空中線にぶら下がる
見下ろして世界は罅だらけ
鏡面の海
其処に写った顔は笑っているの?
廃れた空瓶は僅かな水滴で
小さな光を反射して
プリズムの檻を世界に被せた
....
一番味方で一番の敵
矛盾
成長させては
老いて
衰えては
逞しくもあり
次に託し
新たに産み落とす
愛して
憎くて
分かり合って
分かり合えず
譲れず
譲らず
泣いては笑い ....
{引用=
さだめらしき願いを ひとつ知りました
六月の
嵐にひかえる空は
細心のあやうい平衡と ためらいに似た心地なさを {ルビ具=よろ}う
見あげれば
流れは岩にわかれ
....
思い出を一番から五十六番まで
USBメモリに移動して
一息
私のディスクは空(から)になる
空(から)になった空(そら)に
星が一粒
もう一粒
繋がって
絵を描く
尺取り虫が
一歩 ....
肌に艶のある小母さんが暖簾を掲げている
くいっと曲がり
小さな路地に入っていくと
木のこっぱや削り粉が雑然と置かれていて
いい匂いがする銭湯のうらっかわ
すぐ右手には
古びた人気のない ....
うすずみ色の
やわらかな蓋を
かぶせられた街で
こまやかな水に
しっとりと懐かれて
わたしの内側は
ほんのり熱を帯びる
うすずみ色の
やわらかな蓋の裏に
みっしり結露した水玉 ....
つばめの二番子は自由だ
二回目のつばめの子育てがはじまっている
一回目とは別の親子だ
家族も慣れたもので
つばめたちを見ながら
見ないで暮らしている
ああいるな と
目で確認 ....
千本の隙間に君を視る
連立した木立、立ち込める夜の匂い
揺らぐ葉、ざわめき
君は何処を見ている?
君は何を観ている?
抜ける風、ざわめく
連立し ....
加齢の彼氏が
ライスカレーを頬ばっている
あぶら顔をさらして
席をへだてた 妙齢の彼女は
茗荷のてんぷらを注文している
涼しい顔を店主にむけて
しにせの大衆 ....
れんちゃんは犬なのに
お手もできない
ある日
このぼくにできることを数えてみた
あれと、
これと、
それに、
三日数えても尽きなかった
それで
ふと、気づいて
そうだ
ぼくに ....
今は六時
光のうろこ
空の隙間
土からの声
風とおしの良い
泥の街だ
姿の無い
列車の音も聞こえくる
うなじに揺れる羽も尾も
すぎる翠の反対を向く
背中 ....
蛍光灯が明滅している
何度か取り替えても
変わらずちかちかしている
アパートの前にタクシーが止まり
客を降ろして走り去った
と思うと、降りた客が追いかけて
行きかけたタクシーをもう一度 ....
水の匂いのする
あなたの
指先の和音で
おどりだす
初夏の背表紙は
水溶性の文字たちの
ぽつぽつと吐き出す気泡で綴じられてゆく
垂直に
落ちてくる六月の
浸透してゆく
素直 ....
大輪の薔薇の下で咲く雑草に語りかける者のはいるのか
せいいっばいに花の姿を真似て見ても
日陰に生きる陰湿な風貌にふさわしい飾りからの残酷な香りは隠す事は出来ない
ひと葉 ふた言、言ってく ....
愛され上手は死んだよ
真冬のベッドを飛び越えて
楽しみにしていた夏を目前に
穏やかな顔をして死んだよ
愛され上手は死んだよ
真冬の隙間をすり抜けて
苦手だった夏 ....
風の愛撫に
はらり ほろり
八重桜が泣いた
すらり と知らん顔
真新しい翅を輝かせ
トンボは行ってしまう
墓地への細道
静かな午後
まだずっと若かったころ
感性は魚のよう ....
のろわれたように
あらがいがたいねむりのむこうに
しょうじょがすなはまのすなのうえにすわり
くるぶしのかたさを確認するように
くつしたをぬぎ
くつしたのともぐいが心配ね
立ちあがってぱっぱ ....
幸せになりたい
くやしいときそうおもう
幸せの定義なんて
知ってて知らない
言葉にならできるとはおもうけど
私のそのときの幸せってきっと
言葉になれるものじゃあないんだ
言葉 ....
簾越しに夏の太陽
舗装されていない通りの先
木造の橋をトコトコ渡る
爺一人
手ぬぐいを首に巻き
麦わら帽
やぁと挙げた掌に
いくらか赤みを帯びた顔の皺
....
泥を沈めた水田が
澄んで
さかさまに写す
熊笹
イタドリ
蕗
ヒメジョオン
ミズナラ
ブナ
岳樺
胡桃
落葉松
槐
ヤチダモ
山はまだ若い緑で
ふんわりと盛り上がって ....
視界の開けた農道の十字路で
車同士が衝突する死亡事故が
今年二件も起きた
屋根の上の仕事師は言う
屋根の上が安全です
棟は細くておっかないって?
歩く足の幅が有れば十分 ....
白いおまもりのはいったふうとうのふうを
ひとつひとつほどいていったひろさの中で
ひだり目は茶色みぎ目は薄緑のわかくさ色の
スカートの正座の少女の音読はささやきのさざなみの
ひざがしらからはじま ....
閉じられた瞼は
眼球にやさしくかけられたさらし布
或いは
フリンジのついた遮光性の高い暗幕
時折
なにかに呼応して
波打つように
揺れる
ベビーカーのハンドルに止まったちょうち ....
両翼を広げて谷間を覆う様に飛んで行く
渓谷に遊べば
すくい上げたのは 6月の空
まだ 冷たいね
あー
ホウノキの葉
何枚の葉が あの子を支えているのだろ
....
摂氏零度付近で繰り返す
憤りと自己批判
つい今しがた晴天だったはずも
霰の降る未熟さ
頭を垂れるつららになれたらと
空を仰いでみた
雪解けの光沢に偽りはないのだが
春の陽射しは強すぎ ....
し ご と を し の ぎ
こ こ ろ こ か げ に
み え ぬ わ き み ち
と き が と け だ し
美しく病んだ六月の背中で
僕らは夢か ....
あたたかく降り積もった雪の下に埋めた
女になってしまう前の、
何でも言葉に出来ていた少女のわたしを
女になるというのは
自分が一番遠い他人のように感じる生き物に
なる事なのだ
女になっ ....
あっちゅと畑で取ってきた
モンシロチョウの卵は
タイミングが悪く
キャベツの葉が萎びるまでに
孵化しなかったので
学校で廃棄処分になりました
モンシロチョウの卵を
....
君が
はじめて私の手を離し
自分の羽根で
よちよちと
はばたいていった日のことを
母は忘れることができない
君はとうに
逞しい翼をひろげ
上空の風に乗り
母には見ることもできない ....
新緑
けやきの葉は太陽の陽をとらえきれず あたりを染める
ゆっくりと濃くなり
また 薄く変わって
芽吹きの痛みは 遠い記憶
君よ
新緑の明日を 君の森を走って行け
踏み出した ....
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