地面に捨てられた
おもちゃ花火の燃えがらは思い出となり
やがて
夏の命も尽きて
土に帰っていく
雑草に埋もれかけながら
雨の無い長い夜をすごした日々は終わり
一つ二つ ....
そっと触れてみた
あなたの手の暖かさに
涙がこぼれた
眠れない夜
無機質な光を放つだけの月にさえ
すがるように 祈りを捧げる
どうか、どうか、
この人の命の灯をいつまでも消さな ....
夕御飯の片付けをしていたら
最近歩くことを覚えた 二十ヶ月の娘が
「あんよ、あんよ」と言いながら 手を伸ばしてきた
ああ
たとえどんな重要なことをしていようと
こんなにも透き通った瞳が訴 ....
葉は、枝があるから葉であり
枝は、幹があるから枝であり
幹は、根があるから幹であり
それらおのおのがつながりあい、初めて
歓びのうたを風に囁く
ひとりの木
枝葉の手のひら達を
....
若くして世を去った歌姫よ
あなたの面影が今も振り続ける
夢の旗
透きとおったその手と
肌色のこの手で
握りしめ
精一杯、振り続けよう
一つになった僕等の魂は輝きを増し ....
あたしに咲く
ムラサキノハナ
いいかげんなやさしさと
今だけのしあわせと
信じることはいいことです
だけど
不安だらけの穴ポコだらけの
ほんとのあたしのこころ ....
彼岸花 今年も此処に出でますと細き緑の指を以て告ぐ
人の手が触れた花 まだ触れぬ花 被子植物の性器偏愛
台風の朝にも咲くべき朝顔は咲かねばならぬ咲くことは出来る
ほろほろの萩の葉 ....
届かない事は
十分知っている
届けられない事も
十分理解している
しかし…
心が君を思い出し
君への想いや…
君へ伝えたい事を…
万の言葉に紡ぎだす
溢れだし
止まろうとし ....
心の中のゴミを掃く
ざぁ、ざぁ、という
あの音を聴け
塵一つ無くなった心の中の
真空の庭に
ひかりの鳩が降りてくる
そうしてひかりの{ルビ嘴くちばし}は
開き
....
追憶の
夏は幾重に
折りたたまん
遠花火
ひとつふたつと
過去があり
朱に染まり
空を制覇す
きみとぼく
抜け殻が
抜け殻を生み
夢さめぬ
この ....
わたしの居場所
わたしの部屋
わたしの寝息
ここなんだ
この位置なんだ!
今はっきりと判った
ほかとは全く違う 感覚
ぴったりと
わたし、置き物になったみたい ....
この胸の中に
たくさんの海を隠している
{引用=
波のしじまに
アオウミガメ
置き去りのニケ
一粒のあぶく
}
七つの海、というけれど
{ルビ境界=くぎり}と ....
土手道あるくと
草いきれ
生きとし生ける
名もなき命
あぜ道あるくと
緑の一面
稲穂ももうすぐ
あたまを下げる
あるく足取り
太陽のもと
呼吸とともに
あるくリズ ....
心臓の音が聞こえる
満員の観客席が静まりかえり
演技を見守る
終了十秒前を知らせるブザーが鳴り
最後のタンブリングを駆ける
響き渡る着地の音
フィニッシュを決めた両手は
拳を握り ....
鳴るように
色付いて
はばたくように
ふれあう
それは
ひどく
不器用な鳥たちが
抱きあい
落下する 夕暮れ
愛
私が人生を憎むとしても
人生を愛するとしても
君が必要だ
信仰
確かに私は凡人だ
しかし信仰を持っていることについては
誇りを持ってい ....
下(お)りるべき
ところに下りる
その日まで
まだ空を飛んでる
あま雲
長い時間がつくった
岩の固まり、山のもようだった
それはとても静かな時間で、
隣にいる人が誰だったか、ふとわからなくなるくらいの
年月の詰まったギザギザ
波の穏やかな水面のまん中にあ ....
木陰に置かれたこがねの車輪が
午後を静かに染めている
蒼の扉の前で躊躇し
坂の下の影を振り返る
稲妻が生まれる直前に
すべての曇は止まっている
階段を見上げる蒼い傘 ....
何かが舞っている
揚羽蝶だ
ひらひら
ひらひら
眺めてるうちに
僕も飛べるような
そんな気がしてきた
ほら!
僕の羽根だって
青空を反射して
こんなにも輝いている
....
銀色だった空
最初に掲げた夢を 恥ずかし気もなく今も話せる
君は平気な顔で 大口を叩いて笑ってみせる
それがいつからか 自分に課せられた使命なんだって
自分が成すべきことを いつも分かって ....
草野心平さんの蛙の詩を読み
古い本を閉じた後
夜の散歩へと、家の門を出た
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ
がわがわがわ ....
小さき花のテレジアは
修道院の姉妹等の
冷たい目線が心に刺さり
獄中で鎖に繋がれた
ジャンヌ・ダルクに自らを重ねる
「風の家」に住む井上神父は
老いた体に嘆きつつ
在り ....
無常の大河を上ろう
わたしは水面で止って
大河の流れのほうが下りているかのように
ゆっくりと黄金の大河を上っていく
わたしはわたしの源流をさかのぼり
秘蔵の宝を探し当て
きっと歓喜にひたる ....
つきぬける空の青さにたえかねてアゲハの羽の黒を目で追う
向日葵の迷路で迷っていたいのに背がのびすぎて出口が見えた
けだるさの中の憂いに抱かれようサラが歌うはサマータイムか
....
あなたへ直線をひけないので
円をかく
今日も円をかく
たとえば 光
たとえば 風
たとえば 涙
たとえられないものたちを
うたいつづけるものたちが
たとえる 光
それが 歌
石ころひとつ置いてきた
あなたの庭に
あなたがいないあいだに
そっと
昨日もひとつ置いてきた
一昨日もひとつ置いてきた
その前の日も置いてきた
どこにでもある ....
叶えたい願いもなくて
与えられたものを持て余す心もなくて
それでも辛い思いだけはしたくなくて
君は心を伏せた
自分の力では
どうしたらいいかわからなくて
もう何もかも嫌で助けすら求めた ....
私たちの身体を、何に喩えようか
それは、壺のようなものだ
そして私たちの心は、そこに収められた光
神は陶工となって、今日も壺つくりに精を出す
午後の陽射しが差し込む、埃っぽい作業場の一 ....
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