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1月 {ルビ梵天=ブラフマー}は金剛乗に還る
すると涸れ沢の畔に半裸を露わし
年若の尼が五弦の琵琶に弦を張る
きつうきつうに張るのだから
絹の撚が奏でるほどに
押えの指の血に染まる
2月  ....
 半魚人


その海には半魚人がおりました。
彼は生まれた時からひとりぼっちでした。
生物学的にあり得ない以前に
遺伝学的にあり得なかったので
地球広しと言えども、同類がなかったのです。 ....
はナホトカ生まれの十八歳
でどっか相当ずれている
小さい頃からずれている
多くの人とずれている
殆どみんなとずれている
仲間はずれで入れずにいる
ウラジミール・ズレリンコフ
は小学校で持 ....
酒乱のゼブラは
いつも酩酊で店に来た
五十五歳
痩身で長身、顔は土気色
ギトギトの黒髪と銀ぶち眼鏡
三白眼が据わっている

「やらせなさい」
「無礼者、下がれ!」
初めて怒鳴られた時 ....
お前の墓はたれ建てる

わしも一度は参りたや

たれにも知られぬ偉人あり

その名も男ジョン次郎

ふるさと捨てて母捨てて

砂また砂の大航海

夢も希望も質草に

さすら ....
体重は二百キロを超え
母は
終日をベッドで寝暮らす
半身を起こすのは
朝昼晩の食事だけ

動こうと思えば動ける
膝を痛めて以来は這って行く
息を荒らげ汗を浮かべ
みしみしと座敷を圧し ....
青紫に霞む浅間山の遠望と
賑わう通りに開かれたテラスには
女がひとり食事している
背中でゆるやかにうねる髪に
藤色のつば広の日除け帽
白地に淡彩の花柄ワンピース
ひざ下の裾は四半円に垂れ
 ....
ドは横たわっている音
いつまでも重い音
太りじしのオダリスク

レは小さな女の子
たんぽぽ色で爪先歩き
笑ったね?無邪気なお目目

ミは若草のさざめき
さ緑の丘 駆け下りる若者
涼 ....
 クエスト

テニスは制覇した
ゴルフも制覇した
競泳にもスケートにも進出した
クラシックに白鳥の湖、ポロやクリケット

黒人の登山家っているのか
少なくともアフリカ大陸にいないとすれ ....
およそ百年前
大学二年の一人息子を交通事故で亡くした時
既に寡婦であった資産家の江古田夫人は
今度の悲嘆には到底耐えられないと思った
そこで息子のDNAを研究機関に預け
一年半後
スーパー ....
のぞみ126東京行き
名古屋から乗り込んだデカ目と太目
ジョーシとブカは帰路を本部長の噂
子のサッカークラブ
プロジェクトと社長の意向
途切れがない
そして同時に立ち上がり
喫煙ルームへ ....
 春はGじゃん。卒業生の賞状筒携へてときめく去りぎは、風も温みて、
毛織物など{ルビ藍=いんぢご}の内にこそ重ぬれば綿の膝丈{ルビ袴=すかーと}ひらめきたる。

 夏はのーすり。日頃の腕立てすれ ....
新宿駅南口は
ぶらぶら帰りの若い子で華やぎ
オバサンは疲れて足が痛いぞよ
外は
シケた地上よりも夜空が明るい
振り向けば
丸八真綿の看板横にぽっかりお月
かじればパキンと割れそうな
お ....
悲しみは空っぽな鳥かごの中
小鳥は遠く離れて野原の地面の下
ひとりぼっちで目を閉じ埋まっている
柔らかな羽毛に包まれた小さな体は
土が含んだ夜露に濡れて

悲しみは流れ星の掠めた夜空にいつ ....
 根津は好きな場所だ。
 谷中、千駄木と併せて一括りに「谷根千」などと女性誌でもてはやされ
たが、谷中のように下町情緒よりも墓石の数が圧倒的なわけでもなく、森
鷗外が住んだ事でもわ ....
どんな棺も
青年の死には窮屈だ
母親の嘆きも
揺籃には大き過ぎる

白い菊も
その肌には不似合いだ
彼の愛したのは太陽や風
ロックンロールや女の脚

ああ、大きな坊や達
逞しい赤 ....
小春日和の土曜日
住み慣れぬ町を散策に出たアラジンは
ふと
今日は電車から見る一級河川に出てみようと
川辺の高層マンションに見当をつけ歩き出した
バス通りを渡り
古びた団地の中を突っ切り
 ....
渋谷で夕食にした
友人はペスカトーレのセットと生
私はアスパラガスとウニのトマトクリームを頼んだ
隣の若いカップルは今しも席を立つところ
突き当たりにはインド系のカップル
パキスタン人かも知 ....
IT関連の求人広告を見た男が
雑居ビルを訪ね面接を受ける
(応接室で)
「え? インターネットではないのですか」 
対座の中年男は
「ええ、弊社はウィンターネット構築企業です」
「あの、ウ ....
      作詞 {ルビ梶百戸=かじもど}{ルビ猿娑=サルサ}
      作曲 尾長懸垂
      歌  内蒙古{ルビ斑三=はんぞう}とカピバラセブン


