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白い服を着た人びとが
地面に横たわっているが
誰ひとり目を覚まさないし
光もそこだけ薄暗い
時折風が吹いて
着物の裾や袖を膨らませ
やわらかく和毛を揺らす
鳥は肉をつついて
おもしろく ....
a.m.2:00/
夜中に起きて
誰もいない
台所の小さな明かりの下で本を読む
生活に狂え
と一言いただき
巨大な師の生首が
浮かぶ町で暮らすことになる
朝夕を過ごし
飯を食い糞をひり
普請して窓から師の顔を
眺めて暮らす
空は磨いたようで
風は穏やかに ....
極楽の湯に浸かってたのに
途中で鬼の一行が入ってきて
これはかなわんと場所を移動したら
深夜のゲームコーナー
暗闇に画面だけぴかぴか光ってる
コーラ飲みながらにらめっこして
口の中じゃりじ ....
おとこが夜中にやってくる
そのおとこは生まれたことがないのである
いっしょにゆこう
どこへ
とおくへ
くちびるでかすかに笑っている
いそいそと身を起こして
服を着て出ていこうとすると
....
がたぴし翁が住んでいるという
ここまで来たのだから挨拶をしていこうと
靴を脱いで上がっていったら
ちゃんと列に並んでくれと怒られてしまい
肩の間でしゅんとしている
それで長いこと待って
き ....
待合室には薄暗い死角があり
その奥から話し声が聞こえてきた
飲酒だとか喫煙だとかで
入院中に規則を守らなかった男が
強制的に退院させられて
形の上では患者の治療拒否とのことで
紹介状を持た ....
「ここから飛び降りてください」
と立て札にあったので
飛び降りたら
死んだ
見るものもずいぶん見てしまった
夜の枕の中で
そうは思っていても
赤い彼岸花がぐぐっと首を伸ばし ....
狂いつづけてきた時計が
かすかな音をたてて止まった時
崖は 崩れてしまおうか
崩れないでこのままでいようかと
太陽をぼんやり浴びていて
かまきりの体の中では
はりがね虫が腸の形をし ....
枕の下に包丁を入れて眠るとよい
もしも悪夢を見たのなら
その時はすかりすかりと捌いてしまって
うすい刺し身のようにするとよい
油まみれの水たまりのように光るそれを
やってきた男は食べるだろう ....
おれは桃太郎だ、桃太郎なんだと鬼が言うので
あんたは桃太郎だよ
どこから見てもそうだよと頷いてやる
鬼は心底ほっとした顔で
でも空っぽになったような目をして
暗い森の中に帰っていく
わたし ....
犬や猫や蛇が増えてきて
だんだん部屋が狭くなってきた
布団を敷くにも食事を用意するにも
いちいちまとわりついてくるので
うっとうしくてしかたないのだが
あとでどうにかしようと思っているうちに ....
夜中に地震で目が覚めて
地震が起きるたびに
いろんな神社の鳥居から
小石がぱらぱら落ちているのだろうな
と窓を開け閉めして
もう一度、すとんと夢の中に入る
夢の中では栗の木林にいて
....
紫色の紙が足りなくなってしまった
急いで買いに行かないと、もうすぐなのだからと
気ばかりがいたずらに焦って
どうしたらいいかわからない
今までどこで買っていたかなんて覚えてないし
手配してく ....
化粧箱や封筒の
中には宝石があるものだと
女の子はそれくらい知っている
馬の形をした雲を追いかけて
知らない道を行くと
その細道の先には橋が続いて
途中、別れの言葉を思い出して
しゃくり ....
空の彼方に
雲がすばやく流れている時は
家のほうが動いているような気がする
そう考えると足元がぐらついて
ああでもないこうでもないと
心臓に暗い汁が溜まってきて
余計なことを考えないように ....