あの夕焼けを誰よりも美しくしたためることが出来るなら
まかり間違って詩人になってもいいと思ったわけだし
ポジティブシンキングで幸せになることはないことぐらい
鱗を散らして空に溺れた魚の目を見るよ ....
月が綺麗ね
あなた
三日月であろうと
半月であろうと
喩えば新月でも
夜空見上げて
語りかける
まるであなたが
横にいるかのように
月が綺麗ね
あなた
雲に隠 ....
雨の降り止んだ田舎道
憂いを背負った帰り道
閑散とした沈黙の田に
やり場のない想いを投げ込んだ愚痴
一匹の蛙が反応し
静寂は破られた
別の蛙が次々と呼応して鳴き
騒ぎは瞬く間に一面に ....
あたたかい言葉がいいだろか
優しい言葉がいいだろか
夕暮れ時の帰り道
欲しい言葉を考える
雨 雨ふれふれ
ふったとて
帰る距離にはかわりない
なのに人は傘さすせいで
みえない壁 ....
耳の中、ゆっくりと流れ込んでくる群青色の金属音は
きりり、きりり、と子守唄気取り
前に進めば、曖昧なクラシックが見えてきて
立ち止まれば、冷えきったエレクトロニクス
遠い国か? い ....
指先でティーパックのお茶を振るとき
私は目の前に広がる茶畑を見る
小さなパックの宇宙に広がる緑を見る
半円形のそれは
ぴかぴかと光を反射して
まだ朝露もまあるく転がっている
乱暴に ....
三月の飛鳥山
王子駅から望むと
厳冬時とさほど変わらぬ
枝振りの樹々が
何の衣も纏わず
剥き出しではあるが
陽光に透けて
半月後の桜色の
淡い期待を靄のように
纏っている
穏や ....
桜の花が咲いて
友と過ごした学舎と
別れを告げる
風に揺られて散っていた
桜の花弁を一つ
受け止めた
この桜の木も
数え切れない程の
出会いと別れを
ひっそりと校庭の端で
見送 ....
そうして
列車は燃え上がる火山の山腹を廻り
向かい合って座っていた僕たちの
車窓から美しく災害が眺められた
列車のドアから乗客たちが飛び降りていった
飛び降りては降りそそぐ炎のように水鳥を抱 ....
庭園を吹き渡る気流に乗って山脈を越えると
なだらかに広がる山腹の緑の森と
森に囲まれた湖
そして川があり滝があり
庭園を巡る園路は地形に沿って這い回り
緑の平原は地平まで広がり
その地 ....
発光し続けて
磨耗するフィラメントの
舌打ちみたいな最期の音
疲れた寝床で
その音が何度も弾けた
落ちようとする
意識に
電流を流して起こすみたいに
じ ....
幸せは 手に入れた瞬間から
少しずつ こぼれていくから
幸せを 手に入れたなら
真空パックで 密閉して
....
穢れた沼の蓮の花
一輪だけの淡き花
寂風と悲雨が晒すとも
倒れ伏すことなく咲き誇る
妙なる聖なる
君は花
あんなに強い西日なのに
青空がしろい
硝子の影が枯れ枝をくわえて
排ガスにはたかれた欠片が歩道に転がる
少しずつ少しずつ
細いものから音も色もころしてゆく
風は大きく旋回している
....
長い間、咲かなかった
植木鉢のクンシランが数年ぶりに
草の両腕をひろげ
橙色の花々を、開き始めた。
レースのカーテン越しに注がれる
日のひかりの内に、今はもういない
在りし日 ....
少年は向かい風に負けず
自転車を漕ぐ
徒労とは思わず
ひたすら前に進む
そんな彼も吐くことを覚えた
空腹に身をよじりながら耐え
むさぼった
それでも痩せほそる身体を
重く感じながら ....
気づきませんでした
知らぬ間に
時を なくしていたのです
one hour ahead
そんなときはきまって
静かに 自分を抱きしめる
そうあることが、あたりまえなら
失うことな ....
{引用=
夜と昼と海が三分割された世界で
神経や筋肉や骨格のことばかり考えていた
何を考えてるのって聞かれて
沈黙するたびに擦り減っていった何かに
ぽつんと謝る、
(ごめんね い ....
一度乗ってしまえば、後はひたすら上昇し続けるしかない鉛色の集団エレベーター、
もし君が雨に濡れたアスファルト芳しい地上に再び戻りたいと思ったのなら、
神と同胞と家族を裏切り、心変わりしてし ....
青侘びた外葉の白菜持ち重るサナギの中で誰の子眠る
ストーブの火見つめ猫がもの思う人は卓にて白菜を剥ぐ
100309
並四ラジオの整流回路
小さな容量のキャパシターに
少し大きすぎるインダクターが繋がって
交流をぎごちない直流に変えている
....
春めくね君の瞳のモンブラン弥生の日差し甘酸っぱい
駅染める弥生の西日切り取って胸へとしまう兄と妹
また明日また明日へと環はめぐり環は環をめぐりまた会う日まで
....
朽ち果てた誰も訪れる者もいない廃園
寂れた石畳の道をひとり歩く
色褪せた花壇には花一輪すら咲いてはおらず
春を謳歌していた面影はどこにもなかった
かつてこの花園で一輪の花を摘んだことがあっ ....
俯いている
苛立ちはこころを駆け
涙は机に下垂る
ー愛に育まれた女たちは
夜は眠る時間だと
知っているから
....
日(休日出勤)
日曜日「宴のあと」の風沁みて いて座の子らがゼロを吸う街
月(週休)
月曜日一人ぼっちのアイドルで『ありあまる富』口ずさむ丘
火
今朝も ....
緩やかな上り坂を自転車で走ること十五分
月極駐輪場から歩いて五分
駅に着いたときにはいつだって息が上がっている
通学に使用していた路面電車は
この辺りの住民にとって大切な移動手段
そ ....
雪がたくさん 降ったから
きゅっきゅっと
アーモンドカステラ
こしらえて
にぎりずしをつくるよに
片手のひらで
雪を 食む / ハむ
耳がふたつできたから
隣の垣根 ....
少し早起きした日曜日
気を利かせたつもりで
洗濯をしたら
真っ白だった
タオルやTシャツが
真昼の空のような
とりとめのない空色に染まった
それは一緒に洗った
....
握り締めることなんて出来ないってわかってるのに
風に翻弄されて舞い落ちる粉雪をつかまえて
その結晶を手のひらに刻み付けたいと思った
この冬最初に降る雪を見たのは
帰省先である少し北の街 ....
真っ白なスタート
とにかく背中を押されて
頭から突っ込むでんぐり返しのような
これまでと違い
目覚めるのも自然にまかせて
自分の意思で起き上がることができる
毎日に変わった
....
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