 寂聴歌

現実、男はブス ....
エテカリンブルクのイパチェフの家で
一九一九年七月一六日から一七日の間に
人知れずロマノフ王朝が最期を迎え
ニコライ二世と后妃アレクサンドラ
長女オリガ、次女タチアナ、三女マリア、四女アナスタ ....
雨が降ると私は
主を失くした犬のように大人しい
夫を亡くした妻のように淋しい
世界は私と一体何の関連性があるのか
此処に生きている意味などあるのか
いや、予めの墓標に過ぎないのだと
そんな ....
 母さん

新しい父は死神ドア閉める
母さんが夜なべで証拠隠滅中

 父さん

超す前に見透かされるは父の高
父が曳く襤褸舟泥舟幽霊船

 両親

忍耐と諦念敷いた空巣箱
テ ....
{引用=祝婚歌2}

ラブを書く
2文字か4文字

ラブを飲む
ただの森永ラブ

ラブを食べる
痩せて肥える

ラブを着用に及ぶ
ブラの逆さま

ラブを歌う
他人が作った ....
{引用=祝婚歌}
旅は美しい
金のウンコを過ぎた辺りで助走に入り
爆発的加速でトップスピードに乗れば
船尾のエンジン焼けのひどい匂いも後方へ置き去られ
大川の生ぐさも顔打つ風に堤へ跳ね返され ....
Noniは1回笑った
Noniは2回笑った
いや、実は1回半だったのだ
0・5とは、淋しい内省なのだった
こうして人は気安い笑いの1つ毎にも
小さな頭蓋の中の
千数百グラムの己が脳みその
 ....
 室内楽

感銘という
陳腐な言葉で飾り立てられた
フリルとボウのブラウス姿の種馬が行く
題字ばかり大きい
ささやかな詩集を片手に
トム・ジョード役ばりの
理知的気品を醸し出す歩幅を以 ....
世界一のスナッチャーは
二三〇kgのバーベルを挙げた
もう眼球は飛び出す寸前で
ようやく視神経の束に支えられている感じ
体じゅうの筋肉は石より硬直して
針でも刺せば破裂しそうな感じ
ベルト ....
 夜の図書館

しじまに俯く図書館の内省では
神田川の源流もナイルであります
不心得者の高校生が夕方
不品行に忍び笑いを殺していた
地下の障害者用トイレも森閑と
そばかすだらけの司書の死 ....
ゆうべ
三時を過ぎた頃
辻々を葬列が通ったのを
お聞きになりましたか
気の早い病葉がかさかさと
先導僧の笏杖に道を払われ
仕舞い残しの風鈴がひと時
うるさく鳴らされたのを?

西洋で ....
beebeeさんのsalcoさんおすすめリスト(181)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
命脈- salco自由詩7*11-12-14
十二月の童話- salco自由詩11*11-12-10
ウラジミール・ズレリンコフ- salco自由詩7*11-12-8
ゼブラの思い出- salco自由詩8*11-12-6
THE_MAN_ジョン次郎- salco自由詩5*11-12-4
ラストリゾート_(海)- salco自由詩6*11-11-30
ラストリゾート_(山)- salco自由詩4*11-11-30
1オクターブのバイエル_/_ハ長調- salco自由詩6*11-11-27
ちょっとした疑問- salco自由詩3*11-11-25
江古田家臍次第(えこたけへそのしだい)- salco自由詩15+*11-11-20
毛色- salco自由詩3*11-11-19
春はGじゃん- salco自由詩13*11-11-16
儀式- salco自由詩7*11-11-13
悲しみ- salco自由詩8*11-11-11
根津界隈- salco散文(批評 ...3*11-11-11
霊安- salco自由詩7*11-11-8
アラジン- salco自由詩6*11-11-4
出て来ない- salco自由詩12+*11-11-1
開口- salco自由詩3*11-10-30
演歌のニーズを探る- salco自由詩6*11-10-27
廃仏毀釈と偶像崇拝- salco自由詩5*11-10-23
- salco自由詩7*11-10-21
母さん- salco川柳3*11-10-19
無登録商標- salco自由詩6*11-10-19
シオンのあばずれと地獄の犬- salco自由詩9*11-10-15
_Noni- salco自由詩7*11-10-14
マンカインド- salco自由詩5*11-10-11
偉業の虜- salco自由詩5*11-10-7
十月の童話- salco自由詩14*11-10-4
死霊の夜- salco自由詩8*11-10-1

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