すべてのおすすめ
その視線はどこを見るでもなく
誰を みるでもなく
そして何に
留まるでもない
体になじむポロシャツと
洗いざらしな作業ズボン姿のおじさん
きっとシルバー人材センターか ....
夜
月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている
朝
目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した
....
気がついてみると、あの頃にようには心や脳
が動かなくなったのか、とかなんとか。そん
なことはないはずで、身体と心のあちこちが
ゆるんで、ちょっとやそっとしたことなんか
で胸が高鳴り、涙を流して ....
雨曇切れて覗く青
前行く女のまぁるい尻
優しい柔らかな進化の残り香
残された時はもうそんなに
長くはないよと風の精霊
私という魂を吹き抜ける
土に埋もれた狂人の顔
その赤裸々な闇の独 ....
今もあの鉄階段を憶えてる
カンカンカンカン
大きな音を立てて俺の革靴は
地上二階建ての外階段
広島の郊外都市
潰れかけの旅行代理店
自社ツアーがあん ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している
海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
夏陽がじっくりと焦がす
白い坂道の曲がり角
大樹の木陰、繁り合う枝葉
セミの声
見上げる少年と虫捕り網
身体を揺らしながら
爪先立って手を伸ばす少年
ぼくは坂を下り ....
ある人を喜ばせる役目を終えて
そのメルヒェンを忘れ果て
路上に居る様には見えなかった
マスコットキャラクターの小熊
目的のある足は目も触れず通り過ぎて行く歩道で
しゃがみ込ん ....
ゆうぐれ、ぼくの家のすぐ目の前にある小さな公園、だいぶ涼しくなってきた風、古いブランコがほんのすこしだけ揺れている。その座板のうえに置かれている、子供用のリコーダーには、しかし老いの枯れ葉が何まいも詰 ....
子供たちが整列をしていた
何をしているのだろう、とよく見ると
整列をしていた
身体の隅々にまでしみわたる雲のように
なだらかで滑らかだった
透明な水を植物にあげて
話すことなどもう ....
積乱雲を想って
紫の渦あじさい
順呼気に澄む
ふくらみ過ぎた花と緑は
まるで巨大なくるみ型の舟
或いは脳みそ
私はミソスープに伸ばした腕を
食卓の
小鉢に触れたいと ....
雨の中 お弁当を食べた
山積みの木の枝を燃やす
離れられない仕事だったから
雨にぬれていくご飯 おかず
服に染みた煙の臭いは
ぬれるとちょっとおえってなる
思いがけず惨めさがこ ....
ある晴れた日に一軒家の庭で
赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
母と見たのは昔の話
花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ
茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
「この花は ....
剣とペンも使いようで
あんまりにも
早く咲くものだから
いくつも忘れ物をしたようで
ふりかえり
ふりかえり
している
手を引かれている子が
みん ....
5月28日
黒いペンで書かれた
カレンダーのさりげない予定
几帳面な字
その翌日
あなたは
日めくりの裏のような
真っ白な予定の永遠に続く
向こう岸へと
踏み出してしまった
....
おふとんとわたくしの
さかいめがおぼろげ
すなのこまやかさで
ぬりこめられて
まぶたをきちんと
とじたまま
きょうのしごとについて
まとはずれなだんどりをくりかえす
お ....
もうどこへも逃げてゆけない言葉たちが
{ルビ凝=こご}る五月闇
夏の色が濃くなるごとに重くなってゆく空
その空の重みに耐えかねて
虚ろになる意識
否 虚ろを装う意識
綴るご ....
子が産まれる、とわかって、
しっかり喜んでみたのだが、
まだ、わからないのよ
そうか、まだわからないのだ
無事に産まれてこない胎児たちもいる
産院の、陽がよく入る待合室
お腹の大きな妊 ....
夜の雨は何かを伝えようというのだろうか
泡立つように一つの感覚が芽生えてはうなだれ
いつもように日々が過ぎていくのを
僕は目を少し開けては眺めている
昨日少し生まれ変わり、風の子供の歌を聴いた ....
ニラ バニラ
ニラニラ パニーニ
トルティーヤ
リャマ。
ニ ニラ
ニ ニラ
ニラ
リャマ。
アルパカ
カポエーラ
ウン
エベレスト
ニラ
ニラリ ....
日の傾いたまち角で
ふと立ち止まってながめ見る
昼顔
香り無く素っ気ない素振りに見えた薄ピンクの
一日花
そのアナタが一瞬だけ、わたしへ
ふるふるっ と 照れくさそ ....
駅前で少し遅めの「朝定食」を食べる。
ご飯、焼鮭、大根おろし、味噌汁、生卵、漬物という定番だ。
客も少なく静かなテーブルに座り、ゆっくりした朝を過ごした。
バス停がある時代を生きている。僕は ....
京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
「うわ、六百十五円やて!」
何事かと 彼女の視線みると
老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
一段 一段
階段を登る
二階につく
そんなことさえ
新鮮に感じる日
ふわり
記憶が消えたかのよう
あと何回
夏を迎えられるだろう
汚れた窓ガラスが
光を和らげてい ....
あなたとわたし
分かり合えないまま
会話を続け
紅茶とチーズケーキとコーヒーと
あなた うんうんと
うなずき
わたし ひたすら
ことば紡ぎ
あなた そっかそっか
相槌打つ
....
右目がごろごろするので
鏡で確認すると
目の中に台風が発生していた
降った雨が可哀想な人のように
涙となって溢れ出した
眼科に行ったけれど
不用意に右目を覗いたお医者さんは
風で目の ....
暗いボックスに
抱き合って動かない男女が居た
感傷的なメロディーを弾いているピアノ弾きは
禿げかけた頭を時折 片手で撫でていた
頭の中も躯の中も
お酒で一杯の筈なのに
....
眠いのに
なんとなく夜更かししたい
なにがしたい訳でもなく
ただ夜更かししたい
ワルイコとじゃなくて
読書じゃなくて
テレビじゃなくて
ただなんとなく
ヨフカシしたい
カタカナにする ....
もしもし
命の電話ですか?
命の電話、私も一台予約したいんですが
命の電話って言うからには
特別仕様のiPhoneか何かですよね?
えっ、そうじゃない?
そうじゃないって
iPhoneじ ....
人間は個として
およそ同じ体積の中で
古い身体を処分し 新しい身体を作り 生きている
樹木というものは
死んだ古い身体の上に 新しい身体を重ねながら
体積を増やし続け 太く大きくなってい ....
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