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真夏の渓谷の薄暗い木陰で
川音を聞きながら
ひっそり息をしていた
ひとりといっぴき

濡れた岩のうえ
つんとまっすぐに伸びた胴
行儀よく揃えて閉じた翅
その黒曜石の輝き

日の当た ....
トンボならギンヤンマ
ぎらぎら青光りする腰
淡い緑の腹に飴色の尾
それからあのぐりぐり動く目玉

生まれ変わるならギンヤンマ
青々と輝く水田のうえ
セロハンの羽音響かせて
軽やかに飛ん ....
蜜柑色した西空を探るように
行ったりきたりするのは
連れ添いを求めているから。
でなければ飢えているから。

しかしその飛翔の優雅なこと!
ヘリコプターのホバリングも
グライダーの滑空も ....
花壇のマリーゴールドは
みごとにおひさまの色
おひさまを
いっぱいに吸いこんで

ハナムグリのベッドは
おひさま色の花粉
ハナムグリのごちそうは
おひさま色の花粉

夜なんか知らな ....
(1)

高校生のとき、
まだJRが国鉄だった時代、
三十日間三十万円日本一周鉄道の旅を計画した。
青春18切符があれば、不可能事ではなかった、
東京を通過しないとどこにも行けない関東圏、 ....
オニグモは働き者です
毎日夕方に網を張ります
まずはゆるりと何本も糸を流して
どこかに引っかかったら網張り開始

手始めにいちばん外側をくるり張ります
真ん中から放射状に足場を張ります
 ....
逆巻きなさい、酒巻よ

我らが主人公の名は酒巻である。これを読んでいるあなたの氏姓が酒巻であったとしても、またあなたのお住まいが埼玉県行田市酒巻であったとしても、それは単なる偶然の一致に過ぎないの ....
家にある薬箱のなかの服用薬を全部飲んでしまったことがある。19のときだ。頭痛薬からキャベジンから風邪薬から、とにかく服用薬は全部飲んだが、水虫の薬など外用薬は飲まなかった。死にたくはなかったのだと、思 .... 本当のことを言いましょうか。たまには、ね。

私が本当の本当に愛しているものは、ひとつの作品ではなく、ひとりの詩人ではなく、私自身ですらなく、詩そのもの。私という小さな詩人と、私という小さな詩人が ....
いま、右手首がひじょーに痛い。うちの飼い猫の血膿をふきとろうとしたら、ズタズタに深くひっかかれた。場所が場所だし、猫の爪は鋭くてカミソリみたいなものだから、自分で見てもリスカの傷に見える。おもしろがっ .... この文章は、みつべえさんの詩作「凪の日」ほかいくつかの作品と、「凪の日」に寄せたいとうさんの批評「何故詩なんか書いてしまうんだろう」に触発されて書いたものです。

「凪の日」
http://po ....
1)
ねじりんぼの花が咲いてる
あれはねじれていてこそ正常なので
まっすぐに伸ばそうとすれば折れてしまう

  <惑ひつつ天を目指せしねぢりんぼ>



2)
梅雨どき ....
フィオレルロ・ボドニのやうに
閉ざされし部屋にて翔ばむ

赤き火星よ

   ☆

異常巻き
アンモナイトぞ
精緻なる

整数よりも
無理数を選り

  ☆ ....
前回私の足の話をしたので、今度は私の夫の足について話してみる。

私の夫は肉体労働従事者で、趣味が山歩き渓流釣り山菜採り茸狩り、毎週二回バレーボールとインディアカの練習に出かけ、日曜日にはソフトボ ....
小学三年のとき、図画工作で足の彫刻(といっても粘土細工)を作った。手首から先の手か、足首から先の足をつくれといわれ、私は足にした。足の方が単純構造で指も短く、簡単そうに思えたのだ。基本的に、全員が自分 .... このうえなく暑くてかったるかったその年の夏
あたしは牛糞くさい風が漂ってくるベランダに
布団まで敷いて寝転がって
あたしにとっていちばん大切なものはSFで
ラジオから漠然と流れてくる音楽という ....
海岸沿いに露出した三十年まえのゴミ山のうえ
新しい嘆きがそっくりひとつ捨ててあった
壊れた自転車
割れたブラウン管
骨の折れた傘
骨折り損のくたびれ儲け
破れた心臓
そんなもののうえに
 ....
婆さんは忙しいのである。
なにしろ忙しいのである。
化粧するヒマはない。
みなりととのえるヒマもない。

そんなわけで
髪はおどろに振り乱し
服はボロボロ顔は血みどろ。
時には走る車の ....
蝶をつかまえたから嬉しくて
タモに入れたまんま
おにいちゃんとこに持ってって
ほら!と叫んだ。

「こいつは蝶じゃないよ、
アゲハモドキってんだ、
アゲハの真似してるけど、
蛾なんだよ ....
アゲハは真上に飛び立つ。
目的があるみたいに
だけど少しも慌てず鷹揚に
まっすぐに。

