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本を開くと
そこは遠い昔の日本のお寺 
お金持の人々が行列をつくり 
次々と賽銭箱に大判小判を投げ入れて 
ぱん ぱん
と手を合わす 

そこへ 
ひとりの乞食があらわれて 
薄汚 ....
 今、時計の針は、午前二時半を回っている。この深夜に、何故か
僕はあなたに手紙が書きたくなった。(あなた)というのは、特定
の誰かを指しているのではなく、今、この手紙を読んでくださって
いる(あ ....
ピエロは
いつも装っていた 
彼のまわりには 
いつも明るい{ルビ日向=ひなた}があるように  

ピエロは 
どうでもよかった 
彼のことを 
まわりの人々がどう言おう ....
雨上がり
{ルビ水溜=みずたま}りには 
哀しい顔が浮かんでる 

ひょい と飛び越え 
曇り空の一日に向かって彼はゆく 

{ルビ仄=ほの}かな{ルビ灯=あか}りを 人の{ルビ間=あい ....
秋風に揺られ 
無数に実りゆく 
夜の小さい太陽達 
 
今にも落ちそうな実に 
枝はしなる 

自分らしく熟れるのを待つ
世界中の人々のように
ぶら下がる無数の実が
枝から離れる ....
体のまあるい婆ちゃんが 
ぜいぜいと団地の階段を上っていた 

通りがかりの少年は 
後ろから両手で腰を抱えて 
ゆっくりとした歩調と合わせ押し上げた 

( 振り返ると 
( 団地の ....
早朝 
{ルビ浴衣=ゆかた}のまま民宿の玄関を出ると 
前方に鳥居があった
両脇の墓群の間に敷かれた石畳の道を歩き 
賽銭箱に小銭を投げて手を合わす 

高い木々の葉が茂る境内を抜けると  ....
午前一時二十分 
列車の連結部近くの狭い一角 
床に腰を下ろした青年は 
震えるドアに凭れて眠る 

( 手すりに{ルビ柄=え}を引っ掛けて
( 吊り下がるビニール傘の振り子 

真夜 ....
休憩室の扉を開くと 
左右の靴のつま先が
{ルビ逆=さか}さに置かれていた 

ほんのささいなことで 
誰かとすれ違ってしまいそうで 

思わず僕は身をかがめ 
左右の靴を手にとって  ....
東の空に日が昇る早朝 
工事現場の低い土山の頂に 
クレーン車が一台
運転席には裸の王様が{ルビ居座=いすわ}っていた  

黄色と黒の{ルビ縞々=しましま}の 
柵に囲まれた小さい世界の ....
その{ルビ女=ひと}とは、ついに重なることはなかった。 
どんなに重なっても、何かが{ルビ逸=はぐ}れていた。 

( 左手の薬指に、指輪が光っていた 

求めるものは、柔らかきぬくもりであ ....
夜になってから急に 
庭の倉庫に首を突っ込み 
懐かしい教科書を次から次へと処分して 
家の中に戻ったら 
腕中足中蚊に刺されていた 

それを見た母ちゃんは、言った。 
「あんたはつよ ....
うたたねをして目覚めると 
一瞬 {ルビ黄金色=こがねいろ}のかぶと虫が
木目の卓上を這っていった 

数日前
夕食を共にした友と 
かぶと虫の話をしていた 

「 かぶと虫を探さなく ....
しゃわーで汗を洗い流していたら 
いつのまに{ルビ踝=くるぶし}が{ルビ痒=かゆ}かった 

ぽちんと赤いふくらみに 
指先あてて、掻く爪先も
痒みの{ルビ芯=しん}には届かない 

見 ....
数日前の夜
ホームページの日記で、
遠い空の下にいる友が恋人と別れ、
自らを罪人として、責めていた。 

( 自らの死を越えて
( 生きる明日への道を見据えていた
( 彼女の瞳は光を宿し ....
長い間
{ルビ棚=たな}に放りこまれたままの 
うす汚れたきりんのぬいぐるみ 

{ルビ行方=ゆくえ}知らずの持ち主に 
忘れられていようとも 
ぬいぐるみのきりちゃんはいつも
放置され ....
「純粋」と「不純」の間で 
へたれた格好をしている私は 
どちらにも届かせようとする 
執着の手足を離せない 

一途に腕を伸ばし開いた手のひらの先に 
「透明なこころ」 
( 私は指一 ....
炎天下の路上に 
{ルビ蝉=せみ}はひっくり返っていた 

近づいて身をかがめると 
巨人のぼくにおどろいて
目覚めた蝉は飛んでった 
僕の頭上の、遥かな空へ 

瀕死の蝉も、飛んだん ....
 私は今、七年ぶりに訪れた遠藤周作先生の墓前にいる。墓石の下
に供えた僕の第一詩集「風の配達する手紙」の表紙が夏の日に照ら
され、白い薔薇の影が、表紙の余白に揺れている。私が生けた赤・
白・黄色 ....
人間は汚れている。身も心も。 
人の世のニュースを写すテレビ画面の中で。
私の姿を映す鏡の中で。
全ての日常は、色褪せていた。 

