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今夜わたしは玉葱を刻む
包丁の切れ味は鈍いが
こんな夜にはちょうどいい
指先と玉葱と踊る包丁
それだけを見つめ、不器用に
....
あれは空だろうか
それとも海だろうか
わたしが欲しかったのは
あの青だったのだ
体中の骨を関節を筋肉を
すべてを伸ばし
掴もうとす ....
木々は裸に剥かれ冷たい風に
枝先を震わせている
白いベンチは錆ついて
今はだれも座るものもない
緑の葉が深呼吸を繰り返す
....
『ママは怒ると頭からしょっかくが生える』
と姪が言いだした。
『しょっかく?』
思わず聞き返すと神妙な顔をしてうなずく。
....
米を研ぐ
それは繰り返される日々の儀式
手のひらにあたる米粒はかたく
米どうしがぶつかりあい
じゃっじゃと音をたてあう
このかたいひと粒ひと粒 ....
薄暗い台所で
小さなボールを抱え
温めた牛乳を昔ながらの泡立て器で
けんめいに泡立てる
しゅんしゅんしゅんと薬缶が
今にも ....
ただの水じゃないかって?
まったくちがうよ、
いや炭酸かどうかじゃなくて
このボトルの泡たちは宇宙の星なんだ
だからこの泡たちを飲み干して
....
不機嫌なジャングルジムに傘さして水たまりにジャンプする夏
たしかです不確かなのはたしかです雨粒ほどにたしかなのです
雨粒をあつめて海をつくり ....
カナカナと遠いどこかで
かなしげに、
啼く声を聴きながら
今日という日を
麦茶漬けで締めくくる
さらさらとなんでもない事のよう ....
風見鶏、青磁のそらにはばたけば南へ向かいひたすらに飛ぶ
あいうえおあなたにどれを贈ろうか曲がりくねったひらがな愛し
過ぎてゆく明日が今日を追い越 ....
木枯らしがいろどり集めさらいます頬を伝うは無色な涙
秋だから人恋しくて鍋に浮く豆腐のようにゆらいで誘う
街中をクレヨンで塗り準備する赤もいいけどここは黄色で
....
生まれたね
やさしい手で研がれ
水をたっぷり
ふっくらつやつやと
今日は卵にしようか
それとも納豆 ....
なんと醜いものだろう
ただの肉塊であったなら
赦されたものを
このなかには
潜み蠢くものがある
....
交わらない
レールのようなもので
いいのです
どこまでも平行線
おなじ景色を観て
それぞれの思いがあ ....
泳ぐのならば
身を切るような
水のなか
冷たかろう
痛かろう
けれどきっと温かい
....
夏をたたむ
両手でしわをのばし
ていねいに
色濃い影をおとした夏も
洗濯され、たたまれると
頼りないほど薄っぺらだ
....
紙を折り色とりどりに祈ります三角のかどはぴんとして
一膳の箸のすがたも美しく背筋を伸ばす五人のしもべ
夜更けすぎ昨日を連れて散歩する買って帰ろうコンビニ ....
薄縹の空のした浜辺をひとり歩く
潮の香りと眠りの匂い
拾った貝に耳をあてれば
なつかしいひとの声
「元気かい」
....
そのひとは俯くことをせず
まっすぐに前をみていた
履いているジーンズはうす汚れ
家路をいそぐ人々が乗る電車の中
ぽっかりとあいた空間
....
秋風に頬を染めあげ吾亦紅 小首をかしげあなたを呼んだ
かくれよう さぁかくれよう、さみしさがやってくるまえ眠りのなかへ
疲れたと膝を抱えるきみのそば あしたのそらの尻尾をつか ....
あつい雲に夜空は覆われ
月の光がとどきません
それでも夜空をみあげ
かすかな光を探すのです
愛を謡う千の夜がありました
....
焦げつくほどの灼熱の道
このまま歩いて行けるだろうか
じりじりと焼かれ続け
息絶えてしまうのではなかろうか
あぁ、それでも
....
一日の始まりに洗濯をする
きのうの下着やタオルを
まっさらにして天日に干す
暑い暑いといいながら
熱風のような空気の中で
....
わたしのなかに
雨がふる
あなたのなかに
雨がふる
さらさらと
しとしとと
....
濡れて花 あざやかに
なびく風 匂い立つ
雨そそぎ しめやかに
夏を待つ 水無月の
その色は 深く濃く
ひかりの雨 纏う ....
カランと氷が泣いたなら
グラスの水滴なぞります
なにが足りずに欠けるのか
なにを足せば満ちるのか
欠けた夜空の三日月 ....
つるりとした
おんなでいたい
煮干しのように出汁がでても
干からびるにはまだちとはやい
やっこのように
醤 ....
そら泳ぐあめんぼに
なりたいと
みあげるあおぞら
すいすいと
雲のなみまをぬってみる
....
右足が重いと
おもっていたら
いつのまにか
根が生えていた
しかたがないので
歩きまわる
根をおろさずに
....
それは
人の魂を包むものでした
紫紺の夜空にぽっかりと
白く人魂のごとく
浮かぶのです
隠されているのでした
6枚の 花び ....
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