついた ....
道標のように立っている樹の根元
いつかの果実の残り香があった
美しい錯乱の季節
千切られたページのざわめき

枯れ果てた古井戸から
ことばは這い上がることができなかった
月の裳裾に纏わり ....
古い春から拝借した日差し
駐車場に広がるさかしまの空
壁の青い文字に突き当たり
瀕死の瞳が溺れている
手繰った紐の先 括られた死体
行方知れずのわたしの姉と
よく似た人形 よく似た季節
 ....
{引用=彼の地を前に}
疲労不調と思えたものを常態と受け入れる
歯車は銀光を放ち記憶は遠近を欠き始め
軟着陸を模索しては願うばかりと思い知る



{引用=春}
光と霞に中り
出会い ....
雪どけ水が朝の光を跳ね返し
まなこいっぱい燃えている
つめたい景色の塊は
脳の面を滑落し
グラスの中の海のよう
甘くあいまいに渦巻いて
寄せては返す 空白の口形
黒点のカラス
おのれを ....
狐雨みたいに
吹雪の中から日が差して
カラスかと思えば
カササギが
白く眩んだ雪原に
モザイクの影をひとつ
長い尾羽
跳ねる指先
氷の粒はからだを奏で
血は渦巻いて管を響かせる
う ....
早贄みたいに残された
だれかの祈り
吹雪きの中
目くばせする
硝子のような時を隔てて

木の実を爪繰る
指先に
小鳥の心音

あなたの長い舌が
耳の奥まで入って来ると
つめたい ....
舌から舌へ
鈴はころがった
光は溶けた
音は影のよう黙っていた
あなたは三度 
わたしは二度
相槌みたいにまばたきして

天蓋がはぎ取られると
屈葬にされた白骨が二体
愛は愛という ....
冷気を嗅いで手繰り寄せる
黒い焔 死せる舞踊者
太陽との距離を測りながら
夢を滾らせる
からだは形を逃れ
こころは殻を得た
重なり溶け合う
不可分の同一
全感覚でまぐわうように
世界 ....
裾に吹雪をあしらった
むらのない雲をまとい
忽然と 瞳に降り立った
白き盲者 太陽は
この網膜を滾らせて
まぶたには収まりきらず

毛糸の手袋にくっついた
固い玉状の雪の欠片が
あた ....
かわいた月は夕間暮れ
水気をとりもどす
井戸底に 灯る骨
白く鳴り
つめたく響く 唇は
もう血肉を夢見ない

かつては跳ねる想い
着物を乱し帯を解き
胚芽から
鋸状の風が渦を巻いて ....
月のとまった樹の根元
眠る蛇の
耳の彼方に凍りつく
川の音 ふるえる
齧歯類のような
尖った痛みを胃の腑に飼って

雪をのせた朱い実の房
星座をなぞる指の匂い
焼べられた記憶
せつ ....
赤く途切れたブランコ
見下ろしている厚化粧の空
つけまみたいなドローンが落ちた
鳥だったころを忘れ
祈りは地べたを這いまわる
時代のツールが暴いたものは
スキャンダルでも陰謀でもなく
ぼ ....
やっとのことで傍まで来た
ああ熱情
   文字すら吐息まじり