  * 

一人旅の道を歩いていた。 
信濃追分の風 ....
「幸福」を鞄に入れて、旅に出よう。

昔日、背の高い杉木立の間を 
見果てぬ明日へとまっすぐ伸びる 
石畳の道 
君と歩いたあの日のように 

( 舞い踊る、白い蝶々を傍らに。 

 ....
 昨日は寝る前に、原民喜の「心願の国」を読んだ。被爆者である
彼は、自らが作家・詩人であるという使命感から、その体験を書き
遺した。戦後間もない頃、母も妻も失い自らに残された弧絶の夜を、
彼は歩 ....
夏の涼しい夕暮れに 
恋の病にうつむく友と 
噴水前の石段に腰掛けていた 

( 左手の薬指に指輪をした
( 女に惚れた友が 
( 気づかぬうちにかけている 
( 魔法の眼鏡は外せない  ....
照りつける夏の陽射しの下 
墓石の群を横切る私の地面に頼りなく揺れる影 
一瞬 頬に見えた{ルビ滴=しずく}は 涙なのか汗なのか 

( {ルビ嘗=かつ}て 一途だった少年の恋は
( 夏の夜 ....
足元は、崩れている。 
真っ直ぐ歩くことも{ルビ覚束=おぼつか}ず、
肩が揺らいでいる日々。 

( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている 

胸を張れども三日坊主。 
 ....
立ち位置を、探している。
いつまでも見つからない、
足の踏み場を。 

もしくは、
消えてしまった君の幻を
抱きしめる、
世界の中心を。 

人波の川が流れゆく
この街の中で、 
 ....
小雨の降る夜道を歩いていた。
ガラス張りの美容院の中で
シートに座る客の髪を切る女の 
背中の肌が見える短いTシャツには

「 LOVE 」 

という文字が書かれていた。 
 ....
私とあなたの間には 
いつも一枚の窓があり 
互いは違う顔でありながら 
窓には不思議と似た人の顔が映る 

私とあなたの間には 
いつも一輪の花の幻があり  * 
互いの間にみつめると ....
中央病院の受付は今日も患者で溢れていた 
松葉杖をつく若者 車椅子の老婆 妊婦 マスクをした中年・・・ 

街にはスーツを着て歩く人 
キャンパスの木陰でひとり{ルビ俯=うつむ}いて立つ学生  ....
深夜の地下道 
両脇に並ぶ店のシャッターは全て閉まっていた 

シャッターに描かれた
シルクハットの紳士は大きい瞳でおどけていた 

胸からはみ出しそうな秘密を隠して 
彼は独り歩いた
 ....
ふるるさんの服部 剛さんおすすめリスト(190)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
幸福のパン_- 服部 剛自由詩13*06-11-13
詩友への手紙_〜僕とあなたの間に一篇の_詩_を〜___’06 ...- 服部 剛散文(批評 ...15*06-11-12
ピエロのハンカチ_- 服部 剛自由詩15*06-11-7
- 服部 剛未詩・独白1006-10-23
柿の実- 服部 剛自由詩13*06-10-19
少年と老婆- 服部 剛自由詩13*06-10-13
駒ヶ根_- 服部 剛自由詩14*06-9-5
夜行列車_- 服部 剛未詩・独白6*06-9-5
- 服部 剛自由詩24*06-8-31
頂_- 服部 剛自由詩6*06-8-31
逸れた夜_- 服部 剛未詩・独白8*06-8-29
歩く花- 服部 剛自由詩15*06-8-27
探しもの_- 服部 剛自由詩16*06-8-22
「痒み止め」- 服部 剛自由詩6*06-8-22
「空色の手紙」_〜蝉の伝言〜_- 服部 剛自由詩10*06-8-22
棚の中のきりちゃん_- 服部 剛自由詩21*06-8-20
鳥の影絵_- 服部 剛自由詩12*06-8-18
路上の蝉- 服部 剛自由詩14*06-8-14
遠藤周作の墓前にて。- 服部 剛散文(批評 ...5*06-8-13
信濃追分の風- 服部 剛自由詩17*06-8-10
幸福の谷_- 服部 剛自由詩14+*06-8-7
「踏み切りの前に立つ人」_〜原民喜「心願の国」を読んで〜- 服部 剛散文(批評 ...13*06-8-4
呼声- 服部 剛自由詩20*06-7-30
渇いた夏_- 服部 剛自由詩26*06-7-26
潮騒の夜_- 服部 剛自由詩11*06-7-23
「空」を抱く人_- 服部 剛自由詩20*06-6-19
「汚れた足」- 服部 剛自由詩21*06-6-14
傘を差す人_- 服部 剛自由詩21*06-6-9
「顔の無い女」_- 服部 剛自由詩6*06-6-5
地下道の音楽_- 服部 剛自由詩11*06-6-4

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