腰のまがった老人はめったに見なくなった
まがった腰で
ヨッコラショと 
風呂敷をしょった爺ちゃん婆ちゃんは
わたしが子供のころの爺ちゃん婆ちゃんだ
農村や漁村では今だって
腰のまがった老人 ....
   {引用=わたしの正気は陰鬱だが
わたしの狂気は陽気な歌
木魚バンドネオン炭酸水
      (証城寺住職 囃子ダダイ)}


証城寺の性悪少女

ひどくあくどいのだ
そのだんま ....
光の傾斜のよわいめまい

いななきも止んだ朝の膨らみ
秋は秋と重なって遠近を失くしながら
凧のように {ルビ空=くう}の{ルビ空=くう} 淡く燃え


無限の、 矛盾の、 
存在の、 ....
週の半ばを過ぎると背中が強張りだす
眩しい声が
ほら すぐそこ
地平を跨いだ辺り
小さなキックスケーターが往くよ
時の車輪はゆっくり素早く 
ゆらゆら揺れて 
蕾 花 あっという間に
 ....
ボウズあたまの中学生が
ちらり時を盗み見た
放射冷却された定規の上 早足で
あからさまな隠し事がひらひら
心のタッチパネル 見えない蝶が



《DANSI:2016年10月1日》
 青い看板に白い文字で
 
   ビジネス
   カジュアル
   フォーマル

 朝のだだっ広い駐車場

 少しくすんだ 慎みの季節が
 春に巣立った雛たちの 瞳にも
 映って
 ....
赤い目をしていま
なにを読み
どこを跳ねるのか


あなたは謀った
{ルビ和邇=ワニ}たちの背を戯れ跳ねながら
目指すところへ近づいた時(それは幻想だった)
傲りと嘲りが
鈴のように ....
同じ道を歩いた
くり返し歩き
くり返し問い
くり返し答え
水の写経のようになにも
こころの所作だけが
ただ――


くり返し祈った
石の中のロザリオ
沈黙の塵は満ちて
尚も空白 ....
――雲が早い
と思えば雨か
秋らしい振舞に
朝からおまえと飲みたくなる
なすがまま
なされるがまま踊る木々
つめたい雫
鼻先に最初のひとつを感じた蛇が
暗い岩間にすべり込み
ただじっ ....
雨やわらかに冷たく
朝を満たし
しっとりと
傷んだ葉を慈しむように
離別と巡りへの
仕度を促しながら
触れる小鳥の眼差し
の奥に隠された
語らない智彗の静けさが
寄り添うように
映 ....
風は奏で 
光は描く
ハリエンジュのさざめきに
まなざしは戸惑い
優雅に失速する
水面に解ける止まり木
鳥は魚を続けた
裏腹に
なめらかに
時間には抜け道がある
探しても見つからな ....
朝 丘珠空港へ迎えに行く
プロペラ機は八月の空をけたたましく滑り降り
ゲートをくぐる人々は無事届けられた
天からのギフトのように
トランクとリュックを下げた若者を見つけ
片言みたいに 荷物を ....
カーテンの向こう暑くなると告げて
にわかに泣きだすそら

すぐに澄み
そこなしの青の静けさへ
置き忘れられた幾筋かの羽毛は
朝へと生まれ落ちた夢たちの骸
季節の手妻は継目も見せず
ゆ ....
引き寄せて歌の精よ耳元に
オンとイのほつれ目
楼蘭の砂から掘り起こされた女の髪のよう
忘れられたイトが絡まった
黴臭い沈黙から ふと
夜は陽炎のようにゆらめき立って
歪み捻じれたこの道を筆 ....
夏の終わり
などと書き出して
景色を眺めまわし
残りの年月を数え切れたかのように
何もせず
何も求めず
人に倦み
風の仕草を見つめては
瞑り 
欹て
ぼんやりとまた開き
終わる夏 ....
山のむこうゆっくりと橙は灰
日暮れて暗く やさぐれて
苦楽の果てに捨てられた
途方に暮れてホウホウ鳴いて
ケルトの老婆アイヌの老婆
とろとろ炙る枯れた掌に
あまいこどものあたまのいたみ
 ....
タツノオトシゴよ 台風に乗って疾駆せよ
まだ見ぬ父を夢に見て
ゴッドジーラは堕落しない正義の味方などに決して
熱線を吐いて世界を滅ぼせ


タツノオトシゴよ 敗北を振るい落せ
舌先の魔術 ....
一枚の写真を見せられた
それは遠い昔図書館の一番厚い本にこっそり挟んだ手紙のように
言葉にできない秘密を乗せたまま沈んだ船の位置を示すブイのように
暗い忘却の地の底へ一条の光の震える糸の繋がりを ....
花よ
いま震えている花よ
見えない風の手が怯えさせるか
それともやさしい愛撫に