あかるい春の日
かわいた地面に
ゆらゆらと落ちている
アゲハの影。

高く舞い上がれば
薄 ....
年寄ると
雌牛の乳房はずるりとながい
地面につきそうなくらい
搾乳器にもかけにくい

隣の牛に踏まれると
乳房が裂ける
裂けると
いつものおじさんがきた

麻酔したのかしないのか
 ....
牛が生まれる
大騒ぎしているのは人間ばかりで
牛は慣れたもの
これで五度目のお産だ

まだちいさいわたしは
目をみひらいている

子牛は逆子で
おじさんは苦労している
どうやったも ....
わたしがまだとてもちいさかったころ
牛舎でチャボを放し飼いにしていた

あのころもたぶん
鳥インフルエンザはあった

卵を隠すチャボがいた
牧草の陰にふたつみっつとあった
探し当てると ....
ここはほんとにからっぽで
なんにもないのです

ポケットだらけの服より
空気のはいったスーツケースより
からっぽです

きれいな声音で
愛について
鳥がさえずります

もうすぐ春 ....
いまはまだ
冬の秘密を伏せておこう

ねっとり黄金の蜂蜜を練りこんで
ぴかぴかの春がやってくる

舌先で感じる原初の味覚は
甘味なのだから
わたしは拒まない

とろりながれる黄金の ....
ミミズには裏表があって、裏側は表に比べてちょっと色白で、ミミズは裏を下にしてないと這うことができない。こういうのこそ無駄な知識というべきで、ミミズを実際に手にとってみたひとは知ってるだろうし、ミミズな .... 真夏の草いきれ。
立っているだけでじっとりと汗。
しかしこいつだけは
やけに涼しげだ。

やさしいみどりの草のうえ
冷たい泡で身体を覆って
まるで
クーラーの効いたワンルームの住人。
 ....
見捨てられたガラスの温室は
屋根も壁も割れて
折れた支柱には
へくそかずらが絡まって

でもその支柱のそば
深紅の小さな薔薇が咲いていた
頼りなげに細い茎には
淡い色の棘がたくさんあっ ....
忘れてませんかね
繁栄を謳歌してるのは
地球の主役は
わたしらでっせ

哺乳動物がなんですかね
冷血どもがなんですかね
もちろん鳥なんて
あんなものは滅ぶべきですな

もっとも多く ....
人間はいつもゴキブリの飛翔におののく。
りっぱな羽根があるんだから、
ゴキブリにしてみりゃ、
飛ぶのは当たり前なんだが。

ゴキブリ自体は、
単に飛びたいときに飛ぶ。
問題をややこしくす ....
たもつさんの佐々宝砂さんおすすめリスト(104)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
ハグロトンボ(百蟲譜28)- 佐々宝砂自由詩704-8-3
ギンヤンマ(百蟲譜27)- 佐々宝砂自由詩404-8-3
オニヤンマ(百蟲譜26)- 佐々宝砂自由詩304-8-3
ハナムグリ(百蟲譜25)- 佐々宝砂自由詩504-7-30
停車場- 佐々宝砂自由詩1204-6-16
オニグモ(百蟲譜24)- 佐々宝砂自由詩304-6-2
逆巻く酒巻- 佐々宝砂自由詩5*04-6-1
自己を愛するための- 佐々宝砂散文(批評 ...1404-5-18
危険な話- 佐々宝砂散文(批評 ...1004-5-13
外に出て行くためのリスカ- 佐々宝砂散文(批評 ...28*04-5-11
風のうしろに風はない- 佐々宝砂散文(批評 ...11*04-4-30
4×5_俳句篇- 佐々宝砂俳句504-4-19
ブラッドベリに捧ぐ- 佐々宝砂短歌504-4-19
普遍性について- 佐々宝砂散文(批評 ...604-4-2
リアリズムについて- 佐々宝砂散文(批評 ...7*04-4-2
扉の手前- 佐々宝砂自由詩404-3-31
寝付けない理由- 佐々宝砂自由詩17*04-3-23
忙しい婆さん- 佐々宝砂自由詩304-3-22
アゲハモドキ(百蟲譜23)- 佐々宝砂自由詩5*04-3-17
アゲハ(百蟲譜22)- 佐々宝砂自由詩704-3-17
むかしばなし3- 佐々宝砂自由詩6*04-3-3
むかしばなし2- 佐々宝砂自由詩7*04-3-3
むかしばなし- 佐々宝砂自由詩304-3-3
Love_Song- 佐々宝砂自由詩504-2-21
秘密- 佐々宝砂自由詩404-2-21
虫も殺さぬ- 佐々宝砂散文(批評 ...904-2-1
アワフキムシ(百蟲譜21)- 佐々宝砂自由詩4*04-1-28
ハゴロモ(百蟲譜20)- 佐々宝砂自由詩3*04-1-28
六本脚からごあいさつ- 佐々宝砂自由詩4*04-1-26
ゴキブリ(百蟲譜18)- 佐々宝砂自由詩5*04-1-25

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