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暗がりのなかの水
灯の無い窓に
階段は増えてゆく
樹に埋もれた塔の上部が
少しずつ空になってゆく


花を見つめすぎて
花になるもの
双つの入口
冷えた川を着て融け ....
暮れのこがねの海岸に
こがねに染まった猿がいて
石穴に石を通そうとしている


街中にはりめぐらされた
ロープウェイの鉄線を
無人のトロッコが走りつづける


 ....
兵士を探している
冬の砂を知らない
兵士を探している
時と共に変わる
陽と同じ色の
戦士を探している


戦士を探している
夢のなかの会話の
戦士を探している
背 ....
からくりをひらくと
蜘蛛と草が居た


蜘蛛が草に話しかけると
からくりは動き
草が蜘蛛に話しかけても
からくりは動かなかった


からくりを閉じた
ほんのわずか ....
深みどりの雷雲が
午後から夜へ沈みゆく
生乾きの蜜の壁
羽を持つ虫に埋もれながら
暗がりの履歴を見つめている


霧の頂点に落ちる光
窓の無い家に映る四角い明かり
壁 ....
誰もいない貧民窟に
火をつけてまわっている
腕に落ちる黒い滴
横顔を映して動かない


棄てられた木製の遊園地で
コースターだけが走りつづけている
午後の灰が
残 ....
死と
チェスをしていた


これが二度めの生だと
負けた後で気が付いた
羽を
水とともに飲み
水とともに飲み
暮れは破け
むらさきを飲み


光をくぐるもの
目をそらす埃
自分の髪を自分で編む冬
ぬかるみの故郷に降りそそぐ朝

 ....
遠く水が閉じるところ
遅い秒針をかきわけ追いやり
夜は夜に身を起こし
剥がれこぼれる光を向く


すべてが昇る夕暮れに
ひとつ落ちる冬の爪
おまえは銀を忘れたという ....
夜へ向かう枯れ野のなか
光のように咲く花もある
だが彼の目はただ
手のひらの淵にそそがれている
朽ちた椅子に腰かけ
うなだれる背と膝を
まだ照らすもののあることに気付く ....
爪で頭を掘るたびに
うすく小さな羽が生まれる
「いつまでもたどりつけない」と嘆く羽
たどりつけたらどうなるのか
未だに訊けないままでいる
こがね色の岩の洞
居ないものの影が映る
葉より上に浮かぶ捕食者
傷のように緑を焼く


骨と星 骨と星
白紙が白紙に落ちる距離
昇る泡のなか
線を描いて


猫 ....
柱 文字 からだ
数千年の空の筒
蜘蛛の巣の雨
冷たい青
はらいのけては肌に生え
夜明けを夜明けに呼ぶ鉛
炭の地平に羽と浪を描く



真昼の軍政
砂とささやき
 ....
かぎ裂きの浜辺を
ひとり遅れて
虹は歩いた
問いには応えず
奏でる指から流れる血
嵐の先をしめす標
会いたい人に会えぬ代わりに
言葉ばかりが目に降りそそぐ


 ....
指が鳥になり
ふたたび指になり
ふたたび鳥になる
そのくりかえしを
見つめている


眠る家々をまたぐ蟷螂
土にこぼれ 消える灯り
風が街に着せてゆく
街ではな ....
半月の軋み 暗がりの音
光の塵をついばむふるえ
むらさきの羽 むらさきの尾
飛び去る心をからめとる
夜が夜に咲く夜に
夜が夜に咲く夜に









