失恋って
誰かと共有する必要が
あるのかな?
一人飲み
布団かぶって寝るので十分
明日は
誰もそんなことがあったなんて知らない
そんな顔で
リセットしたいね
やわらかな ・ ひのひかり ・ ぬるいかぜ ・ はるのあめ
ゆきがとける ・ つもり ・ つもった ・ ときが ・ とける
とけて ・ あらわれる ・ いろたち
いまが ・ うごきはじめる
....
そらがきちんと黒くなるのを待ち
肌をみがいて 髪をととのえ
それからすかすかの入れものを二十一個ならべる
そしていつもの手順できれいに切り分けた黒を
(それは上等の羊羹みたいにしっかりと重 ....
はるよはる
やさしさだけでうめつくせ
なにもみなくていい
なにもおもわなくていい
かおるかぜにめをほそめ
すずやかなそらをあおごう
はるよはる
とおいまちにおもいをはせ ....
子供達がてをふりながらさってゆく
老いた道化師は泣いた
彼らはもうサーカスを振り向かない
ガランとしたテントだけが残される
1918年の秋はからっぽだった
1928年には不安が流 ....
蝶を呑んだものの肌に
蝶が現われ
真昼の終わりまで
話しつづけている
小さな音の
まわりだけの冬
鳥は追う
羽を忘れる
石の径の影
曇のなかの声
....
空の蒼い日
乾いた独房に
ひとふさの春が投げこまれる
赤錆びた格子窓の向うから
透明な一枚の手によって
そこには誰も居ないので
やがて、壁の ....
麦踏む音のさらさ耳に聞き
さくさく行かう 向かうへと
道はつづく こがねの原に
歩いて行かう どこまでも
静かってね
音が無いんじゃないんだよ
静かってね
これからはじまるっていうことよ
静かな中で
いろんなことが息づいて
いきてるよ
いきてるよって
私の心にささやくんだよ
いやな知らせを
渋るみたいに
雨は降りつづけ
おれたちのいらだちは
こころのひだに
致命的なまでに
濡れて張りついていた
オールディーズがいつも
バースデイみたいに流れ ....
海が
めくれてゆく
いくつもの
いくつもの
海が
めくれて
岸壁から
追い縋って
宙を泳ぐ指先に
紫貝のように
閉じる音楽
(母は海に還ったのだ
街が
たわ ....
朝の微睡みの中
腹に行儀良く座っている黒猫
薄く開けた眼の先には
彼女の瞳がある
夢と現うつつを行き来するうち
そのまま抜け出した僕の意識は
彼女の瞳の中に落下する
◇小魚
雨の後は
小川の土手が増水し
小魚たちの遊戯場になっている
水圧に押されて
寝てしまった青草を
小魚がしきりにつついて
運び去ろうとする
一本の草とて
そうはさせ ....
賑やかな風景が今も見えてきそうだ
昭和のレジャーは大移動
小さなゲレンデ一つに
休みともなれば
がやがや人が集まり
きちんと並んで
リフトに揺られ
ゆっくり滑っていく
帰りの電車も ....
気が付けばまたルーターの点滅を凝視している
人の意見を覆す度量がないばかりに口癖が「確かに」
言うほど気にしてないことを人に言われてがっつり凹む
どうしても言いたいほどの ....
輝く空に
心がかなしい
何か切実なものが
巣立ってしまった後の朝
筒の大小は関係ないと思っていたけれど
手ごろに大きかったら
やっぱり嬉しかった。
午後が良いとされるお茶会で
シートを使う予定なので
午前のうちに
ロールからシートを抜いておいた。
....
草刈り後の、草の匂いがする
人の血の匂いは
ここまですがすがしくはない
もっと
体中がカッとなるような
そんな匂い
刈られなかった
花壇の花たちは
この匂いを嗅いで
体中がカ ....
はっきりしろ
雲をみているのか
{ルビ理由=わけ}をみているのか
おい
はっきりしろ
おれをみているのか
肋骨をはぎ
{ルビ呼吸=いき}をみて ....
ただいま。
とは言わずに
疲れた。
と言って玄関を開けると
五年ぶりの父は
風呂にでも入れ、と言った。
ただいま。
とは言わずに
なんだお前か。
と言って五年ぶりの兄は
新聞を ....
10日前に言いあった
苦手な上司と声をかけあい
皆で円滑に
お年寄の入浴介助が出来た日
各々は言葉のボールを
互いに投げあい
各々はそれぞれに必要な
お年寄に手を差しの ....
アツクなりきれない太陽も
そろそろ落ち着いて
そんなわけだから戻っても
もういいんじゃないかな
どきどき ばんばん 暴れ出し
駈け出してきたんだろ
吐き出す息も敵にみえて
苦しかった ....
川の流れは清冽
岩に激突した飛沫の中
一服の涼を見るが
飛翔する山鳥
容姿は狡猾で
空腹を満たそうと
水中の魚群を窺う
山猫もまた、
山鳥を捕獲しようと
首擡(もた)げ見上げ ....
その
ながい煙突は
をんなのまるい腕のやうで
その
やはらかい踊場は
灰色の砂糖のやうだった
あたしは
去年の今ごろも
この路をひとりでとおっ ....
毎夜繰り返されるセルフジャッジ
判決はいつも有罪
「お前を風葬の刑に処す」
必死にあがいてきた炎
風ノ前ノ塵ニ同ジ
意味付けがしたいんだって
確固たる何かを ....
指先を動かせば
共に動く。
指先十本で
繋がる糸。
受け継いでからの
この物理的な絆が私の頼り。
ランドセルを担いで一緒に歩いた。
小石をよけるには
片足を上げて
歩を進ま ....
ほしのふん(か)をおさえているのだ
ある朝、私(わたくし)は
暗く濡れたアスファルトの坂道を
一人ゆっくりとのぼっていました
両側にはブロック塀
その向こうには常盤木の枝密やかに揺れて
飛び立つ朝の姿が
澄 ....
あとかたもなく崩れゆく遠い果実を見つめている
Hのしろい指がりんごの皮をむく
どこまでも切れることなくつづく紅い航跡はこの星を
ひと回りしてわたしのからだのやわらかい節々にから
みつく
....
一生に一度 誰もが てっぺんに登りたいと思う
私もその一人だった
そう信じてた
だが てっぺんに長期滞在するほど体力は無く
高山病になってしまうかもしれない
私は柔である
居座る欲 ....
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