すべてのおすすめ
高校時代に覚えたはずのプリントを、全部捨てることにした。
色褪せすぎた高校一年生のプリント。黄ばんだ。
そこからのフラッシュバック。剛球が、脳に。
もう二度と触れられないものたち。
高校の思い ....
さあ 遠い 遠いだろう
線路がどこまでも広がってる 遥か
矛盾の地平線を越えて
此処にはもう何も走らない
ただどこかの荒れ狂った国の
少女の吐いた溜息が風葬されるだけ
視点が届かな ....
吸い込んだ肺が
うすむらさきと群青のすきまで止まる
絶えられなくなって
風の匂いのせいにする
つめたいガラスが知ってる よるの密度
ひとつずつはがしていく
その指先で ....
ウォーリーは探されなければならなかった
探されるためには行方をくらまさなればならなかった
行方をくらますためにはいつも同じ服装をしなければならなかった
その服装が決めたものなのか決められたものな ....
おれの話を
きいてくれてありがとう。
むかしジョニーってゆう友達がいたんだ。
ジョニーと最後に会ったのは
春の風が吹き荒れる
夕暮れのことだった。
おれたちはいつでも土壇場だったの ....
女にふられたけれど、
もうすべて失いついでに失っても、
恥をしのんで生きようと思った。
だから友よ。
きみも死ぬな。
俺はもう歌わない。
もううたううたはない。
夏は終わった。
三年前 ....
聖なる牛を追って河原に遊ぶ
権力の恣意的な横暴に満ちた企みだ
牛は水辺に顔を背けていやいやをする
なんたって水は不気味だし
入るには深そうだ
それに何が居るか分かりはしない
....
・
夕暮れの遠くに霞む
四台のクレーン車は
輪を描くように向かい合って
なんだか
太古の昔に滅んだ恐竜の
弔いをしているように見える
・
朝に洗濯物を干す母親は
太陽に両腕を広げ ....
窓のない病室で
地球儀を塗り分ける
水彩絵の具の赤は
少しだけ優しい
冷蔵庫に
入れておいたの
私を生かす電池は
もう使えなく
なっていたから
安心を買うなんて
違反だって ....
思い出のクリスマス。
第十位
二十三歳のクリスマス。
お歳暮の配送センターでアルバイトをしていた。
朝のデパートの開店時間に合わせて、
そっちの方角にみんなでお辞儀をする。
馬鹿馬鹿し ....
ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった
漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言った ....
水曜日
僕は喫茶店のテーブルに座って
哲学者のように沈黙していた
ミミ子に別れを告げられたのは
先週のことだった
ミミ子は犬が好きだった
犬を飼うのでイサオとは別れる
....
文章が
飛行してゆく
文章が飛行した後を見上げる
たなびく理の跡
ボーイングの羽の撓みのような
少しきょうふ感のある
右上がりの字を気にしながら
ぼくは帽子を深々と被り直す
い ....
いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つ ....
雨が降ってくると
金沢を思い出します。
金沢は年間六十日しか
晴れの日がありません。
大体曇りか雨です。
空はいつも
ブルーグレイの薄雲がかかっています。
雲のない ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く
けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです
ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く
しかし幼稚園は日曜日に ....
泥棒のような前傾姿勢で
妹の洋服を
箪笥から引っ張りだして纏った
ふわわ、と甘いにおいが漂った
わたしは服を持って居なくて
だから何時も裸で暮らして居るのだが
この頃はとみに寒く
や ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった
カウンターのミセスは
住所と名前が記されている ....
女にふられたので、
今度のこんどこそ、
この女でなければならない女にふられたので、
トマトジュースを飲んで、死のうと思った。
なんでトマトジュースかといえば、
野菜が足りないと思ったからだ。 ....
僕の弱い声で残すさいご
遺言は誰に届くだろう
たとえば(さよならは)
僕ら(いたみ)
せかいは永久にみずいろ
僕がもえつきて灰になっても
それをさらう風が君であれば幸せ
ここは
いつも広くて
息が白くて
冷えてて
がらんとしていて
音は全て霞んだ帳の向こうから
聞こえて
私は
怒っていたし
恨んでいたし
頑張り過ぎてたし
叫びたかったのに ....
ふたつ先の しずかな私鉄の駅でおりて
ふたりは歩いた チャボとスミレ
おだやかな秋の風がふいていた
さほど高くない丘を見上げるように
さほど広くない その公園はあって
まばらな紅葉が ....
季節はすっかり秋めいて
あちらこちらに金木犀の香りが広がっています
けれどもわたくし、
銀木犀に、未だ出会ったことがございません
銀木犀、銀木犀
あなたはどこ ....
−程なく日本は滅亡する。
地磁気の周期変動も。
社会学的な相互認知の反乱も。
卵細胞に起因する生殖能の低下も全部ぜんぶ。すべてぴたりと一致するのだ。あと1週間、あるいは数カ月。すでに預言の域 ....
夏が融けるという
あまり良い描写ではないけれど
融けはじめた夏の汁が
わたしという排水管を通って
流れてゆく
汁の上にはたくさんの死骸が浮いている
ときどき微かに風が吹くと
一斉にそ ....
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている
明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
入院してる友達のために折ってるのと
その子はちょっと淋しそうに
鶴を折っていました
それを手伝おうと
わたしも折ったのですが
できあがった鶴の
羽を広げようとしたとき
その子 ....
流れ星を見た。
うつむく彼の頭撫でながら
見ていたら
すっ
すっ、て
花火大会の余韻も
冷めやらぬ私の頭上
初めて見たよ。
2つも。
髪の毛をかきあげたら
鳴くんだよ
....
{引用=バージェス化石群のうかぶ
地底の暗がりで
水晶の音を聞きながら
ねむっていた
あなたへ
拝啓}
東北本線の夜行便が
山沿いの陸橋をちいさくわたり
けわしく青らむ空の奥 ....
冬の木漏れ日の中で懐かしい歌を聴きました
懐かしくてももう泣けない自分がいました
それが寂しくてそっと瞳を閉じました
太陽が淡く輝いた冬の日のことです
太陽 ....
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