すべてのおすすめ
人助けして空気が悪くなった
古い川が涸れていく
もうすぐ
この蟹たちもいなくなるのか
この川を住処にしている生き物たちは
すべてを受け入れる
自然は寛容で力強い
環境の変化に対応するため
....
<沼>
いつでも死ねると思うから今日も生きていけるんじゃないかと
わざとらしくうそぶくあの人の言葉を
昔は笑ったり
ばかにしたりしていたのだけど
共感を求めたことなど一度もなく
自 ....
本当の君は君じゃない
わたくしは鋭利な球体
鬱血した魂のむらさき
情熱と酷似した粗暴に焼かれ
焼失した楽園の輪郭をなぞる
背骨を抜かれて自慰に耽り
名札のない隠喩の銛が刺さったままの
つめたい消し炭の太陽
....
「すみません。おひとりさま1パックまでなんです。」
その日
特売の卵を2パック
かごに入れていた老人は
無情なレジ係にそう言われ
1パック取り上げられていた
解けかけた雪が
昨夜 ....
やっと会えた母は、とても穏やかな顔をして眠っていた
真新しい白装束 解剖の痕跡も知らず
すでに身体は綺麗に浄められて
「コロっと死にたい」
いつもの口癖通り、突然の呆気ない最後だった
入 ....
冬の子どもたちが
落ち葉のマントを纏って
手をつなぎ
かごめかごめをしている
誰かが
あっちだ
と言って走り出すと
手をつないだままで
一斉に駆け出していく
遅れた子を 心配 ....
箸が並んでいます
きれいに連なって並んでいます
じいっと
待っているのです
箸が並んでいます
もう
ここには帰ってこないのです
土に還れない落ち葉は
一枚一枚
くっきりと形をとどめたまま
美しい標本のように
雨の舗道に貼りついて
幾度も
踏みしだかれ
やがて晴れた日の
風に
粉末となって
舞い上がる
ブランコ
息を吸って
息を吐いて
息を吸って
息を吐く
いつも意識の片隅で
緊張している
生きるために
前脚を出して
後ろ足を出して
前脚を出して
後ろ足を出す
....
あなたの言うことは
どんな時でも正論で
つけいる隙なんかありゃしない
あなたのシャツにはいつだって
きっちりアイロンがかけられていて
一筋の小皺でさえ見当たらない
あなたの書く文字 ....
わずかに赤を含んだ
初秋のねこじゃらしが
風にそよぐ
そよがれて
よみがえってくる
植物ではなくて
あいつらのしっぽだった記憶が
猫が
ねこじゃらしの横を
素通りできないわけは
....
最前列に磔刑宛ら固定され
急な坂をゆっくりと上って行く
頂上に何が待ち受けているかは分っている
(何故こんな日に雨が降るのか) から
(何故雨の日にこんなことをするのか)
思いを行き来する疑 ....
幅の広い
プラスティックの襟を
唐突に立てて
上目遣いで
僕を見つめる君は
結婚しなかったエリザベス?世ではなくて
去勢されたうずまき猫
好奇心のまま
何処かに突っ込んだ
左 ....
父の死後 葬式が終わった次の日から
働きに出た私を 奇異の目で見る人もいた
供養が足りないと 言う
しかし 私は働きにでて良かったと思う
泣いてもわめいてもどうにもならないのだ
日常を取 ....
摂氏零度付近で繰り返す
憤りと自己批判
つい今しがた晴天だったはずも
霰の降る未熟さ
頭を垂れるつららになれたらと
空を仰いでみた
雪解けの光沢に偽りはないのだが
春の陽射しは強すぎ ....
目玉焼きの黄身が箸から崩れ落ち
食卓からも外れて床に落ち
砕け散った
バラバラのきみを
拾い集めては捨て
床の汚れを拭い取る
そして再び橋に向い
目玉の白目だけを食べ終わると
味気ない ....
粘りついている私
張り付いて剥がれない
経験なんてなんだろう
一回性の事実
誰も愛せなくて
こころ焼き付いて
悲鳴はいまさらあげないが
次のことを思うんだ ....
季節の足跡が白い凍土となり
剥がれた絵の具のように
海鳴りが景色に仕方なく張り付いている
此処には君はいない
それでも此処は君のいた場所
今日君はい ....
生きる
乾いた空の木の枝は
去年と同じ姿をしている
彼らは信じて疑わない
この冬が
やがて春になることを
人はどうして姿かたちを変えるのだろうか
老いることは人も木も同じは ....
おそらく僕の知らない
無数のははがいたのだろうと思う
まあ今も昔も聞いたってこたえないだろうが
母の遺品を整理している
書道用具
浦和のなんとか堂とかいうところで購入した
....
詩は傷みです
あなたとわたしの間で
血が流れるように
空白を引き裂いた文字です
詩は苦しみです
あなたとわたしが共に
吐き続けたように
空白に汚れたままに散らかした ....
雪が降るね
私の中に
あなたの窓に
世界に
信じるのは簡単
みんな私を
通り抜けて
世界は
雪が
地表に舞い降りて
アスファルト
地下に抜ける
もう
キミは雪では ....
友よ 教えてくれ
いったい何処へ行くのだろう
君とは長い付き合いだ
離れてはいても仲間たちと繋がり合っていた
私は決して孤独ではなかったが
すぐ側にいた君と親しくなるのに時間はかからなか ....
も吉と歩く
何もない冬の午後
も吉と歩く
はたちの頃 一年ほど日記をつけた
何も残せず ただ消えてゆく日々が
とてもこわかった
時間はたっぷりあったのに
いつもの散歩道
....
午後に流れる
偽り無きもの
門の上の鳥
泉は鳴いて
見えない冠のうたううた
影が切り取る街の陰
空から 地から
泡の振動
水にひらく
誰かの手
....
治りかけの小さな傷は
ちょっと痒くなる
我慢できなくなって
その周りをおそるおそる掻いてみたりして
治ってしまえば
こんな小さな傷のことなど
きれいさっぱり忘れてしまうだろうに
....
人を
ただしい場面で
ただしい順序で
ただしい角度に
揺すると
泣く
そのただしさを
習得することを
愛とか技とか
呼ぶ人びとを
軽蔑し
憎んでいるわたしも
ただしい角 ....
青い空を切り取って
それも丘に埋めたのだ
まるでお前の目のような
きれいに澄んだ青空を
果てなく自由な青空を
閉じたお前の目の為に
春が来れば
硬くお前の口一杯に
詰まった土も温も ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18