花よ
人も同じ
誰かの心の中 将来のこと
見えないものに心を乱されて


わたしたちは少し似 ....
なみなみと注がれた盃に
映る
かつて訪れたもの
掴むことも消すこともできず

ゆらり ゆらして
とけることもかけることもない

見つめれば朧
目を閉じればありありと

油絵の月の ....
嘆息の理由なら他にある
豊満な月に耐えきれず包み紙を脱がせただろう
子供みたいにあちこち汚して
今日がその日ならと狼みたいに祈ったね
誰かのせいだと言うのなら
それはわたしのせい(玄関前の犬 ....
遠い夏
街で見かけた少女
名前も
どこに住んでいるかも
知らないで
ただ精一杯
目で追うことしかできずに
それっきり
夢で逢えたらと願いながら
叶う事もなく


今日(四十年後 ....
ものごとを特別にするのは人の心だ
ある日を他の日と区別するのも
季節と年月
朝と夜
何処から来て何処へ往くのか定かではない
時の流れは顔も姿も見分けられないが
確実に摩耗させ消し去ることを ....
風が聞き耳を立てている
囀りは力なく水滴に跳ねて
その術を忘れたかのよう
石は本来の姿を取り戻した
木の根元をのそのそシデムシが
葬式帰りの太った男のように歩く
異変 ではなく
変わらな ....
遠く 花火の音がする
――美しい闇の舞台
  光たちの素早い集団行動
ここからは見えないけど
どこかで
手をつなぎ
見上げている男女がいて
はしゃいだり
肩車されたり
こどもたちもい ....
わたしの中の赤ん坊がむずかり出した

わたしの中の幼児が仰向けになって手足をバタバタ

わたしの中の小学生が精一杯下品に悪口を言う

わたしの中の少年Aがナイフをチラつかせ睨む

わた ....
  温雨


雨に洗われた
針葉樹の隙間から顔を出し
ヒヨドリは不思議そうに首を傾げる
蟻の休日
うつろな目をした夏






        一緒くた


    ....
古いガラスのように蒼ざめて鳴り響く

 ――あれは なに?


       掌の海から跳ねる両目を失くした魚
           それは
テノヒラ 温かすぎる子供のテノヒラで
   ....
          草葉に風の足音
夏の光の深い底で焼かれる虫たち
夜に置き忘れられた
艶やかな目に乾いた夢が映り込む
生と死の歯車が柔らかく噛み合って
素早く回転する
  濃厚で豊満な匂 ....
ティーポットにそっと忍ばせる
その秘密が彼女には宝石すぎたから
一番上等なカップ&ソーサーでもてなしながら
待っている
誰かが口火を切るのを

「あらご存じなの?

頬は上気して 
 ....
ただのみきや(987)
タイトル カテゴリ Point 日付
爺婆に捧ぐ自由詩15*16/10/12 21:01
証城寺の性悪少女自由詩9*16/10/8 21:40
詩/代償としての自由詩14*16/10/5 22:31
キックスケーター自由詩3*16/10/5 22:16
DANSI自由詩3*16/10/1 20:27
スーツ自由詩12*16/9/28 20:33
うさぎのダンス自由詩11*16/9/24 22:01
ホルン自由詩13*16/9/21 21:38
敬老の日に何ら敬うこともなく自由詩8+*16/9/19 10:55
つめたい感傷自由詩5*16/9/17 23:17
恋のようなもの自由詩10*16/9/14 21:18
アウトリーチ自由詩6*16/9/10 18:31
くすねた財宝自由詩9*16/9/7 23:43
呪術師の末裔自由詩9*16/9/4 16:55
残余の火自由詩6*16/8/31 20:42
夜火自由詩8*16/8/27 20:13
落とし子の歌自由詩7*16/8/24 23:41
ニュープラン自由詩5*16/8/21 20:39
野の花自由詩8*16/8/20 15:22
闇と盃自由詩6*16/8/17 21:03
氷の散弾にブルーハワイ自由詩11*16/8/13 22:04
少年少女自由詩9*16/8/10 20:08
推定無題自由詩8*16/8/7 23:31
なにかが見ている自由詩8*16/8/6 21:43
花火自由詩9*16/8/3 19:26
憂鬱なマトリョーシカ自由詩7*16/7/30 21:00
夏と雨の短詩・五編自由詩11*16/7/27 18:53
絶望の希望はただ乾いたピストルの音自由詩8*16/7/23 23:10
火葬詩転生自由詩14*16/7/20 20:47
ここだけの話だけど自由詩3*16/7/16 20:59

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