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花が咲いている
花の中に海が広がっている
散歩途中の
人と犬とが溺れている
救助艇がかけつける
降り注ぐ夏の陽射し
最後の打者の打った白球が
外野を転々とする
ボールを追っ ....
たとえばこの町が水に沈んでしまったら
君への祈りも
僕らの言葉も
何もかもすべて、冬になれば凍って
そのまま永遠に
美しい水平線を保てるのかなと
冷たい手のままで笑んだ
風は ....
例えば 夜が全てこぼれ落ちてしまって
夜の子供達がほろほろ泣いている日があるとしたら
私はなにもない空を暗く塗り潰すほどの
真っ黒な感情を持っていたい
例えば 空のプラズマの中から青だ ....
心の病(やまい)が
昨日を、今日の、明日へ
類(たぐ)う
糾(ただ)した思いは、見飽きた悲しみの拓本
丸い竹矢来の中に縮こまる
それでも、
哮る心が
知らぬ間
わずかばかりの隙間か ....
道路わきに
手足の長い虫
細い翅を斜め上にひらき
まさに離陸の準備
あの流れ行く白い雲へも
あのぽわぽわした仔猫の耳の上へも
行けるんだよね
いやいや恋人と
あの素敵な青葉の陰で
....
薫風の影
清冽な馬達の
人待ち顔で休む、横顔
串刺しの、それでも
彩(いろとりどり)の絶佳の肌
白馬に黄馬、緑馬と紅馬
雑踏の人波、截然、いななき
誰も足を止めない
そっか
白馬は馬 ....
子供の頃かいま見た大人の世界は
寝ているじぶんに聞こえてくる両親の会話と
めったに入ることもなかった職員室が印象的だ
それを引きずっているからだろうか
お客様の事務所でお客様を待っていると
....
両手でふたつ
チョキを作って
横に寝かせて
ハンカチをおさえてみる
真ん中がふくらんできて
光る球体がしみ出してきたなら
これは夢
真ん中がしずまったまんまで
外ではせわしく青 ....
くぐもる声の
先覚の導き
雪白の肌は
滑り込む
街の明かりを濡らす
船渠のようにゆったりとした褥
鏡の天井
心の疼きの
施与を求めて
愉楽への節理を糾す
欲にあふれる体の
舌端に ....
私とはひとつ違いだった
先生の評判を聞きつけて遠方から通ってくる
いわばミーハーな生徒さん同士
どちらからともなく話しかけると
すぐに古くからの友だちみたいに親しくなって
いわゆる「気の ....
まだ色を持たない紫陽花は
ふつふつと泡みたいな蕾をつけて
くすんだ背景に溶け込む
重たく湿った空気の匂いがし
右足の古傷がしくしくと痛む
身体は正確に天気を教えてくれる
....
白熊が死んじゃう、と言って
つけっぱなしの電気を
消してまわる君は
将来、かがくしゃになりたい
という
撒き散らかされた
鳥の餌のシードを片づけていると
芽がでればいいのに、なんて
....
忘れてしまった
味覚が
どうしても
取り戻せなくて
ひたすら
食ってみるのだが
味はない
正確には
なにかしら
味のようなものはするのだが
それは
識 ....
生地を回して
伸ばして
カッコイイ
俺も作りたい!
トマトの乗った
ピッツァパイ
チーズたっぷり
サラミを乗せて
できあがり
ワイン飲んで
至福のひと時
仕事は午前で終わ ....
モノクロの空を仰ぐ
モノトーンがいくら混ざったって
見える景色は殺伐とした
あまりにもつまらなすぎる
風景だった
地球の軋みを耳で聞き取り
それをしらせようと
....
近くのミニコープで向かいの奥さんが食料品を買いだめしていた
奥さんはミニコープのレジにかごを二つのせ
あしもとにはさらに四つのかごを置いていた
お子さんはお菓子を握りしめていた
インフルエンザ ....
ゆがんだ水の端を手折ると、狂った植物がその秒数を逆さにする。空気の残骸の渦の残骸が、その風光を光に記録する。ゆがんだ水の意識がなめらかに転がり、目醒めた植物を汲み上げる。神と神との境界は拡大し、神は消 ....
“繰り返し何度も何度も職人の静なる極みに染め重ねられたバーガンディの木机と、真向かいの視線の先に額縁の如し絵画のような荘厳たる山海の風景を飲み干した生成りの窓枠の、両側を揺れ動く薄紅色と鴇色の水玉 ....
雨の匂いがする
埃っぽい陽射しの名残りを弔って
闇に隠れ
秘密裏に行われる洗礼は
いつしか
もっと内側まで注がれるはず、
そんなことを
どこか信じている
陰音階の音だけ降らせ
目に見 ....
白と黒の
ふちどり
真っ赤な
口元
からだのラインを
浮かび上がらせる
スーツ
からだのラインを
あいまいにする
ドレス
おどけた嬌声
うちひ ....
草冠をかぶったまま
ピストルをのどの奥に差し込み引き金を引くメロディーを見てた
自分がなんなのかわからないまま何回もがちんと音が響く部屋で
カーテンが揺れている
誰が見てるかわからないから
....
写真にうつっている僕は
満面の笑みでカメラを見つめていた
でもそれは過去の遺物
その写真にライターで火をつけて
灰皿になげすてる
今なら言えることは
昨日は言えなか ....
090527
今日も
行く宛がないから
一カ所に留まっている
家賃もたまっているので
今月の家計は火の車
破綻するのは時間の問題だと
工場の ....
たっぷりの熱湯の中に
捨て台詞を少々加えて
マカロニを入れる
いつまでも未練がましく
くっつかないように
十分注意しながら
再び立ち直れるまで
何回か掻き混ぜる
アルデンテ ....
川にはいくつもの名前がある
そしてまたいくつもの流れがある
それはひとたび枝分かれをすると
もとの濁流には還らない
交差点にはいくつもの風景がある
乱反射する信号機や擦れた交通サイン
....
晴れた日の自転車は
ちりちりと
陽射しが痛くて
風を切ると
明るいシャツに羽虫のシミがぽつり
白や黄色の
果実の予感を湛えた花は
土埃の上で
清しく開き
匂いを放つでもなく
た ....
気づくと
背中に窓があった
木の枠の 両開きの窓だ
閉じられているその窓を
覗き込んでいる自分がいた
中には 止まった時計と
傾いだ天秤が見えた
やがてその窓の中にも
自分があ ....
まだやわらかに
すこし濡れた髪のうねりも
正確に笑えない口元も
プレミアムカルピスも
だいじにしてね
あなたをかたちづくるもの
やすらかさと
いっぱいの情熱でもって
あなたがすきだ ....
真っ赤な太陽が夜をつれて
あの日の団欒今はいずこへ
涙を隠して背中を伸ばして
眩しい目位しか出来なくて
あなたを憎んでいると告げ
真っ赤な太陽は西の山の端
あし ....
舌先でなぞる
生の輪郭
より分けられた
命のかけら
細胞が触れる
わたしのからだが
呼応する
触発された
律動
響きあう
器官
からみあう生命の
螺旋を描く
....
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