届かないと思っていた扉の取っ手は
いつの間にか腰の位置になっていた
背が伸びて視野が広がる
遮っていたものに追いつき追い越し
世界の大きさに少しずつゆびが触れる
もうすっかり ....
{引用=夜}
天球儀まわる
透明に
川底をめぐる
闘魚の輪郭
壊された客間のドア
こぼれる鍵盤
遅すぎた伝令
到達しない 手
灯台の照らす
静かな波間
幼い寝 ....
ばくだんの解体
まるで私の心をいじくりまわして
夜空の花火になるのに似ている
そしてあるいはハイウェイ
灰色の街の一本道を
バイクのように飛ばす鼓動
棘のある私の心
もう少しロマンチック ....
片隅に置かれた人形は汗をかいている
滴る雫は畳に吸い込まれる
部屋は水槽
水が満ちて、満ちて、満ちて
月影を残して
わたしの体を夜にする
性と性が繋がり生になる
欲望と ....
揺れる景色を歩いてく
騒がしい蝉の声が
胸の音と重なった午後
逢いたい気持ちだけで
記憶を追いかけていく
想像した以上に
変わり果てた僕だけど
わかってくれるかな
君なら
....
真っ白な空白を
何かしらで埋めていくのは
それはそれで楽しいが
少し勿体ない気もする
雪の日の最初の一歩のようなものだよね
と微笑む君のキャンバスに
僕が描いていいものか
少し悩 ....
仄暗い湖、青銅色の水底から
水面に浮かんだ
満月をつかもうと
水草のようにやわらかく
つるりとした腕を伸ばしている
月曜日の子どもたち
ランプの火影に怯える
動物園のオオカミが
故 ....
燃えながら灰のなかから生まれる鳥
その目にうつる火祭りの夜
名前なき舟ならばただ漂うか
海に溺れて星があかるい
不確かさそれのみ満ちる雨のごと
うすい ....
光の跡を指で辿って
途切れては、また
切なる時間の中にいる
瞬きに願いを乗せることもなく
水面に寄り添うのは
想いが透き通るから
清水に耳を傾けるのは
貴方の声を ....
ふとおもう
そのときの
ふと、が
ひとなのだ
あきのこおろぎも
たちどまり
しょっかくをのばしたまま
ふと、をしてるのだ
ひとのしくみのように
ふとおもう
この ....
めをつむってると
どこなのか
わかりませんでした
おとがしました
においみたいに
ふるいかんじでした
めをあけても
よくわかりませんでした
ここがどこなのか
パン ....
大切かどうかわからない記憶は
抱えていた膝小僧のかさぶたにある
転んだのは最近のことだったか
それとも遠い過去のことか
鉄さびのようなすすけた色は
かつて赤い液体であっただろうことを
....
6月4日AM0時05分
玄関の鍵をあけ、
わたしを窮屈な女に閉じこめている
ストッキングを脱ぐときが楽園。
爪をひっかけて伝線、
1回500円の過ちにイライラする。
....
ねずみ色のコンクリートが暗く染まる
何か落としものがあったような気がして
歩いて来た道を右から振り返ってみた
つうつうと機械的に落ちるさみだれ
庭に投げられっぱなしの花切り鋏は
いつから ....
歪んだ真珠を抱え込む
背中を丸めた少女たち
世界は平衡をなくし
遠近法は意味をなさない
耳元でささやくのは
畸形の妖精
足元にうごめくのは
手足をなくした娼婦
....
ヒトは
決まった時間に瞼を開け
決まった時間に瞼を閉じる
自分で自分を縛る『時』の縄
憧憬はいつしか退廃したパラレルに
ドラマも
映画も
漫画も
きっと
ワタシの日常 ....
ぱしゃり、と水音をたてて
あなたは私を抱きしめる
二人きりのぬるま湯に浸っていると
まるで双子のようだと思った
「交わることのなかった二人が
一瞬だけ出会 ....
つかまえることの出来ない
角の取れた風が丸く波打つ
花ごと落ちてしまったつつじが
こつ、こつと小石にぶつかり
涼しい上流から泳いできた
花街にいる女性の唇のような
程よく熟した艶の ....
脱脂綿を部屋中に拡げてわたしのベッド
塵にむせながら脚をばたつかせるわたしをやさしくくるむ脱脂綿
脱脂綿に染みるバルサミコ酢
大海原に放流されたドライフィグ
脱脂綿に腹の内を綴るインク ....
どこかで焚火が燃えている
誰もいないのに火の粉が爆ぜる
その色を知る事が出来ただろうか
その熱を感じる事が出来ただろうか
{引用=今しがた誰が手折ったのだろう
一輪の薔薇が土にまみれ ....
大気は徐々に枝垂れ流れ
紫色に染まってゆく
雑踏は過去のものになり
ほのかな灯りも音を持つ
乱反射していた人工のひかりは
次第に少なくなってくる
大気は更に厚みを増し
地上 ....
あなたが残して行ったもの
俳句を連ねた小さなノート
表紙がぼろぼろになった聖書
漱石の「虞美人草」と
若山牧水の歌集
壇の上の 薄い写真の中の
やわらかな微笑み
かつてあなた ....
また春の風が
額を過ぎた
ふっと
潮の匂いがした
ような気がする
{引用=なつかしい声}
振り向くと
海がそこまで迫る
海は光る
反射して鏡のように
指を浸すと ....
顔のぼやけた数人を認めないことで
自分の価値をあげようとしてる
仮面ばかりが豪奢になったこの星で
どうして素顔を人に受け入れてもらえるなんて
思うの。
君がつむいだ言葉と嘘 ....
―朝
ビルの階段を降りて行くと
何かの軋む音がする
たくさんの
時間の積み木が
押し合い
こすれ合って
順番を決めている
―歩道を歩く
山桃の並木が
慌てて生え ....
三日月がいっそう薄目がちにほろほろ涙を零しておりましたので、私まで悲しくなってしまい、ほろほろと泣いてしまっていたのです。
私が泣いたからといって、月がゆっくり安寧のなかに眠れるわけでもなく ....
おまえ、
わたしたちはけっしていっしょには成れないね
いっしょにいることはできるのに
へんだね
いっそ外国へいってしまおうか、
いっそ、なんて云わなくとも
理由や意思や罪性なんてようい ....
くちなし色の便箋に書けば 口にせずとも想いがつたわる
そんな 企みたくなるいいつたえ
でもくちなしの花がどんなだったか
ずっと長いこと思い出せずにいる
いつかおまえに すきな花を問うた ....
ぎゅぅってする
照れちゃうからうつむく
うつむいたら
あたしの小さなおっぱいが
君のうすい胸板を不機嫌そうに遠ざけているのが見えた
{引用=夢のおはなし
いつか君と同じベッドであたしが ....
管制官、飛びます、どうぞ。---------------そう残し春のブルーと着床をした
「あー、ごめん。2008年マイドラマ第一話で君、もう死んでるから」
寂しげな水 ....