 ....
布の鳥が鳴き
ほどけては地に落ちる
六角柱の空が
球になろうとして震える


砂煙の夜を
すぎる猫の背
二色をわたる
赤子の息


花のように立つ銀河
白は白 ....
目をつむれば
かたちは動く
ふちどりに触れる
濁音の息


風から風へ
羽と脚
枝のなかの重力
踏むごとに星の曇


やまない雨をなだめながら
手のひらと ....
蝶を呑んだものの肌に
蝶が現われ
真昼の終わりまで
話しつづけている


小さな音の
まわりだけの冬
鳥は追う
羽を忘れる


石の径の影
曇のなかの声
 ....
海岸には 誰もいません
本が落ちていました
文字も絵も無く
ただ幾重にも
波のかたちに濡れていました


銀河は
人々のなかに散ってしまいました
姉は最初からいません ....
すろすろすろ と
言葉は融けて
羊は羊飼いに従わず
次々と夜に飛び出してゆく


目が目でしかないのなら
信じなくてもかまわない
死なないくらいに
傷つけばよい

 ....
霧の村のむこうに
霧の村がある
耳の奥の音のように
白い


小さな花の生えた機械に
水をやりにくる鳥
機械はいつも
眠ったふりをする


いきどまりの ....
花に埋もれる花
葉も茎もなく
埋もれあう花
冬の陽の話し声
光を隠し
歩みを隠す





















 ....
机の胎から生まれ
引き出しの乳房を吸い
椅子の胸に眠る赤子


目覚めるたびに
人になってゆく


















 ....
あたたかい水が
空の左右を動いている
小さなうさぎの横顔で
あなたが花を見つめるとき


待ちくたびれた蟷螂が
透きとおりながら死んでゆくとき
涸れ川に架かる二重の橋が ....
耳もとに流れついたさまざまな木を
彫っても彫っても同じかたちにしかならないので
枕もとに置いたり
うなじにぶら下げたりしていたのだが
いつのまにかまた流れ去ってしまっていた
 ....
花のなかの蜘蛛が
雨を見ている
花を踏んでも 花は花のまま
垂直や そうでない水を受け入れている


自制の効かぬ音
道の途中の日時計
色褪せた鍵
水たまりの頬

 ....
{ルビ凶兆鳥=まがいどり}のように葉は離れ
次々に口もとにやってきて
何も得られず
土に落ちる


爪と貝が溶け
聴いている
海の失い場所から
海の向こうの海を
聴いて ....
咲きつづく花となった左手を
冬へ冬へかざしながら
森の上から去らぬ影を見る
同じ翳り 同じ霧
こだまのように立ち並ぶ


漂いは追い
追いは漂う
空が空をくぐるのを
 ....
中身の分からぬ箱を
幾度も運ぶように夜は来て
色を静かに塗りかえる


重ねられた隙間が鳴く
地球の裏の蝶
緑へ落ちて
陽を弾じく影


あたたかな不安
永い永 ....
ただのみきやさんの木立 悟さんおすすめリスト(206)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ひとつ_うつわ- 木立 悟自由詩613-12-11
ノート(かたむき)- 木立 悟自由詩813-11-4
ノート(闘)- 木立 悟自由詩213-9-25
ノート(からくり)- 木立 悟自由詩613-9-18
ひとつ_流転- 木立 悟自由詩313-9-14
ノート(50Y.9・10)- 木立 悟自由詩313-9-14
ノート(チェス)- 木立 悟自由詩313-9-14
色と羽_Ⅱ- 木立 悟自由詩1013-8-24
色と羽- 木立 悟自由詩613-8-19
ノート(リトアニア2010)- 木立 悟自由詩213-8-19
ノート(剥歴)- 木立 悟自由詩413-8-14
ひとつ_呼吸- 木立 悟自由詩513-7-31
ノート(砂とささやき)- 木立 悟自由詩613-7-11
ノート(虹)- 木立 悟自由詩513-7-11
夜に_夜に- 木立 悟自由詩513-6-5
ノート(半月)- 木立 悟自由詩213-5-28
水と応え- 木立 悟自由詩413-4-29
暮れと水- 木立 悟自由詩613-4-17
午後と冬- 木立 悟自由詩1413-4-12
Echo_Wreck- 木立 悟自由詩713-4-5
ノート(ある日_明けて)- 木立 悟自由詩413-2-7
ノート(Graublau)- 木立 悟自由詩513-1-25
ノート(49Y.1・16)- 木立 悟自由詩313-1-16
ノート(49Y.1・14)- 木立 悟自由詩3+13-1-16
夜と白_Ⅷ- 木立 悟自由詩213-1-2
ノート(49Y.12・27_Ⅰ)- 木立 悟自由詩512-12-27
夜と白_Ⅴ- 木立 悟自由詩512-12-12
昼と白_Ⅱ- 木立 悟自由詩412-11-25
夜めぐる夜_Ⅱ- 木立 悟自由詩312-11-9
夜と白- 木立 悟自由詩612-10-16

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