小首をかしげて 鳥が
私の胸のあたりを
ついばむ
私は
驚きで声も出ない

鳥は
よくわからない
といった風情で
私の
腕をついばみ
ひょい、と脚に移って
ついばむ
小首を
 ....
深くみずをたたえて、湿度を高位にくばり、
森に沈みこむ薄化粧の木霊は、
香ばしい季節の賑わいを、端正に、はおり、
浮かび上がるみどりに浸る、
眩い光沢を、透き通る声の上に配して。

流れる ....
誰にも見せないことにしている
今のような時の 私のかおが
部屋中にひろがっていて

みにくくて くやしくて
さみしくて 痛い
チーズになった
わたしとあなた
とろとろ
都会を
とろとろ
地球を
とろとろ
つつみこんでいく

やがて
おなかを空かした
とても大きな
ピンク色した怪獣 ....
「生き春巻」です
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けて ....
わたしの あたまを
からから まわすと
なないろの たまが
さいげんもなく でますが
ぜんぶ はずれです
喪服の婦人が森から出てくる
入れ替はりに
首うなだれて一羽の鶴が
森へ吸ひ込まれる


霧たちこめて
婦人も鶴も胸まで霞んで
二者はどこで擦れ違つたのだらうか
ともにもういづこに ....
 
 
その日
朝起きて鏡を見ると
顔が
武田鉄矢だった。


んなんですかぁ〜って
髪を掻きあげてみる

んなんですかぁ〜って



泣けてきた



女にフラ ....
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね ....
 
 
    詩は

数学に似ています

うまく説明出来ないけど

 数学に似ています

異論反論あるかとは
      存じますが


    詩は

  ....
  あなた、ルリツグミのヒナと
  お昼寝をしたことはあって?



風を確かめるように浮かべた
少女の白いあご、のライン
穏やかな微笑みに
たたまれてゆく{ルビ睫=まつげ}


 ....
犬の耳が
ちょうちょになって
飛んで行ってしまった
音が出なくて済むように
静かな玩具を買い与えた
名前を呼んでも
もう振り返らない
それでも涼しい場所は
誰よりも知っていて
 ....
山麓の寂しい町に

月はかうかうと照つてゐた

すべての人が

月を見たわけではないけれど

みんな

ボールを胸に抱へるやうにして

眠つてゐた
あれ、
この花火どうしたの
おかあさん もらったの

今日はけんちゃんの命日だからね
買ってきてもらったんです

こんな暑い日だったの

戦死公報に載ってただけ
亡くなった ....
あの人に愛された
私の体のパーツ
ひとつずつ
指でなぞっていく

マッチのように
こすったら
残り火は
燃えるだろうか

まだ
私のために
初恋の人の名前を呼ぶように遠い花火は音だけで咲く


宵かがり すくい上げられひと夏を共に過ごした金魚の記憶


パラソルを少し傾け向日葵と同じ角度で空を見上げる


涼しげな薄い便 ....
本が泣いてわたしになる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている

外には他にも生きものがいて
窓という窓は
 ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
鍋を洗うのと
お風呂のふたを洗うのが
あんまり好きじゃないです。
昆布の匂いがする、と

おんなの言うままに
おとこはそっと確かめてみる


漁師町で育ったおんなは
季節ごとの海の匂いを
知っている

おとこは
ただなんとなく海がすき、とい ....
ぜいぜいと肩で息をしている硬いダイヤモンドのような鳥だった。その鳥の瞳は錆びた空き缶の淵のようにギザギザだった、切れそうなほど。ドアーの向こうから光が差すのに鳥は這っても行けないのだ。天井にある剥がれ .... 人目をはばかりながら夜は 
汗ばんだ首筋に歯をたてる 
梳いた黒髪をかきあげて 
受け入れてしまった恥辱 

かつて少女の頃に見た 
甘美な夢とはほど遠い 
なんの形も示さないのに  ....
ぼくが
せいいっぱい
こつこつと
いきてゆくこと


きっと
きのうまで
こつこつと
いきたひとの
ねがいをかなえること

きっと
あしたに
うまれて
こつこつと
い ....
雨が降ると複数の穴から
水が漏れて
まるで
滝のように降ってくる

温度変化の激しい夜は
風邪を引きやすいから
ご自愛下さい
三寒四温の季節には
そんなことも書簡に認める

複数 ....
、、、、、、、、、、、、、世界が半分で折りたたんで悲しんでいる


、、、、、、、、、、、、、悲しみのはじまりははじまりはおわり


、、、、、、、、、、、、、涙を流すほどの悲しみはない
 ....
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何 ....
お帰りですか、と
聞くとその{ルビ女=ひと}は
ええ、と
小さく頷いて
穏やかな微笑をうかべた

鬱蒼と茂る緑葉の下で
木洩れ日が描くまだら模様が
白い肌をよけいに引き立たせ
蝉しぐ ....
いちめんに 苔のはえた石の門のなかへ
うたたねが さそうように駆けていって
わたしをふりかえる

ひだまりにぺたりとすわりこんで
ふくらはぎににじむ汗を スカートに吸わせながら わた ....
降り抜けば雨も積んでやろう

家々々から人々々がゞゞゞゞゞゞ

鵜が羽ばたきをやめ虚空を見つめていた

仮の名は嬲ってあるためよく見えない

雑草に甲羅を着せて森語らず

俎上にい ....
私の部屋の金魚鉢には
金魚が一匹いる

金魚鉢を見ていたら
すうと引き込まれて
泳いでいた

涼しい青い水の中
緑の水草ゆうらゆら
赤い尻尾はひいらひら

たくさん泳いだら
す ....
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