すぐに結露して
景色を曇らせる
一瞬見えた地吹雪の荒野

温度差はどれほどか
そのまなざし
大きなはめ殺しの窓

 ....
樹 死者へこぼす涙

残さずことばを散らし

ぬれて光る 生の裏地

知ることで目隠しされ

唇で唇を封じるように

傷口から遠く

白紙は音を吸い

飛び去ったかたことを ....
実としずくは出会い
抱擁し
いま互いを手放した

実は朱く燃え
しずくは銀光を放ち
確かに交じり合い
なにかを残し
なにもかも忘れ

雨はみぞれに変わり
鼻孔に冬が立つ

も ....
チャコールグレーの小さな蛾
狂ったように暴れてた
冷たいアスファルト背に
おしみなくしぶとく力なく
さかしまの日差しに浮かれ
うなされて
生死の境を針と糸
縫うように縫うように
浮いて ....
こどもの声が転げ回っている
かわいいようで
自分の手じゃとどかない
こころの裏地を引っ張られる
いやな感じもして
微笑みの抜け殻が
靴音をひびかせた
日差しが絡まって睫毛は重く
広い駐 ....
雲が雨へ
悲しみが涙へとほどけるように
もつれむすぼれた紐状の時感覚
遠近法と陰影を施されただけの
一枚の絵の中の記憶の構図と感情の色彩
それらすべてが
ことばへほどけるなら
数多の矛盾 ....
濡れそぼつすずめらが
低い枝から隣家の庭先へ消えた時
わたしは「あわれ」を見なかった
ただチュンにチュンを重ね
チュンの間と強弱で言い尽くす 
すずめらの韻律は人より力強く
雨音と斬り結び ....
交じり合う水の響き文字にはなれず
木陰に隠れ 泣く者もなく憎まれて
契りもけむる朝 嗄らす声すらなく

爆ぜる肌 墨でなぞった夜の谷
差すべに月になじむことなく
ゆがむ静寂に 息を重ねて
 ....
かつて太陽目がけて投げ上げられた一振りの剣が
この日祭りでにぎわう往来の真中へ落ちて来た
剣がひとりの人を貫いて固い地面に垂直に突き刺さると
群衆は一瞬凍り付き すぐにその場から逃げ出そうとした ....
筆を洗ったように
空は濁っていた
積もりに積もったことば
こころはもう見つからない
遠い昔に死んだ
自分のようななにか
滲んだ絵具
見分けのつかない瞳から
こぼれ出す 記憶の澱

 ....
太陽の剃刀は陰部からひと脈の血を匂わせた
人肌の季節を占って結露した光の置き場に困り果て
まだ暗い田畑で骨を拾う
骨は拾われる度に肥え月や星の声を濁らせた
他者の思考の中で溶かされる甘い小舟か ....
こらえ切れずこぼれ出す
涙のように 雨は

地を打つ哀歌
屋根に踊る陽気なリズム

暗い雲から紡がれ
眼差し次第で宝石よりも燃え

明日は乾く水たまりに
つなぎ蜻蛉が卵を下ろす
 ....
麒麟の影で琥珀を拾う
差し出す耳に
甘く崩れ
世界は暗転した

蝉の声を運ぶ蟻の群れ
記号になりかけの{ルビ蜻蛉=とんぼ}の群れ


懐中時計を開ける度
動き出す舞台
ことばを纏 ....
ただのみきや(1033)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
卵から始まるはな詩文書グループ15/6/13
投稿作品
回復論 兆し殺し自由詩325/5/11 12:10
鬼女近影自由詩5*25/5/3 16:15
落涙自由詩4*25/4/26 10:26
古い古い一冊の雑誌のような人にわたしはなりたい自由詩5*25/4/20 12:25
ツグミに想う自由詩8*25/4/12 11:02
鏡の中の睦言たち自由詩6*25/3/30 13:31
春が殺しに来る自由詩3*25/3/19 10:41
べつになにも自由詩2*25/3/12 17:11
黒点自由詩6*25/3/2 11:43
愚者白紙紀行自由詩6*25/2/24 12:34
祝祭の扉自由詩4*25/2/10 9:37
異端者の鞄自由詩4*25/2/1 16:44
冬の樹霊自由詩4*25/1/25 11:41
そしてわたしの目は自由詩3*25/1/18 17:08
月酔歌自由詩6*25/1/12 14:48
巳年酔夢自由詩3*25/1/1 15:16
情報ジャンキー自由詩5*24/12/22 15:31
恋慕自由詩7*24/12/7 9:46
泥炭地自由詩3*24/12/1 11:01
ナナカマド自由詩4*24/11/20 17:31
泥と灰の聖遺物自由詩3*24/11/10 11:38
ことばの肢体自由詩6*24/10/27 12:44
一筆書きのたましいは自由詩6*24/10/20 11:48
自由詩6*24/10/14 12:59
棚機つ女と姦通す自由詩4*24/10/6 14:31
影か揚羽か自由詩3*24/9/29 15:05
自由詩4*24/9/15 14:51
自由詩4*24/9/8 15:45
落とし仔自由詩3*24/9/4 16:09
別鏡自由詩3*24/8/25 13:23

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